缶切り
落ちはありません。みんないきなり異世界行って納得するけど本当のとこどうなのよ?とおもってかきました。初投稿です。見づらかったらごめんなさい。段落分けとか考えもせず書きました。ほぼ作文かも・・。
ああ、今日は昼一から、人間トイレットペーパーの日だ。照りつける夏の残りかすみたいな太陽にあぶられて、信号を待つ。施設につくと暗証番号を打ちこんでそこそこ重たい玄関ドアを開けると、ロッカールームから「百合子、また朝のくそ忙しい時間に脱衣と便失セットだよぉぉ。」キンキン声が響く。ブルーアイシャドーは夜逃げでもするのかという荷物から器用に制汗スプレーを取り出して愚痴を吐き出し続けている。(防音魔法が欲しい…。それか、完全個室にしてくれ…。)昨晩読んだ、ファンタジーの呪文を唱えながら、ロッカーを開けるとつるされた汗臭い制服だけがかかっている。制服に着替えて髪をくぐり、マスクを装着して仕事人の顔になる。「あ!いずみん!おはよー!おつかれー!昨日茂雄よく寝てたよー‼」ブルーアイシャドーが叫びながら去ってゆく。「そうなんだー。おつー。機嫌いいといいやな。」あるわけないと思いつつもそう声をかける。
フロアへ上がるとピッチをもってマナーモードの確認をする。(ちっ。ブルーアイシャドーまたマナーのまんまかよ。)小さくいらいらしながら申し送りノートを読む。【百合子さんが、便失のため更衣介助をしようとしたところ、乾燥機禁止のものしかなく、家族様に連絡…。】(しても無駄やねん。洋服ダンスお化けがこれきせえゆうてもってくるだけで、連絡つかんのんじゃ)たまに来る家族に何度言おうと洗濯できない洋服しか持ってこないことにため息が出る。
帰ってしまった夜専に舌打ち一つして、おむつカートを押しながら、頭の中で仕事開始のゴングが鳴る。201のドアをノックと同時にあけると「リモコン」茂雄が不機嫌につぶやく。「おむつ交換して、昼ご飯食べに行くときに、探しますね。」禿頭を真っ赤にして「りいいいもおおおおこおおん」不機嫌さを隠しもせず易怒性の高い禿爺が怒鳴る。フルスピードで声掛けだけはゆっくりと「おむつ交換しますよー。」「布団めくりますねえ」孫の手が振り上げられる。それをにこやかな笑顔でつかんでひねり上げて取り上げる。(この孫の手、魔石はまってたら死んでたな)と益体もない事を考える。ベッドの高さを上げながら、おむつを外す。おむつ交換を終えて移乗する高さまでおろしながらベッドの下のリモコンを見つけても手渡しはしない。耳元で怒鳴られながら車いすへ移乗して、問答無用でフロアへ出す。205の部屋はノックして静かに開ける。ベッド際のカーテンを閉めながらささやきかける。「おむつ交換に来ましたよ。百合子さん。今日はお昼ご飯なんでしょうね。」昔は美人であったろう顔をしかめて「痛いことする?食べたくないの。」「痛いことはしたくないから、少し手伝ってもらえますか?ご自分で窓のほうへ向いてもらえたら少し押しますよ。」できるだけ静かにゆっくりと。骨折した足が痛くないように。興奮しませんように。祈りながらそっと車いすをセットする。ドアを開けて出てくるとすべてを台無しにする命の叫びが聞こえてくる。「いやああああ!!!!あんた達出て行ってええええ!!!」日勤二人がぴちぴち跳ねるご老人に「ほらお昼!食べないと!!なおらんでしょ」
そうして、昼一の忙しない人間トイレットペーパータイムを終えて、サービスステーションで一息ついていると日勤の昼の体操の声が聞こえてくる。早出が午前の入浴を終えてサービスステーションに昼の休憩に来る。「いずみやさん、昨日、離設あったん知ってル?」……え…「誰?フロアには全員そろってたし申し送りにもなかったよ?」(名前間違えてるよ!)心の中で、名前を憶えてくれないベトナム人のグエンさんに突っ込みを入れつつ険しい顔のグエンの可愛い眉間を伸ばしてやる。「二階だヨ。」「ああ、違う階なのね。」「それがー二人夜勤のフロアでえ。二人の目の前で消えたんだってーおばあチャン」「はあ?」「お盆だから消えたのかなー?」
人一人消失マジック?文字で打つと顔文字みたいだな。人一人ああ、合掌の形か…。家族連絡?事故報?警察に届け?何なるんだ?少しパニックになりながら仕事は続いた。
仕事を終えてまとわりつく夜の空気を自転車でかきおとしながら今日の仕事を振り返る。一人反省会は自転車をこいでいる時だけと決めている。そこで仕事人から、家人へスイッチを切り替えられなかった、仕事の灰汁を振り落とせなかったそんな日はコンビニ横の自動販売機でペットボトル一本分だけを自分に許す。仕事の不機嫌はできるだけ家に持ち込まないために。100円だけと決めている。朝のコーヒー代がなくなるからだ。自動販売機に入れた小銭が主任を思い出させた。仕事用の財布は小銭しか入らないが、娘からもらった肩たたき券が入っている。それを見て、主任の報告書類の量の多さを忘れる。コンビニの車止めに腰を下ろして煙草に火をつける。そのためだけに、黒いジーンズを仕事へ行く制服と決めている。私は決め事が多い。
消えたばあさんどうなるんやろう…。家族おらんでよかったんかなあ。どこへ消え失せたんやろう…。
仕事は飯のタネと割り切っちゃいるがあのばあさん、かわいかったよなあ。美智子さんとまたおむつ交換の時に唄う約束してたあの有名な替え歌を口ずさんでみる。それから車いす誘導の時の童謡の声を思い出す。おーてえてーつぅぅないでえ。「仲良しね。」のセリフとともに振り返った笑顔。
振り切って自転車をこぎだす。新築一戸建てのドアを開けると人間トイレットペーパーから缶切りへとかわる。
私は缶切り。缶を開ける時しか役に立たないけどないと缶が開けられない。なくてももう今は困らない。プルトップ式の缶詰が増えた今ワインオープナーもつけてはみたけどなくても誰も困らない。のび太だって缶詰はリュックに入れたけど、入れ忘れてしまった缶切り。なくて困ってドラえもんに頼ってた。違う食べ物食べるんだろうな。私は缶切り。ないと困る日が来るまで台所で眠ってる。
旦那が晩御飯を用意して待っていてくれる。彼にも私がいないと困った日があったのに。
愛されてはいる。けれど興味がない。要ることは要る。一本だけでいい。そんな感じ。
晩御飯の後の晩酌で私がリビング横の和室でヨギボーと戯れてても、見には来ないくせに、二階の自分の部屋に引っ込むのは寂しいらしい。私は缶切りだから必要とされるまでじっと待つ。適度に会話を挟んで。適度に離れて。遠隔様観。騒ぎすぎず。はしゃぎすぎず。中身のない会話を。役に立たないワインオープナーみたいに。ワイン飲みは本格的なワインオープナー使うしね。おまけみたいな私。この家の主役はあなた。缶詰はあなたで、プルトップ式だからね。
自分の部屋に帰るとスマホをあけてファンタジーを読む。ご都合主義万歳!!
眠りにつくその前にシフトの確認をする。明日は早出。風呂場で湯もみガールズになる日。
はあああああ?シフトへんこおおお?なあおい。5時半に目覚まして施設入りが6時半。なああ?
「ごめん!シフト変更の連絡忘れてて昨日バタバタで!有休入る前に夜勤がいいか早出がいいか聞いてたのにごめん。」「シフト上の我儘言ったことありませんよね?」あっヤバイ切れかかってる。切れそうになると若干、丁寧語になる。「有休もあまり入れずに、主任のシフトの希望休聞いてから有休いれましたよね?」「ごめん!」「昨日、離設対応でバタバタしてて。」「これは当前の話で恐縮ですけど、遅刻早退してませんよね?」「誰が嫌とかこれが嫌とか言ったことありませんよね?」「いきなり夜勤はなくすっておっしゃっていましたよね?コロナの時に。あの時いきなり夜勤早出こなしたときに」「夜専が、昨日の離設で警察にひっぱられてシフトがぐちゃぐちゃに」「無理です。今日の晩出るので大阪。新幹線のチケットとって初の海外アーティストの日本公演見に行くので。」涙目になりながら訴える。「…。ゆうてたなあ。」「おお!行ってこい。行ってこい。有休あまりまくってるし!有休と希望休三日つなげたるから!ておっしゃっておられました。」「わかった…。いつも無理聞いてもらってるもんな。」「お役に立てず申し訳ございません。」「怖いから!その丁寧語怖いからやめて!」「夜勤の時にペヤング買ってください」「北海道土産に、いくらの瓶詰」「ペヤングで!」「主任の家庭を大事にされた希望休と有休消化率の高さ…。」「トウモロコシ」「ホワイトで」「ペヤングととうもろこしやったらペヤングいらんやろ」「ペヤングをゆっくり食べたいんです。夜勤の休憩の時に。喉詰めるんで。北海道に里帰りなんですよね?奥様のご実家のとうもろこしの素晴らしさをのろけと共に語っておられ」「ごめん」「もうなんも言うな。ペヤングととうもろこしな。」
((朝の7時に帰宅だぜやっふー-!))
「朝の風呂誘導だけして帰ってくれるか」ねえ。心の声聞こえたの?
「対策会議と対策書類あんねん。監視カメラ巻き戻してチェックせなあかんねん。警察にも提出するけど。その前に。死亡診断書出されへんから行方不明者で出さなあかんし。」疲れ切った主任がリーダーに分かりやすく”お願い”という名の指示を出す
「了解しました。サビ残しませんからね?」
「「なくそうサビ残。無駄会議!」」二人で心からハモった。
おう10時前だぜ。ペダルをこぐ足もスキップしているようにかるい。
いつもの帰宅時間ではないことがワクワクさせる。帰ったらあれしてこれして。
大きなブレーキ音とタイヤのスリップ音と連続するクラクションが同時にして車道を見ると車が迫ってくる。え?え?暗転して目が覚めたら、これぞテレビで見ました救急医療。を受けている私と娘たちがチケットを握りしめて必死に何か叫んでいる。見えるはずのない光景。旦那も珍しくいるじゃない。あら息子まで?あれ?死にかけている?
「うん。そうだね。持ってあと二日位?」突然の声にびっくりしてあたりを見回すと、綾○剛ににたジーンズの似合うお兄ちゃんが浮いている。「えーとあなたどちら様?」「神様」「んーどっちかっていうと神様の下っ端?」「ぱしり?」「違うわ!部下!」「あっへええ。」えーと「なんで綾○?」「最後位、気持ちよく旅立ってほしいじゃない。サービス?」「なんかさあ。聞くことほかにあるでしょ?」「何でもこたえられるの?部下なのに?」「神様だからね。エリートなのこれでも。一応。」「どーやって死んだの?」「あれ。もう受け入れてくれるんだ?死ぬこと」「だってしょうがないじゃない。死ぬのは間違いないんだろうし。この状況で生き返っても医療費で家族に迷惑かけそうじゃない。無理を通せば筋が引っ込むでしょうよ。」「ふーん。えーとね。最近はやりの車の逆走。」「あららーかわいそうに。私一人だけ?運転してた人私死んじゃったら、罪が重くなるね」「んーそこは大丈夫。なかなかのくずだったし。」「あっそーなん?そーなんだ。そっかあ。じゃあ最後位役に立ったかあ。じゃあ私の人生もくず社会的に抹殺で締めか。ふーん。そっかそっか。」「じゃあ死んでからのシステム初めてのことなんでわからないんで、お世話かけますがよろしくお願いします。」軽く手を揃えてぺこりとおじぎをする。「えー--?そんな簡単にいいの?もっとこぅさあ。あるじゃない。なんかこう、想いのこしとか。」自称神様が腕を組んで首をかしげてのぞき込む。って言われてもねえ。ありゃせんわそんなもん。子供三人、もお二十歳こえてるし。旦那のおかんは精一杯みたし。うちのおかんはものぉなってるし。
神様に手を取られて暗い廊下を迷いなく進む。神様はジーンズ姿からスーツ姿に変わっている。手を握られて緊張と興奮ではしゃぎ声が出そうで恥ずかしい「手、離してくれてダイジョブですよ。逃げませんし。歩けますし。」「あ、わるいね。んー」空いている手で額を軽くこすりながら神様が下々である私にわかるように説明しようと口を開く。(この人軽いけど神様なんよねえ。一応、一般ピーポーの私にも丁寧よねー)「んー手つないでいることにも意味があって。えーと何て言うの?所謂存在?が軽いの。あなた。手を繋いでないと消えちゃうの。必要措置だから我慢して?」「ああ。はい了解しました。役得ですね。」にやりと神様は笑って、廊下のいくつかの武骨なドアをやり過ごして”専務”と金のプレートに黒字で書かれた表札のかかったドアを3回ノックした。
((せんむ!?専務!?えっちょっいやまって?ヤバい匂いしかしない!))
ドアの向こうから中々渋い声のおじ様が「来たか。入れ。」というと神様がドアを開けて私の背中に手を添えて「お連れしました。遅くなって申し訳ございません。」と頭を下げた。
(うっわ。神様が頭下げてるよ!ヤバいヤバいヤバい。閻魔?なに?裁判てきなやつ?私簡易裁判しか受けたことない!)「大丈夫。こちらが迎えに上がったのにも事情があるからね。安心して。悪い様にはならない。」
ドアの向こうにはThe半沢直樹!な執務机がどーんとすえられ、前に応接セットがあり、ドアの横に秘書らしきご婦人が座って微笑んでらっしゃる。鉄壁の布陣である。もう逃げようがない。
見ると応接セットのソファに、美智子さんがいる。
思わず駆け寄りそうになって、この部屋で一番偉いはずのおじ様(専務?)にぺこりとお辞儀して、一番立場が下であろう私のお辞儀なんて軽いものだけど、「知り合いがいらっしゃるようなので少し話をさせていただいても?」と尋ねるとおじさまは鷹揚に(鷹揚にうなずくなんて初めて見た!!)うなずかれて、「うむ。積もる話もあろうからな。10分ほどならいいぞ。」と許可をいただく。
美智子さんにゆっくり歩み寄る。皮下チェックをしてしまうのは職業病だ。しゃがんで目線をあわせゆっくりと声をかける。慌てず粘り強く。無理強いしてはならない。「会えてよかった。寒くない?」優しくそっと手をつつみこむ。会えてうれしいことを伝えてからが勝負だ。自分で帰られるのか。まだ間に合うのか。彼女がどうしたいのか。二人の人間の前でかすんでゆくように消えたという。普通の死に方じゃない。何か理由があるはず。私がここに来たことにも。思い出せ。私は缶切り。今がその時。勘が告げている。「大丈夫。いつもありがとうね。」(ん?いつもより、なめらかだ。声のカスレもない。手首の脈も徐脈と言うほどじゃ無い。おちついている。)「何で来たの?私はね、ハンサムに連れられてきたんだよ。」笑いながら彼女を尋問しない質問を考える。「まあ!そうなのね。ふふっ。いずたにさんたらおかしなひと。私はね前々からお約束していたみたいなのよ。寿命が来たらこちらにお世話になりますって。」「美智子さん、消えちゃったから、みんな驚いてますよ。」
手をさすり痛くはなさそうだと独り言ちる。その間も美智子さんは柔らかく微笑んで日本水仙のようだ。「最後はね。私のわがままだったの。家族もいないし。忘れられちゃったら寂しいでしょう。驚かせたかったの。いたずら成功ね。」(いたずら?主任、夜勤お疲れさん…。)「そうですか。それはよかった。じゃあ今は助け要らないんですね。」再度確認をとる。大丈夫ですかとは言わない。反射的に大丈夫と答えてしまうからだ。「助けは要らないんだけれど、結婚式に出てほしいの。」にっこりと満面の笑みで小首を傾けて美智子さんはおっしゃられた。「はあ?結婚式?え?葬式じゃなく?結婚式?誰と誰の?」「いやあねえ。私のよ。もうここは死んじゃった後の世界なのよ。葬式なんてしないわよ。」…。しないんですか。そうですか。「後、できればでいいんだけど、私の家族になってほしいわね。」「ん?えー。ん?」パワーワードを連発されてフリーズする。
だめだこれは!あれだ、あの時以来だ。インフルで夜専、日勤消えてズタボロになった日の主任と同じ奴だ。あの時も流されてえらい目見たじゃないか。流されちゃダメだ。流されちゃダメだ。
専務を見る。緩やかにうなずいておられる。これは味方の振りした敵だ。理事長だ。
自称神様を見る。下を向いて助けてくれそうにはない。一人で戦えと?
「あの…。いくつか確認したいこともございますし。私こちらに来たばかりで、右も左もわかりませんし。美智子さんの希望を聞いた上でですね。情報のすり合わせをしたいというか…。」
(下手なことしやがったらわかってんだろうな。暴れてやる。存在かけて脅してやる。)
それでも軽いであろう私の眼力を受けて神様は、「そうですね。ここからは、三人で話しましょう」と美智子さんをエスコートして別室へ誘導してくれた。
「専務?であってます?」二人きりになると介護者の立場やら、死んだばかりの下っ端であるということもかなぐりすてる。専務は目を見開いて「ああ。専務というのは立場が上だとわかりやすいようにしてるだけだ。上位神でも、仏様でも何でもいい。常務でもいいぞ。好きなように呼べ。」
「あのさあ。専務さんさあ。まさかとは思うんだけど、美智子さんの結婚式?の参加のために、私殺されちゃったわけ?さっき存在軽いって聞いたんだけど、軽い存在なら殺しても構わんだろうって?」
「そんなことはできない。いくら私でも規制がかかる。」「ふーん。」「みちが死んで、こちらへ参ってな。さあ、地球のアジア支部のやつが、みちと婚姻したいってことで、届を出しに来た時に結婚式をしたいと。で、結婚式の参加者でみち側の参加者が偉く少ない。かわいそうだとなってな…。」
「それで?」「でだな、日本世界でみちが呼びたくて、寿命が残りわずかで魂が強いお前が選ばれたのだ。」「たまたま?」「そうたまたまだ。」「ほんとかねえ。」「ほんとうだ。みちは元々日本世界の魂ではないのだ。日本ではない世界の所から世界のほころび修復の時の事故でな、呼ばれたんだ。その時にみちの魂遍歴、履歴書みたいなものだ、それを見たアジアの上層部の奴がな惚れてしまったんだ。
で無理やりみちを日本へ縛り付けてしまった。返すにも返せんし。わしのもっと上の天上人は怒り狂うしで大変であったのだぞ。」「ふーん」「長い事情説明ありがとうございます。でも私関係ないですよね。」
「じゃあ私これで」「いやまて。待つんだ。みちが悲しむぞ。」「美智子さんは好きですよ。でもね。わがままを全部許せるほど好きじゃないです。私を参加させるときにどういったことが起こるのか。それによって誰が迷惑をこうむるのか。いたずらにしてもそうです。美智子さんのいたずらで主任や夜勤者が犯人のごとく疑われて。大変だったんですよ。説明責任ありますよね。結構、かなり切れてるんです。」「…。すまん。」「すまんの一言で私娘と行くはずだったライブとか、息子の彼女と仲良くなる努力もさせてはもらえず、孫が生まれるかもしれない未来も立ち消えたわけでよね。」
「すまん。」「戻してはもらえないんですよね」「すべて同じというわけには。それにあのままでも、1年かそこらの寿命であったからなあ。」「一年かそこら結婚式待てなかったんですか。」
「う。すまん。アジア支部の奴も長いこと我慢してみちまっておってなあ。つい、いきおいで。」「あと家族になるとはどういうことですか?」「子供がこの場合転生時にということだが。親を選ぶことができると聞いたようでな。」「美智子さんの子供に生まれ変わるとか、美智子さんのご親族と結婚するということですか?そんなことできるものなんですか?」専務は顎を撫でてゆっくり考えてからこたえる。「すぐにというわけにはいかん。手続き上いろいろとあるからな。できんこともない。という段階だ。みちがどうしたいのかにもよるし。其方がどうしたいのかにもよるだろう。」
「わかりました。結婚式には参加します。家族になるのは保留で。」「参列してくれるか」
「話は私からします。席を設けてくれますよね?アジアのバカ支部とも。まさか、私の時間1年縮めておいて時間がないとは言いませんよね?」「ふむ。」「よければ、専務の上司とも話しますよ?」「いやそれは…。あいわかった。直接話すがよかろう。」「結婚式とかこちらでは普通なんですか?」「アジア支部の奴が特殊なだけだ。普通、天上人は眷属にするか現人神にしてしたがえるだけだ。前代未聞だ。」「ですよね。」
自称神様に伴われて四阿へはいる。四阿には少し若返った美智子さんと美智子さんをうっとりと見つめるアジア支部がいる「支部長おつれしました。」(ふーん。支部長なんだで、自称神様より上なわけね。)美智子さんは日本茶をゆったりと飲んでいる。まさに喫茶という感じ。嗜むとかこういう感じなんだろうなあ。上品だな。「美智子さんゆっくり寝られているようですね。お元気そうでよかった。若返られました?」「ここで過ごしていると若返ってゆくようなのよ。」「そうですか。美智子さんがしたことどう考えられてます?」「したこと?」小首をこてんと傾けて本当にわからない様子だ。
本当に何も知らないのか?確信犯か?
「美智子さんの結婚式へ参加するにあたって、尋ねられたわけでもなくいきなり寿命残り1年で、殺されたんですよ。私。」「まあ!そうなの?」「バカ者!語弊があろう!殺されたなど!」「そういう風に操作しましたよね?残り1年でもかけがえのない私の人生です。結婚式があるからと言って普通、問答無用で殺しませんよね。」「結婚式という晴れ舞台を手放しで祝うことができそうにないです。」
「あなた、知っていて、わかった上でやったの?」美智子さんから低い威圧的な声が発せられる。「いやみちの為にな。サプライズだったのだ。日本の思い出を話すたびにでてきておったから。みちはこちらでも友人が少なかろう?お前!なんなのだ。天上へこれたのだぞ。みちのおかげで。喜びこそすれそのようにいうとは!」「あなた。私世界渡りの時に森の中からいきなり戦後の大阪だったのよ。5歳で。
問答無用で。あなた、お前の魂が欲しい。ともに人生を歩んでほしい。あきらめきれなかったのだ。もうこのようなことはしないとおしゃったのはあれは。嘘でしたの?」美智子さん5歳かよ。ロリコンじゃねえか。「あ・な・た?天上人の神託会議で大問題になって罰としてわたし92歳まで日本へ落されてあなたはアジア支部の末端からやり直しでしたわよね?」「…。みちのことになると目の前の些末なことが消えうせるのだ…。」「些末?人の人生些末ですか。」「ごめんなさいね。いずたにさん。この人こんなバカだけど普段は仕事真面目なのよ。」「はあ。それから美智子さん。いたずらどうお考えです?美智子さんのいたずらのおかげで迷惑をこうむった方々がいます。主任は膨大な量の書類。夜勤者は警察へ引っ張られて。おかげでシフトはぐちゃぐちゃだし。私も死んじゃったから多分主任穴埋めで大変なことになってます。」「それは…。ごめんなさい。そこまで考えてなかったの。寂しかったの。長い人生を過ごしたのに私のこと覚えてないんだなって思ったら。5歳から孤児院だったし。養父母も早くに死んでしまったし。この人こんなだから家族持とうとしても邪魔してくるし。」
ヤンデレかよ。ヤンデレ・ロリコン最悪じゃねえか。斜めに見た私にアジア支部長が「幼女趣味ではないぞ。魂を見たのだ!殊の外みちの魂は光り輝いて眩しかったのだ。」「はあ。わかりました。結婚式には参列します。家族は保留でお願いします。」「何故だ!みちと家族になれるのだぞ。素晴らしきことではないか!」「あのね。バカ支部長。美智子さんとはお客様とサービス提供者だったの。いきなり家族なんてドンびくでしょうよ。」
白いハトが青空へ放たれる。美智子さんが白く長いトレーンを引きずって祭壇の前まで来るとバカ支部長の手に自分の手をそっと添える。エスコートする人間がいないのは美智子さんの要望によるものだ。私は一人で立って歩いてきたその人生を否定するつもりはないと。ドレスにするか角隠しにするかでもめにもめたのはいい思い出だ。専務が誓いの言葉を述べる「ミチル。和名、神崎美智子。辞める時も…。」(ああ。だから”みち”なのか。)美智子さんが私を呼んだ理由をおもいだす。役割と自分に正直だったこと。美智子さんの今を見ていたこと。昔どうだったかじゃなくて今どうなのか。昔もひっくるめて見てくれてたでしょう。と。
異世界へ行くかもしれない長い長い私のお話。
つづくかどうかはわかりません。初投稿作なので。