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01


はるか昔から語り継がれる伝説がある。

世界の果てにある空を射抜く塔、その頂に住むのは孤独な魔女。

魔女の住処にはすべての叡智と巨万の富があるという。

人々は夢を見て魔女の塔の攻略に挑むが、未だその頂に達した者はいない。






世界の果て、空を射抜く塔の頂で、私は友人とお茶をしていた。

雲の上の美しい景色も何百年と見ていれば飽きてくるものだ。しかし、私は外に出かける気はなかった。


「魔女よ、そろそろ出かけてはどうだ」

「竜よ、いまさら外の世界に行くのは面倒だ」


いつもどおりのやり取りをして紅茶をひとくち。

うむ、うまい。

目の前にいるドラゴンの友人は、私にあわせてか、人型になって紅茶をすすっている。

彼はあまり人型になるのがうまくないので、角も羽も尻尾も出ているが、本人いわくドラゴンのプライドがあるから、わざと出しっぱなしにしているだけなのだと。

そんな彼が深ーいため息をつく。

短い茶番は終わりらしい。


「まったく、いつまで引きこもりをしているつもりなのだ」

「引きこもりと言うな!ただ、出かける予定もないし!人間怖いし!せっかく世界一の塔を建てたんだから、ちょっとくらい楽しんでもいいでしょうよ」


この塔造るのけっこう大変だったんだから!!

なんなら、自分が住まないのに、わざわざ中までこだわりまくってトータル50年くらいかけて作ったんだから!!


「お前の言うちょっとがもう少しで1000年になるが?」

「まあ、そろそろ空にも飽きてきたけども。でもほら、魔女狩りとかしてる野蛮な人間どもがいるのにわざわざ降りたくないし……」


ほんと人間って野蛮!怖い!


「ふっ、情報が古いな。それは500年以上前の話だろう。今は魔法学が進んでいて魔法使いは立派な職業だぞ」

「マジ?なんでそんな人間界の情報に詳しいのよ、ドラちゃん」

「実は人間界でたまに教鞭をとっているのだ」

「は?」


耳を疑う。

え?ドラゴンが人間に教えるの?そもそも何を教えてるの?


「副業というやつだ」

「ふくぎょー???よくわかんないけど、ドラゴンって迫害されてなかったっけ???」

「それももう800年前くらいの話だな」


そうだっけ???


「それでそう、お前の話をしたら、ぜひうちで魔法を教えてくれないかって話になってな」

「はい?なに勝手に話進めてんの。嫌だよ。私、引きこもりなんで」

「そうか……お前のその飲んでる紅茶」

「美味しい、いつもありがとう」

「それは良かった。しかし、その紅茶も人間から買っているものだ」


ぴくりと手が止まる。

ドラちゃんの表情からして、あら!人間てば、こんな美味しいものを作れるようになったのね!という、感動話ではないようだ。


「人間は金というものでやり取りするのでな、その金は今わしが出してやっているのだ」

「金ね、そんなもんもあったような……」

「魔女が何か契約するときと同じ、タダでは手に入らない。対価が必要なのだ」

「まあ、世の中だいたいそうよね」


言いたいことがわかってきた。

とてもやばいが逃げ道はない。

だから無視することしか私にはできない。


「お前の着ている服、ここにある家具、食品、雑貨、その他もろもろ。私が調達してきただろう?そろそろ対価のもらい時だな」

「やだドラちゃんったら、私達友達じゃない!」

「やだ魔女子ったら、それとこれとは別よ~!……しっかり払ってもらおうか」

「今までそんなこと一度も言わなかったじゃん!!!急にどうして!?」


私は引きこもりの魔女。

ドラゴンと違ってキラキラしたものを集める習性もないし、働いてもないし、金品などない!ドラゴンに渡せる対価になるようなものは何もない!というか、身の回りのものほぼすべてドラちゃんにもらったものだから渡せるものは何もない!

でも外に行きたくないよ……


「竜の気まぐれだ。最近面白いこともないし、学園長にはいつも世話になっているから、たまには願いを叶えてやろうと思ってな」

「気まぐれかぁ……」

「お前もずっとここにいて、ぼけっとしてるより健康的だろうし」

「ドラちゃん……!」


まさか私の心配もしてくれてたとは!

私、魔女だから病気にはならないけど!


「このままだと、いつか本気でボケそうだし……最近昔の話しかしないから心配で……わし、友達の介護はちょっと……」

「いやボケませんけど!?私魔女なんで!不老不死で健康体なので!!」


失敬な!ドラちゃんそんなこと心配してたのね!?初めて知ったわ!

なんかちょっと安心してる顔も腹立つ。


「とにかく、お前も魔法を教えてやれ。条件はかなりいいから」

「人間の魔法って、よくわかんないし……無理だって……」

「なるようになる。わしでもできてるんだからな」

「ぐぅ……」


それは、たしかに……

ドラゴンが人間に教鞭を取れるなら行ける気がしてきた。だって想像つかないもん。でも想像つかないことが現実で起きてるわけでしょ?


「お前と教師ができたらわしも楽しい」


おっと、何だその理由は。

普通に嬉しいじゃないか!


「えー?もう、仕方ないなぁ……世間とのズレはドラちゃんがフォローしてくれるんだよね?」

「うむ、わしにぜんぶ任せておけ!」


張り切るドラちゃんに唆され、私は約1000年ぶりに外の世界へ降りることとなったのだ。





気が向いたら続きを書きます

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