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第48話 好きなんだ!

 ピンクのアバターなので相手の表情はわからない。頭上に吹き出しがないことで全員から注目されていることは理解できる。

 僕はらすようなことはしないで最後の想いを言い放つ。


『五人、全員が好きなんだ!』


 受け入れられるとははなから思っていない。心の声に耳を傾けて最後まで通した。真剣な相手にウソは吐きたくなかった。

 綾芽の頭上に吹き出しが浮かぶ。


『本音と思うが、私の予想にはなかった答えだ』

『おばさんと同列はすこーし、ムカつきましたが仕方ないですねぇ。拓光君が決めたことですしー』


 美知の言葉に、埋めるぞ、と綾芽が短く返した。

 要のアバターは頭を抱えた状態でしゃがみ込む。


『ウソだろ。乳は揉まれ損かよ。チューまでした仲なのに』

『なにやってんだ! 二代目ビッチかよ!』


 ルチルの厳しい声が飛んだ。直後、アバターはがっくりと項垂れる。


『これ、正式な付き合いと言えるのか? 豚の魔の手から逃れたことになるんだよな。なあ、拓光、どうなんだ?』


 かれても困る。そもそも五人全員が彼女とか、現実にあり得るのだろうか。浮気とかではない。いきなり五股から始まる。あまりにも一方的な話で恋人関係が成立するとは思えない。自分で言っておきながら。

 頭が軽く混乱する中で疑問の声が上がった。


『私を恋人に含んで、いいのでしょうか?』


 撫子のアバターの頭が大きく横に傾く。僕が答える前に綾芽が言った。


『私も気になる。坊や、どうなんだ?』

『拓光、これは正式な付き合いなんだよな!』


 ルチルが割り込んだ。この必死さもわかるだけに纏めて答えた。


『泉さんと一緒にいたい気持ちは変わりません。神崎さんも僕でよければ付き合ってください』

『わたしはハーレム賛成派ですよー。あとは各自の魅力でぇ、ゴールすればいいだけですからねー』

『この場合のゴールは結婚か』


 美知の言葉に綾芽が継ぎ足す。

 ルチルのアバターが勢いよく頭を上げた。


『そう、それだ! 大学生活の間に結婚すればいいんだ!』

『させるか! 幼馴染のあたしが変態どもに負けるかよ! 今度は拓光に生乳を揉ませてやる!』

『わたしとやるならぁ、漏れなくルコースですよー。お口の簡単なサービスなら路上でもいいですよぉ。ちょっとした木陰を見つけてぇ、ゴックンは最高にスリルがありますよねー』


 美知のリアルで生々しい内容にルチルと要は、生臭いんだよ! と同時に怒りをぶちまけた。


『私はゆっくりと楽しむ派だ。ホテルの最上階に連泊してじっくり肌を重ねるのもいいだろう』


 綾芽は社長らしく、アダルトな雰囲気を言葉で醸し出す。

 押しの強い四人が相手もあって撫子の影は薄かった。それでもしっかりと言葉を返した。


『これからもよろしくお願いします』

『仕方ない。拓光と付き合ってやるよ。幼馴染のあたしが第一恋人な』

『じゃあ、私は第一結婚相手だ』

『わたしは第一愛人になりまーす。おばさんは重力に負けないようにバストアップの運動をした方がいいですよー』

『痴女のスカスカ頭はかち割るとして、私はそうだな。第一(あね)さん女房として名乗りを上げておくか』


 この瞬間、五人全員が僕の恋人になった。画面に表示された数々の吹き出しを見て、ウソだよね!? と言ったことは伏せておく。

 何回か強い瞬きをした。自分の目が信じられない状態に陥った。少し震える指先でキーを打つ。


『僕のこんなバカげた告白を受け入れてくれて、本当にありがとう。こんなこと、今までになかったから。嬉しくて泣きそうになっている』

『それ、本当ですかー? 拓光君はとてもキュートだと思いますよー。それに優しくてわたしが寝ている間、ずっと側にいて手を握っていてくれましたー』

『またか! また抜け駆けか! いい加減にしろ!』


 美知の言葉にルチルが噛み付く。

 その隙を突いて要が猛アタックを開始した。


『もう恋人だからな。誰に何を言われても関係ない。拓光、あたしと明日、デートしてくれ。生乳タダ揉み券をやろう』

『おまえもビッチか! 拓光、明日は私と過ごそう。あの秘密のドアの先で良いことをしよう』

『私はヘリを用意する。本土から離れた島で、ゆっくり過ごすのはどうだ?』


 ルチルの言葉を遮るように綾芽が吹き出しを被せた。

 出遅れた撫子と美知はほぼ同時に言った。


『明日の予定はどうなっていますか?』

『拓光君の明日の講義はー?』


 二限から五限目までの講義を取っていた。そのことを伝えると五人は同じような内容を吹き出しで言ってきた。

 一緒に夕飯を食べようと。

 誰も譲らず、六人で行動することになった。


 嫌な汗を背中に感じた。香水の力が必要になることは間違いない。振り掛ける量を間違えると、以前の喫茶店のように店長の怒りを買うことになる。


 明日を想像すると身体が震える。武者震いなのか、それとも……。

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