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38・彼女とイル級と追加の敵

「ようやくアル級(最下級)からイル級(下級)に上がれたな。永くて短い時間だったな」


 春の独り言に里実は、


「春だけズルい! わたしもイル級魔法使いたい!」


 と我儘を言い出す。それも無理もない。地球人でもこんなに早くイル級魔法に至るのは数が少ないのだ。


「それなら次は里実ちゃんの番だね」


 テリオスは指先で道を示す。その方角は迷宮一階層の奥を刺していた。


「そこに敵がいるのね。次はわたしの番だから、皆は手出し無用よ!」


 テリオスの案内に従って右へ左へと曲がり続ける。歩き始めて十五分が経過し、里実の表情に苛立ちが現れる。


「いつまで歩けば魔物に出くわすのかしら?」


 怒りを含む声を迷宮の壁にぶつけるが、迷宮側は何の反応も示さない。


「まぁ落ち着きなよ。魔物なんてうじゃうじゃいるだろ? 当たるまで歩き回ろうぜ」


 イル級に到達した春はニヤニヤと笑みを見せつけながら里実を励ます。その行為は火に油を注ぐと言っても良いほどだった。


「あんたはイル級に到達してるから良いわよね! わたしはまだアル級よ! 何発ぶち込めば――春にぶち込んでもいいかしら?」


 先ほどの言葉に里実の声が雄たけびとなり周囲を響かせた。その声に危険を感じた春は「ごめんごめん」と謝り続ける。


「まぁテリオスについて行けば問題ないだろ」


 そう伝えると、春は里実の背中を押し、テリオスの後を追う。里実は「確かに、テリオスについて行けば魔物に出会えるわよね」と自分に言い聞かせながら、道を突き進む。


「そろそろ出くわすから、里実ちゃん、弓の用意!」


 テリオスが里実に指示をする。ついた場所は迷宮一階層の広場、その場所に魔物のゾルバー(兵士)が待ち受けていた。


 里実はすぐさま魔導弓を向け、戦闘態勢に入る。


「先手必勝ね、アル・(最下級)ウォーター・()アロー・(魔力矢)ペネトレイト・(貫通)ダース(十二)


 里実が放った十二の水の矢はゾルバーに向かっていく。その水の矢をゾルバーはゆらりと回避。その行動に驚きを示した里実は、魔導弓に魔力を込めつつも、新たに魔法を放つ。


アル・(最下級)ウィンド・()サイクロン(竜巻)


 魔物のゾルバーの上空に小型の竜巻が現れ、ゾルバーを巻き込んで高速回転を起こし始める。波の魔物なら目を回し怯むのだが、人型の魔物は皆、手練れと言っても良いほどの強者である。


アル・(最下級)ランド・()バインド(拘束)


 地属性の拘束魔法でゾルバーを捕えようとするが、サイクロンの中、拘束魔法を逆に利用されて竜巻の外へ抜け出された。


「なんで抜け出すのよ!」


 里実は魔導弓に流し込んだ魔力を十二の矢に変えて撃ち放つ。その矢はゾルバーに命中するもひるむことなく里実めがけて走り出す。


アル・(最下級)ウィンド・()アロー・(魔力の矢)レイン()


 とっさの判断で出した魔法は風の矢が上空から雨のごとく降り注ぐ魔法。この魔法に対しゾルバーは回避行動はとらず、安全な後方へと下がり、風の矢が止むのを待っていた。


「こいつ、わたしを馬鹿にしているように笑っているみたいでむかつく!」


 里実はゾルバーの顔を見ながら答えると、次に強い魔法を考える。魔法が消えるまで残り十秒。


「爆発はダメ、貫通も難しそう、拘束も逃げられそう、強すぎる魔法は難しい、それなら!」


 残り二秒となったとき、里実は新しく魔法を放つ。


アル・(最下級)ウィンド・()アロー・(魔力の矢)ペネトレイト・(貫通)サウザンド()


 残り二秒でマトリクスプレートに新しく言葉を組み込み、魔法を生み出す。


 里実の放った千の風の矢はゾルバーめがけて一斉発射。その数を避けきれるはずもなく鎧に一射、十射、百射と直撃し続ける。千の矢が全て放たれ、ゾルバーの鎧が砕かれるが、まだ生きていた。


「この、ゴキブリ並みにしぶといわね! アル・(最下級)ウィンド――()


 あまりにもしぶとい為、もう一回同じ魔法を放とうとした時、魔力の減りを感じ、もしかしてと目を輝かせる。


イル・(下級)ファイア・(火炎)アロー・(魔力の矢)エクスプロージョン(爆発)


 里実が感じた魔力の減りはまさしくイル級の証。さらに放った魔力の矢はゾルバーに刺さり、爆発を9起こし、崩壊。ゾルバーはその場で倒れ伏した。


「やったわ! これでわたしもイル級よ!」


 里実はガッツポーズをしながら大はしゃぎで踊りだす。春はその姿を見ながら自身もイル級に到達していることを実感する。


「イル級って魔法を使い続ければ行けるんだな。威力も強いし、意外と簡単だったな」


 アル級とは違い、イル級は魔力の消費を実感させるほど力の差がある。それを踏まえたうえで、春は「人に使うのは止めておこう」と独り言ながらも心に誓った。


「イル級でビッグバンとかバーニングを唱えると酷いことになりそうだよな」


「イル級はザウラ級に何発か当てれば倒せるくらい威力は上がっているからね。でもテオリアに住む人々はイル級の誤射に色々と対処法を考えてるから安心してよ」


 春の一言にテリオスは聞き逃さなかった。春に向けて言い放った言葉を里実も聞き逃さなかった。


「それってつまり、間違えてイル級を放ってしまっても問題ないってことよね?」


「誤射と認められればの話だからね。認められなかったら、国の騎士団が強制逮捕の後、裁判にかけられるから気を付けるように」


 その質問に対し、テリオスは即答した。


 春達は一度七聖騎将と出会っている。その戦いは相手の理由も聞かず問答無用に捕えられるか消されるか。それよりも下の騎士団であっても同じようになるのではないかと想像し、ゾッとしながら冷や汗をかく。


「騎士団って探索者ギルドよりも上だよな、テリオスの言う通り気を付けようぜ」


「そうね、あの時は地球のどこの国か知らないけれど、銃口向けてきて怖かったわね」


「とりあえずスピリアルドリンク飲んで魔力回復しよう♪」


 テリオスが渡したスピリアルドリンクを里実は一気に飲むと「ぷはぁ」と声に出し、美味さを表現する。


「テリオスのおかげでまだまだ戦えるし、助かるわ」


「あの時テリオスが進めてきた初心者用迷宮行かなかったらドリンク手に出来なかったよな」


「それは運が良かっただけだよ」


 春達は思い出に浸っている最中、迷宮は待ってはくれない。新たな魔物が姿を現す。その姿は足の長き鳥のよう。


「またモンスターかよ!」


 春は魔導剣を構え、里実は魔導弓を掴む。テリオスは魔導杖を持ち、ロウは肉球を地面につける。


「あいつは、オーステッチ(蹴りダチョウ)だよ」


「オーステッチか、上等だぜ!」


 また新たな戦いが始まった。




入手マテリアルオーブ

火1水13地0風0光0闇0無0雷0


現金56万

テオリアでは90万9000ゼル


入手鉱石

青いラトグラム鉱石12個

赤いマトリウム鉱石12個

緑のルナテウム鉱石12個


所持アイテム

メントドリンク3本

スピリアルドリンク8本

アブレコドリンク6本

パナシアスドリンク10本

リジェネスドリンク10本


乗り物

ライド・フォートレス・アルテミア号

6人乗りの魔巧ビークル

水陸空の移動が可能なマシンでBランク以上の探索者しか購入できない

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