37・苦労と決着とイル級
仲守春は魔導剣でブレイビアに正面から挑む。
「剣術同士なら、こいつを倒せば俺はさらに上に行けるんだ!」
魔導剣に流れた魔力は斬れ味を保ちながら、ブレイビアとぶつかり合う。激しい金属音が鳴り響く中、春の持つ魔導剣がブレイビアの突きを受け流し、胴体に流し込まれた魔力の斬撃が当たる。はずだったがブレイビアは春の動きから予測して一歩下がると腕を向けて火炎玉を放つ。
その時春は、
「アル・ウィンド・ウォール」
瞬時に魔法で風の壁を発動し、ブレイビアの火炎玉を直撃から防いだ。
「こいつ、避けるタイミングまで読んでやがるぞ」
少し焦りを見せる春だが、戦いは始まったばかり。
「アル・ファイア・バレット」
春は片手を向け、火炎弾を放つ。同時にブレイビアも火炎玉を放ち、魔法同士がぶつかり合い爆発を引き起こす。その爆発に両者巻き込まれ、数メートル吹き飛ばされた。
「魔物で無口の癖に、めちゃくちゃ強いな!」
春一人では勝てないわけではない。何事も経験が必要なのだ。
「自分はまだ手を貸さないよ。春くんだけでも勝てるから頑張って」
テリオスの応援の声を聴き、春は勝利の確証があると気付き、テリオスに国利と返事をする。
「まだあきらめちゃいないからな!」
魔導剣に魔力を注ぎ込みながら構えると、ブレイビアも同じく剣を構える。その姿は魔巧兵エートゥゼッジーを思い出す。
「あいつは本当の意味で強かったな」
独り言を呟きながら、魔導剣により多くの魔力を注ぎ込むとブレイビアに視線を向ける。
「俺がこいつを倒して世界を救うんだ!」
地球からテオリアに来た探索者は皆、地球のために戦ってマテリアルオーブを持ち帰っている。その使命を忘れることなく魔導剣を振るう。
「アバランチ・クラッシュ!」
春は上空に飛び、魔導剣に蓄積された魔力が大きく輝く。次の瞬間ブレイビアに向けて剣を振り下ろす。魔導剣から放たれる膨大な魔力は蒼く鋭い刃となり、ブレイビアに切りかかった。
「喰らえ!」
振り下ろす剣はブレイビアの頭部を狙うが、肝心のブレイビアは素早く剣を振り、魔導剣の剣身を僅かにずらし、直撃を避けた。
「くっ、こいつ!」
薙ぎ払われた魔導剣は床に着く直前、焦る春は一つの幻覚を見る。それは一人の少年が魔導剣をこの状態から上へと無理やり軌道を変える行為。
(この通りにやれば勝てるかもしれねぇ!)
一瞬の幻覚に従い、春は腰をひねり魔導剣の剣先をブレイビアに向けると勢いよくを上空に振り抜き叩き込む。ブレイビアは手持ちの剣を使い防御に回るが、春の持つ魔導剣に収束した魔力で破壊された。
危機的状況を感じたのか、ブレイビアがとっさに放ったのは火炎玉だった。それに合わせて春は、
「アル・ファイア・バレット」
双方の魔法が直撃し、両者またしても飛ばされる。
春は必死に足を付け、魔導剣を握りしめると再び魔力を流し込む。その姿は戦いを好む戦士のようにも見える。
「まだ倒れないのかよ。面倒だぜ」
息を切らしながらも春はブレイビアを見つめ、
「倒れないなら、魔法の連続で潰してやる!」
脳内に浮かぶ魔法を創造し始める。
「アル・ファイア――」
その時、マトリクスプレートが反応し、今までとは違う魔力の消費を感じ取る。
(もしかして、ランクアップ!? なら!)
「イル・ファイア・グレネイド・ダース・ホーミング」
春はテオリアに来て初のイルクラス魔法を放てるまでに成長していた。周囲には十二発の火炎弾が浮かぶが、アル級とは違って密度が高く炎の輝きが増していた。
「いけええええええ!」
春の声に合わせてイル級の火炎榴弾がブレイビアに向かって飛翔する。肝心の魔物であり魔法も使える剣士ブレイビアは剣を握りしめ火炎玉を放ち相殺を図る。
ブレイビアの放った火炎玉は一階層クラスの威力、アル級でしかない。春の放ったイル級の火炎榴弾はブレイビアの火炎玉をものともせず打ち破り直撃。同時に爆発を引き起こす。
「まだまだぁ!」
残り十一発の火炎榴弾がブレイビアめがけて飛び進み、二発、三発、四発、五発、六発、七発、八発、九発、十発、十一発、十二発、その全てがブレイビアに直撃し、爆発の連鎖を引き起こしながら轟音を響かせる。
「直撃したよな。でもまだ生きてる感じがするぞ」
春の放った火炎榴弾で燃え上がるブレイビア。動きこそないものの、油断は禁物と自ら言い聞かせ、魔導剣を握りしめて再び構えた。
「春くん、あいつはまだ生きてるから気を付けて」
テリオスの言葉で「やはり生きてるんだな」と一言放ち、気を引き締める。固唾を飲み、炎の揺らぎを見極め居場所を突き止める。
「そこか!」
揺らぐ炎に向かって走り出し魔導剣を振るうと、その炎の中からブレイビアの剣が姿を現す。鎧はひび割れ、各部位も砕ける寸前。
「その鎧ごと、砕いてやるぜ!」
春は魔導剣に魔力を注ぎ込み、威力を追加し続ける。ブレイビアも負けじと剣で受け続けていた。しかしブレイビアも初戦は一階層の魔物であることに変わりはない。春の魔力量に押され、砕かれつつある鎧で体制も立てにくい状況。
「アバランチ・クラッシュ!」
大量に注ぎ込んむ魔力は剣身にたまり、春の魔力はより強く、より濃厚で、より輝きだすと、一振りでブレイビアの剣を砕き、頑丈な鎧を切り裂いた。
「おわった、か」
春は魔力の消費を感じながら床に座り込んだ。
「お疲れ様、イル級魔法到達おめでとう♪」
テリオスが優しく微笑みながら春の肩を叩く。
「もぅ、ヒヤヒヤしたわよ」
里実も見守るだけだったことに心が落ち着かず冷や汗をかいていた。
「ごめんごめん、でもどうにか倒したぜ」
春の表情から疲れが見える。里実はメントドリンクを取り出し、春に渡すと渡された春は一気に飲み干し体力を回復する。
「イル級に到達すると魔力が消費しやすいからね、これも飲んでよ」
渡されたものはスピリアルドリンク、魔力回復薬だった。スピリアルドリンクも一口で飲み終えると、春の体から消費されたオーラが沸き上がってきた。
「うぉお、消費した漢字だった魔力が回復したぁ!」
春は自らイル級の魔法に上がったことを実感し「サンキュー、テリオス!」とお礼を伝えると立ち上がり、腰を叩く。
「よし、マテリアルオーブを拾いに行くか」
ブレイビアに近づくとマテリアルオーブを取り出し、色を確認。赤いマテリアルオーブは火属性であるが、地球でも貴重な資源となる。
「火属性はガス代が浮くから便利だよな」
春は独り言を言いつつも、里実とテリオス、ロウのもとに戻った。
入手マテリアルオーブ
火1水13地0風0光0闇0無0雷0
現金56万
テオリアでは90万9000ゼル
入手鉱石
青いラトグラム鉱石12個
赤いマトリウム鉱石12個
緑のルナテウム鉱石12個
所持アイテム
メントドリンク3本
スピリアルドリンク9本
アブレコドリンク6本
パナシアスドリンク10本
リジェネスドリンク10本
乗り物
ライド・フォートレス・アルテミア号
6人乗りの魔巧ビークル
水陸空の移動が可能なマシンでBランク以上の探索者しか購入できない




