24・日昇市での特訓
次の日、春はテオリアに居るはずのテリオスに連絡していた。
「へぇ、そんなことがあったんだ」
春はマテリアルオーブの価格についてテリオスに聞く。
「探索者が取ってきたマテリアルオーブって安いのかな?」
マテリアルオーブ一個につき5000円は破格の安さで買い取られ、55万しかないのだ。
「自分が行けばどうにかなるかもしれないね」
と春に一縷の希望を持たせる。
「えっ、テリオスって地球に来れるのか!?」
春は驚きを隠せずに言葉が出る。
「自分だって昔は春くんたちと地球で遊んだの忘れたの?」
テオリア人は地球に来れないという制約はない。それどころかテオリア人がいないと異世界列車のゲートが閉められ、地球は資源枯渇に戻ってしまうのだ。
「忘れてたわけじゃないけど、今テオリアに居るんだろ?」
「今は異世界列車。ロウも居るよ」
「ガウッ!」
ロウの声を聴き、春の表情はスマイルに変わっていく。
「なら、日昇駅で待ち合わせしようぜ!」
「いいね、日昇駅で13時に待ち合わせだね」
春の提案にテリオスは承諾し、春もまたワクワクを隠せずにいた。
「なら、俺は先に行ってるからな」
二人と一匹は日昇駅で会う約束を交わし、仲守春は通話を終える。
「さて、行きますか」
春はリュックと鞘に納めた魔導剣、マトリクスプレートを持ち、自宅から出ると日昇駅へと向かっていった。
探索者は武器の所持こそ認められているものの、地球では収めた状態でしか持ち歩けない。使用の際は専門の会場であらかじめ許可申請しなければならない。
春は日昇駅に着くと周囲を見渡す。
「早すぎたかなぁ?」
異世界列車が到着するまでの時間、春は風を浴びていた。
「良い風だなぁ。俺この涼しさが好きだ」
独り言を呟いている。
「テリオスと初めて会った公園でも、このくらい涼しかったな」
「あの時は季節が春だったからね」
「ガウッ!」
春の独り言に割って入ったのはテリオスとロウ。
「お待たせ、春くん。まずはどこに行く?」
春は少し考え、探索者専用の陸上闘技場を思い浮かべる。
「地元にある陸上闘技場に行ってみようぜ」
「いいね、自分と戦ってみようか」
二人は行き先を決め、陸上闘技場へと向かっていった。
たどり着くと、受付嬢の前に立つ。
「陸上闘技場は空いてますか?」
「はい、今日は丁度開いております。ご利用でしたら探索者ライセンスをご提示の上、こちらにサインをお願いします」
受付嬢の言葉に従い、春とテリオスは探索者ライセンスを提示し、名簿にサインを書く。
「テリオス様の探索者ランクは――Bランクでよろしいでしょうか?」
「自分はBランクだよ」
受付嬢がテリオスのランクを再確認していた。テリオスはBランクと類似したマークを再度見せると、受付嬢はBと書かれていることに納得し、受付嬢は陸上闘技場の使用許可を下ろした。
「地球とテオリアでは文字が違うからね」
「やっぱ文字が違うと少し時間がかかるんだな」
「そうだね、自分のランクは特殊だからね」
テリオスの探索者ランクはBであってBにあらず。テリオスはテオリア側のハイランク探索者。
「じゃあやりますか」
「そうだね、実戦形式でやろうよ」
春とテリオスは陸上闘技場内部に向かい、魔導武器を解放する。
鞘から抜かれた魔導剣は輝きを放ちとても美しい。そしてテリオスの持つ魔導杖は戦闘状態になっていた。
陸上闘技場は戦闘を主体とした訓練場でもあり、予約さえしておけば地球側でも魔物との戦闘も可能。春達はテリオスとの戦闘訓練を選んでいたため、今回は魔物との戦いはないようだ。
「まずは行くよ!アル・ウィンド・バレット」
「行くぜ!アル・ファイア・バレット」
二人の魔法は同時詠唱され、同時発動。
テリオスの魔導杖から放たれる風力弾は回転しながら春に向かっていき、春の火炎弾はテリオスに向かって突き進む。
二つの魔法は同時直撃、同時相殺され強い衝撃音を放ち、周囲を轟かせた。
「火は風より強いはずなのに、相殺された!?」
春は驚きを見せるがテリオスは一言伝える。
「風は火を消せないなんて、誰が決めたのかな」
マッチ棒の火が風で消えるように、火炎弾は風力弾で打ち消されたのだ。
「それなら、これで一撃与えてやるぜ!」
春は魔導剣を構え魔力を流しながら、テリオスに向かって走り出す。
「接近戦かな、それならアル・ウィンド・バレット・リボルバー」
テリオスの周囲に六つの風力弾が現れ、春にめがけて高速で飛翔。
「直撃はさせないぜ!」
春の持つ魔導剣を一つ一つ振り下ろし、テリオスの放った六発ののうち五発の風力弾を丁寧に切り裂いていく。
「貰った!」
「あまい!」
「!?」
テリオスが最後の一発を放つが春は反射と思考が同時に働き、魔導剣を盾にした。
「アズール――」
春に一撃必殺を放とうとしたとき、テリオスは後方に下がり、指先を向ける。
「リムーバー!」
蒼穹を穿つ青い刃はテリオスに向けて切り裂くが、テリオスはデコピンで春の必殺であるアズールリムーバーを打ち消してしまった。
「なっ!?」
春は一瞬の出来事に驚愕を示す。
テリオスの魂から放たれる圧倒的な魔力という名のオーラを始めて目にした春は驚愕の域を超えていた。
地球人とテオリア人では育ちが違う。一般人が魔王に戦いを挑むほどの力の差があるのだ。
地球人がテオリアで活動する場合、テオリア人と同行するかパーティーを組む事を推奨されている。その理由もこの力の差である。
テオリアで地球人同士が争いあい、殺害やマテリアルオーブの強奪を阻止するための抑止力としても必要なのだ。
「春くんも中々の腕だけど、まだ弱いかな。魔法や剣術、魔力の流れも使っていくうちに強くなるからね」
テリオスの慰めに春はため息をつきながらも、
「アル・ファイア・バレット・グレネイド」
と新しく魔法を放ち、テリオスに奇襲を仕掛ける。
圧縮された火炎は球体となってテリオスに飛んでいく。
「奇襲も効かないよ」
火炎の球体を掌で包み込み、握りつぶすと春はさらに驚きを見せる。
「テリオスにはかなわな――」
溜息を吐く春にテリオスは早口で、
「アル・ウィンド・バレット・ブラスト・インパクト」
マトリクスプレートに魔法陣が浮かび、周囲の風が輝きを放ちながら集合し、春の腹部に魔法が直撃。
春は十メートルほど飛ばされ撃沈。
「ちょ、こんなのありかよ」
春の服はボロボロになり、仰向けに倒れていた。
「奇襲のお返しだよ」
とテリオスが笑顔で春の傍に行き、手を差し伸べると、春はその手を掴む。
「やっぱ強いな。流石テリオスだ」
と一言添えて立ち上がった。
入手マテリアルオーブ
火0水0地0風0光0闇0無0雷0
現金56万
テオリアでは1万3000ゼル
所持アイテム
メントドリンク4本
スピリアルドリンク10本
アブレコドリンク6本
パナシアスドリンク10本
リジェネスドリンク10本




