6・迷宮探索その4 魚が穴に
マトリクスプレートは魔導書の一種。
迷宮10階層まで描きましたら、推敲と修正を行います。
春達は第四階層へと潜り、あたりを見渡した。
「ここにはどんな魔物がいるんだ?」
迷宮とはいえ、中身は魔物の巣窟。どこから襲ってくるのか分からないのがダンジョンの醍醐味だった。
「ここは樹木の魔物と魚の魔物がいるよ。でも二人なら問題ないと思うよ」
テリオスは春達にそう告げる。しかしテリオスの表情はニヤニヤと笑っていた。その笑いはいやらしいというより、楽しんでいるようだった。
「まぁ、行くしかないよな!」
「そうね。わたしたちも先に進みましょう」
と二人は先に進む覚悟を決めた。その時、デバイスがピリピリと鳴り響く。
「あっ、クラスメイトからのメッセージだ」
春はデバイスを開くと折沢尚人から通話が来ていた。
『春、筱咲、お前らどこにいるんだよ?』
「尚人、俺たちは最初のエルダムにある迷宮にいるけど、どうした?」
こんな時にデバイスいを通して通話が来るとは思っていなかった春。
『お前ら遅いから、オレたち次の町に居るぞ。早く来いよ』
「解ってるって。すぐ追いつくから、待ってろよ」
と伝えると、通話を斬る。そして、
「ちょっと何勝手に通話を切ってんのよ!!」
春の行動に里実が起こりだした。
「ご、ごめんって。こっちから電話をかければ――」
と口論をしているときに魔物が現れた。
見た目は樹木の魔物だった。
「モク木だね、火に弱いから――」
話を最後まで聞かずに春は魔法を撃ち込む。
「アル・ファイア・バレット・ラージ・インパクト!」
空中に一つの燃える魔力弾が現れ、目前の敵に高速で直進し、直撃。
覚えたばかりの魔法を撃ちかました。
ズドン! という爆発音とともに春と里実は爆風を直に浴びる。
「い、威力強すぎない!?」
新しく覚えた魔法の脅威に里実も怯えている。
「わたしの覚えた魔法もこんな威力あるの?」
里実には恐怖心が纏わりつき始める。
「里実ちゃんの魔法は拘束系で威力は無いから安心してよ」
テリオスの言葉で里実は安心を覚える。
「マテリアルオーブは地属性だ!」
春は樹木の魔物からマテリアルオーブを勝手に抜き取っていた。
「まぁ、異世界に来たばかりで春もはしゃいでるから、今回は多めに見ましょう」
と里実は春の無謀な行為に目をつぶることにした。
春達一行はそのまま足を進めると三つに分かれた通路に出会う。
「ここから先、どの道を選ぶか迷うよな」
「左手の法則で行きましょう」
と考える時間を与えず里実は左に行く。
「まぁ、この迷宮は初心者用なんだろ。どの道を選んでもゴールにたどり着くだろ」
気楽に進むことにした春達。
左の通路を通りながら右へ左へ直進へと足を運び、大きな広場にやってきた。
どうやら三つの通路はこの広場につながっていたようだ。
「なんだろう、魚が一匹泳いでいるよな」
「そうね、魚が空中で泳いでいるわね」
「凄くブルブルしてるよな」
「凄く嫌な予感がするわね」
春達は魚の動作に前回の虫と同様の悪寒が刺した。
「あぁ、あれはね、ヴァイブリッシュと言って高速振動を起こしながら突っ込んでくる魚の魔物だよ」
と詳しく説明するテリオス。
「魚かぁ、この魔物って食えるのか?」
春は魚の味に興味を持っている様子。
「ヴァイブリッシュはテオリアで人気の食材になる魚なんだ。鮮魚の状態で塩焼きにすると美味しいよ」
と伝えると里実が反応し、
「わたしヴァイブリッシュの塩焼き食べたい!」
と言い出し、魔導弓を構えると魔力弦を引き魔力の矢を生成。
「ここで死止めるわよ!」
「アル・バレット!」
春が乱入してしまい、先制攻撃を奪われてしまった。
アル・バレットはヴァイブリッシュに直撃するも怯むことはなく、春に対して敵視すると振動を放ちながら突き進む。
「お、俺が狙われてる!?」
ヴァイブリッシュは一度攻撃を受けると、攻撃したものを執拗に狙ってくる特性があるため、春は走り出した。
「ちょ、こいつ空中泳ぎながら俺の後をついてくるぞ!」
無我夢中になり、ヴァイブリッシュの追跡を右に左に走り回り回避する。だが、逃げ回るだけではだめだと悟った春は魔導剣を構え、ヴァイブリッシュに立ち向かう。
「魚であるなら、刺身にするだけだ!」
魔導剣を縦に一閃、振り下ろすもヴァイブリッシュは難なく回避を成功させ、春の後方に回る。
「後ろを取られた!?」
春が振り返る瞬間、ヴァイブリッシュは穴に突っ込み、体に激痛が走る。
「ぎゃあああああッ!」
何とも言えぬ表情を浮かべながら悲鳴をあげる仲守春。
「今助けるわ!」
里実は魔導弓から強力な魔力の矢を放ち、春の穴に刺さったヴァイブリッシュを仕留める。が放たれた矢の数は少し多く、春のお尻にぶっ刺さる。
「ぎゃあああああ!」
再び春の悲鳴がこだまする。
「切れ痔にする気かよ!」
と、お尻に手を当て痛みを押さえ込む。
人間にとってとても痛く恥ずかしい事なのだ。
「まぁ……助かったよ。でも狙うなら魔物だけにしてよな」
息を切らしながらお礼を言う春。だが肝心のヴァイブリッシュは鮮魚から遠く離れた姿に変わっていた。
「春のせいでヴァイブリッシュが食べられないじゃない」
ヴァイブリッシュのなれの果てを見た里実はがっかりした表情と口調で物申す里実。
「だけど水のマテリアルオーブは入手したから、次にヴァイブリッシュを見つけたら鮮魚の状態で仕留めようぜ」
次がある事を里実に伝え、元気を取り戻させる。
そんな最中、テリオスはロウと共にヴァイブリッシュを人数分、合計四匹捕らえてきた。
「テリオス、そのヴァイブリッシュは……」
「春くん達が戦っているときに、捕らえてきたよ。焼いて食べようよ」
春達が苦戦したヴァイブリッシュを簡単に捕らえ、見せつけられる。
「さ、先に教えてくれよ、何だったんだよ、あの苦労。切れ痔になりかけたんだぞ。あとされかけた」
「それは春が避けないからでしょ! でもごめんなさい。矢が当たってあれほど痛いなんて知らなかった」
春達の言葉にテリオスは反応し、魔法をかける。
「イル・セイント・キュア」
回復魔法を春にかけて切れ痔であろうお尻を治療する。
「おっ、痛みがなくなったぞ! テリオスありがとう!」
テリオスに心から感謝を述べる。
「まったく、無謀な戦いをしたんだろうね。まぁ、自分も少し目を離したから悪いけど。怪我は治療したからヴァイブリッシュを焼いて食べようよ」
「ガウッ!」
テリオスとロウの言葉に二人は安心感を保ち、食事につくことにした。
入手マテリアルオーブ
火1水5地2風1光0闇0無30