45・ザウラとの戦い
最下層に到達した春達は周囲を見渡す。周りには魔物の気配すらなく、奥へと進む道がある。
「この道を進むしかないのか、それじゃあ行くか」
春と里実、テリオス、ロウは直線の道を突き進むことにした。
「しかしこの迷宮光もないのに明るいよな。これもマテリアルオーブの力か」
春の言葉にテリオスは「迷宮は一つの世界となるから、地上と派作りが違うんだよね」と答える。
「作りか、確かに地球では考えられない作りだよな」
納得した春。
「でも不思議よね。この最下層だけ一直線なんてよほど強者が待っているのかしら」
里実の言葉にテリオスはこくりと頷く。
「まぁ気にせず進もうぜ。どんな強敵でも俺たちなら倒せるはずだろ」
強気で歩く春の後ろを里実、テリオス、ロウがついて行く。そのまま進むと広大な広間にたどり着く。そこで待ち受けていたのは見覚えのある魔物、オリガームだった。
「あれは、ザウラ・オリガーム!」
テリオスの一言で春は魔導剣を素早く鞘から抜き、里実は魔導弓を向け、テリオスは魔導杖を掴み、戦闘態勢に入る。
「オリガームにしては巨大だよな」
ザウラ級と戦うのは地球以外、テオリアでは初めてだった。
「ザウラ級と戦って、勝てるのかしら」
里実は少し足を引き、魔導弓の魔力弦に触れて大量の魔力で矢を生成すると弦を引き、いつでも放てる状態にしていた。狙う場所はザウラ・オリガームの心臓一つ。
「勝てなきゃ俺たちはここで終わるだろ」
春は魔導剣に通常よりも多く魔力を流し込み圧縮させると、魔力は青白く光り出す。その光は鋭く鋭利な刃と化していた。
「負けるような場所に連れてきたことなんて一度もないよね」
テリオスは魔導杖に魔力を込めて魔法を選び出す。威力はイル級、風の魔法を頭の中で選択していた。
魔物のザウラ・オリガームは春達に気付いて武器を構えると走り出す。
「ダスク・プリデイション!」
里実は魔導弓から矢を放つ。放たれた魔力の矢は龍の形に変え、右へ左へ生物のようにうごめき、ザウラ・オリガームの心臓を捕食するかの如く口が開き直撃。
「アズール・リムーバー!」
圧縮した魔力を一振りのもと、剣刃として飛ばし、蒼穹を穿つかのように空を裂き青い閃光はザウラ・オリガームの胸部に直撃。
「「やったか?」」
二人の必殺ともいえる大技をぶつけ、魔力が爆発を引き起こす。魔力煙は薄れるがザウラ・オリガームは虫に刺されたかのような動作を行うと、獲物を見るような目で春達を見ると清ダイナ刀を振り下ろす。
その刀は太く長くリーチとしては申し分ないほどの大きさだった。
「ちょっと待て!」
春は魔導剣で防御の姿勢を取り、ザウラ・オリガームの斬撃を防ぐが、意外にも重くのしかかり、春の肉体に負荷をかけた。
「くっ、そ、重てぇ!」
いくら春といえど人間である。このままの姿勢で耐えきれるわけがない。
「春くん、すぐ助けるよ! イル・ウィンド・ブラスト・ライジング、イル・ボディ・リインフォース」
春に身体強化の魔法をかけつつも、威力が上がった風属性の突風はザウラ・オリガームの顔面に直撃。ザウラ・オリガームが怯み、刀を持ち上げて後方に下がる。
「た、助かったぜ」
春は息を切らしながらもテリオスに感謝する。
「さすがザウラ級ね。あのクインアリュトとは段違いよ」
春、里実、テリオス、ロウは地球でザウラ級と戦ったことから戦闘経験こそ並の探索者と比べると実力は上だった。しかし、幾度も戦ったわけではないため、苦戦を強いられていた。
「あのブラスト、使えるかもしれないな」
春はテリオスの使用した魔法から何を思いついたのか、新しい魔法を作り出そうとしている。
「つまり、春が魔法を放つまで時間を稼げってことね」
「時間稼ぎなら任せてよ」
里実とテリオスは春の言葉から一つの道を見出し、連携を取ることに。しかしロウはというとお座りで見ているだけだった。
「イル・ファイア・スピア・フライング・ストレイト」
テリオスは炎の槍を作り、ザウラ・オリガームに向けて投げ放つ。
「イル・ウィンド・アロー・ダース・インパクト」
里実は圧縮した魔力に加え十二の矢を作り放つ。
二人の魔法はザウラ・オリガームに向かうが里実の魔法は大型の刀によって振り払われる。
テリオスの魔法はザウラ・オリガームの胴体を直撃し燃え上がる。
「テリオスの魔法って命中率高いのね」
里実は褒めつつも魔物からは目を離さなかった。そのおかげでザウラ・オリガームの刀による斬撃を横に飛び回避。
ザウラ・:オリガームはカタナを横に振りテリオスを狙うが上空へ飛び、刃の直撃を避けた。
「わたしたち、後衛なのに前衛なのは何でかしらね?」
里実は春の方へと視線を向ける。
「後衛でも前衛に行かなきゃならないと木だってあるんだよ。自分がお手本見せてあげるよ」
テリオスは魔導杖を構え、ザウラ・オリガームへと向かっていく。魔物のザウラ・オリガームはカタナを振り回しテリオスを襲うが、上からの斬撃に対し、魔導杖を斜めに構えて刃を受け止めつつ刀の位置をずらし、直撃を避けた。
テリオスはそのまま突き進み、横から狙う高速の斬撃を、速度を利用し再び魔導杖で受け止めつつも杖を動かし、直撃コースをいなして軌道を変えていく。
「隙だらけだね」
そう伝えるとテリオスはザウラ・オリガームの膝に飛び乗り、次の攻撃である拳の打撃を避けつつ肩へと高く飛びあがり、魔導杖でザウラ・オリガームの頭上を強く叩く。
ザウラ・オリガームは甲高い悲鳴を上げて頭を押さえた。
「武器もすべては使い手次第で変わっていくんだよ。覚えておいて」
そう言われ、里実はこくりと頷く。
「私も見習わなきゃ」
「こっちは準備できたぜ!」
その時、春は魔法の作成が完成したことを告げた。
「遅いわよ!」
里実のツッコミに春は、
「ごめんごめん」
と謝りつつも魔導剣を地に差す。
「じゃあ自分も退避だね」
テリオスはザウラ・オリガームの傍から離れ、春のもとへと駆け寄ると視線を敵に向ける。
春は言葉による魔法構築を行い、創造を引き起こす。
「イル・ヒート・バレット・アプローチ・ブラスト」
高熱の魔力弾はザウラ・オリガームの顔面目掛けて発射され、高速で回転しながら直撃。と同時に高熱の魔力弾は突風に変わりザウラ・オリガームの顔面を焦がした。
その頃、ロウはサングラスをかけて椅子に座りコップに入ったドリンクを飲んでいた。




