4・迷宮攻略その2(驚異の変態)
魔法の最初に着く言葉の意味
アル=最下級
イル=下級
ウル=中級
エル=上級
オル=最上級
威力・属性・魔法・変化・追加
アル・ファイア・バレット・サウザンド・インパクト
となってます
属性なし初期魔法の場合はアル・バレット(最下級魔力弾)
いつも使うものはアル・バレット・サウザンド(最下級千の魔力弾)
属性や追加効果を付けるとより難しくなってきます
春達はエルダム近郊の小さな迷宮第二層を探索していた。
「第二層はどんな魔物がいるのか楽しみだな」
「遊びで来たんじゃないのよ」
春の一言に里実がツッコミを入れる。
「まぁ、ここ第二層は虫が多いよ。スティンビー(蜂)がたくさんいるから気を付けて進もう」
テリオスの解答で春達はごくりと唾をのむ。
「スティンビーって群れで動くのか?」
「虫だから動くでしょ」
「スティンビーって蜂だよな。二回刺されたら死ぬんじゃないのか?」
「そ、それは困るわね」
スティンビーという戦ったことのない魔物の存在との戦闘を想像し、一瞬にして表情から笑みが畏怖に変わる。
その時、ロウが吠える。
「ガウッ!」
群れで来ようと安心しろと伝えているようで、春達の表情も和らいでいった。
「そうだな、皆で行けば怖くないよな」
と、勇気をみせる。春の行動にテリオスは一言、
「初心者用ダンジョンだから、死ににくいということだけは覚えて。もしもの時は自分が助けるから」
笑顔で春達の不安を払拭したテリオス。
「そうだな、テオリア人のテリオスとロウが居るんだ。そう簡単には死なないよな」
春達は迷宮の第二層を進むことにした。
右、左、前にと分かれ道があり、その奥から羽音が聞こえる。
「この音、話に聞いていたスティンビー!?」
春は虫の鳴らす羽音に気付き、魔導剣を構える。
「スティンビーって蜂よね、虫退治なら先に遠距離で減らす方が有効だと思うの」
里実は魔導弓を構える。
「確かにそうだけど、地球の蜂とは違うんだ。気を付けてね」
テリオスに言われると、春は首をこくりと下げて前を向く。
羽音が近づくにつれて激しい高周波が周囲の壁を振動させる。そして現れたのは人の形をした黄色と黒の蜂、スティンビー。
「こ、こいつが蜂!? 化け物だろ!」
容姿を見た春は驚きを隠せない。
「す、すぐに倒さないと!」
その姿は二足歩行の怪人ともいえる。だが、それだけで化け物扱いはない。決め手はスティンビーの行動とお尻にあった。
蜂であれば腹部に当たる太いものがなく、その代わりにお尻から毒針がはみ出しており、毒針を向けながら開脚ホバリングで向かっているのだ。
「というよりも、変態だよな!」
「顔は蜂なのに、行動が変質者よ!」
尻を向けて加速するスティンビーは春に襲い掛かる。
春は尻からはみ出る針を避けつつ、腹部に魔導剣を叩き込む。
「斬り裂けえええええええええ!」
しかしスティンビーは足をひねり背面飛行を取ると切っ先をかわして春の背後を取る。
「隙だらけよ!」
里実は魔導弓を構え、スティンビーに魔力の矢を放つが、旋回し軽くかわされた。
『ブンブンブン、オレが飛ぶ♪』
魔物であるスティンビーが何やら歌い出し、春達を小ばかにする。
「こいつ、虫の癖に生意気よ!」
里実は再び魔導弓を構えつつ「アル・バインド!」と拘束魔法を放ち、春は「アル・バレット!」と魔力弾を撃ち込むが、スティンビーは軽く避け、『君らの体に毒針突き刺す♪』と歌を続ける。
「アル・グラビ・フォール」
テリオスが魔導杖を一振りすることで、スティンビーを地に叩き落す。
「見ていたけど、苦戦するなら手を貸すよ」
「ガウッ!」
テリオスとロウは春達の行動を見守りつつも冷静に援護を行い、彼らの身を守った。
「ありがとう、でも大丈夫だ!」
春は再び魔導剣を強く握ると無意識に魔力が剣先に集まる。
「俺が倒すから大丈夫だ!」
春はスティンビーに向けて走り出す。起き上がるスティンビーの脇腹に場同県の一閃を与え、傷を与えるとすかさず背後に回り、縦に一閃。翅を切り裂いた。
しかしスティンビーは翅一枚では倒れることはない。
スティンビーは春に尻を向けて毒針を射出、そのタイミングで里実が魔導弓の魔力矢を撃ち込み、毒針に直撃させる。
「わたしの腕を甘く見ない事ね!」
里実はスティンビーを睨み、さらに数発撃ち込む。
「ナイス里実ちゃん!」
春は再び剣を構えるとスティンビーに立ち向かう。
『ブゥブゥブゥ、ガスが飛ぶ♪』
スティンビーの歌と共にお尻からガスがまき散らされる。
「くっさ! なんだよこれ!!」
「いやああああ! この匂いキツっ!」
スティンビーの出すガスはとても臭く、二人の行動を阻害する。
「仕方ないね。アル・エアロ・スピニング」
テリオスの放つ魔法が、風となり回転しながら、スティンビーの放ったとても臭いガスを一掃した。
「げほっげほっ、テリオス助かったよ」
咳き込みながらテリオスに感謝する春。
「本当、とても臭いものをかましてくれたわね、この害虫!」
里実の瞳がいつもより怒りに満ちている。鬼とも悪魔とも言えない異形のような表情に変わり、スティンビーを睨みつける。
「死になさい! 朽ちなさい! 果てなさい! そして私に跪き、この世から消えなさい!」
里実の持つ魔導弓に大量の魔力が注がれ、春とテリオスとロウは少し怯えてしまう。
「女子って怒るとこんなに怖いのかよ」
「春くん、里実ちゃんが怖いよ」
「ク~ン」
三人が怯えながら里実の放つ一撃を見届ける。
この一撃はスティンビーに向かって突き進むが回避し、翅一枚を犠牲に攻撃を逃れた。
「なんで避けるのよ! このクソ虫!」
スティンビーは翅を失い、地に落ちる。
「あとは俺が死止めるぜ」
(早く終わらせないと里実ちゃんがまた鬼になってしまう)
春は剣をスティンビーに向け、突き進む。
「お前のオナラも連発出来ないよな! 喰らえ!」
魔力を込めた魔導剣を振り、スティンビーの腹部に傷を与える。
『ブンブンブン針を刺す♪』
スティンビーは春に向かってヒップドロップを仕掛ける。
その隙に春は魔導剣を速く振り下ろし、お尻の針を斬り砕く。
『ビイイイイイイイイ!』
虫らしい鳴き声を鳴らし、転倒する。
「春くん、今なら行けるよ。頑張って!」
「ガウッ!」
テリオスとロウの応援を力に、春は魔力を剣先に流し、スティンビーを切り刻む。
一振り一閃横に斬り、二振り一閃縦に刻む。三振り一閃袈裟に切り、四振り一閃胴を斬る。五振り一閃背後を斬り、六振り一閃骨を断つ。
「ここがお前の終点だ!」
スティンビーはズタボロになり、息絶えた。
「やっと終わったぜ」
ふぅ、と額に着いた汗をぬぐい、里実とテリオス、ロウの方を見る。
「わたしが止め刺したかったのに」
と悔しそうな表情を浮かべる。
「おめでとう、スティンビーからマテリアルオーブを抜き取ろうか」
「そうだな。せっかく倒したんだ。お楽しみのマテリアルオーブは属性付きかな」
春はスティンビーからマテリアルオーブを抜き取ると、今までの色と違うことに気付く。
「緑ってたしか風属性だよな」
「そうだね。風属性は夏の冷房によく使われるから人気があるんだよ」
「そういえば、家の冷房も風のマテリアルオーブ使ってたな」
とテリオスの言葉に相槌を打つ。
「でもさぁ、これ地球に持って帰っても国に献上しないといけないのがなぁ。もったいねぇよな」
と春は愚痴りながらカバンに収める。
「このまま行けるところまで進みましょう」
と里実は春達を誘導する。
「そうだな、先に進むか」
春は先に進むことに賛成する。
「次の階層まで案内するよ」
テリオスは魔導場を構えつつ、行き先を示す。
「バウッ!」
ロウも吠えて春達は第三階層を目指す。
入手マテリアルオーブ
火0水0地2風1光0闇0無30