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CROSS DAYSTAR JADE -Jewel of Youth ep3-  作者: すこみ
第四話 地下
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9 兵器

 タオルを冷たい水に漬け、よく絞って寝室へと持って行く。


「う、うう……」


 ファルは一晩中うなされ続けて未だに意識が戻っていない。

 治安維持軍の兵士が去った後、リシアは急いで近所の闇医者を呼びに行った。

 とりあえず応急処置をしてもらって、骨折した患部を固定してベッドに横たわらせてある。


 一応、安静にしていれば命に別状はないそうだが……


「おい娘」


 闇医者が不機嫌そうな声で呼ぶ。

 リシアは急いで部屋に駆け付けた。

 顔に傷がある闇医者は博士の眠るベッドの横で気むずかしい顔をしていた。


 態度は悪いが金さえ払えばプロの医者と同様に診てくれると最下層では有名な男だ。

 バジラの研究資金を一部治療費に充てたので金の面で文句はないが、どうもリシアはこの男が好きではなかった。


 闇医者は告げる。


「ハッキリ言うが、こっちの爺さんはもうダメだ。三日と持つまい」


 予想はしていたがかなりショックだった。

 博士は腹部を銃で撃たれてる。

 高齢の上に大量の失血も多く、かなり危険な状態であることは明らかだった。


「なんとかならないの? お金ならもう少しあるよ」

「金の問題じゃない。八方手を尽くしたが、こいつはどうにもならん」


 口うるさく厄介な爺さんだったが、それでも知り合いが死ぬと宣告されるのは堪える。

 リシアは全身から身体の力が抜けるのを感じて壁にもたれ掛かった。


「……次の患者が待ってるんでな。娘の容態はまた診に来る」


 闇医者は素っ気なく言って荷物をまとめて去って行った。

 残されたリシアはベッドに横たわる博士の顔をのぞき込んだ。


 ファルと違って博士に苦しそうな表情は見えず、ただ眠っているだけのようにも見える。

 その静けさがかえって博士がこのまま目を覚まさないんじゃないかと錯覚させる。


「ご飯、食べるかな……」


 それでも何かをしていないと気が狂いそうだった。

 二人が目を覚ました時のために何か栄養のあるものを作ろうとキッチンに向かう。


 その時だった。


「なあ、トメさん」


 低いしわがれた声が謎の人物の名を呼ぶ。

 振り返ると博士がベッドから起き上がろうとしていた。


「は、博士!? 動いて大丈夫なの!?」

「年寄り扱いするな、たわけが」


 年寄とかそういう問題じゃない。

 腹に巻かれた包帯からは今もじんわりと血が滲んでいる。

 少し動くたびに身体がぷるぷる震えているし、どう考えても動くべきじゃない。

 それでも博士は険しい表情で立ち上がろうとする。


「だ、ダメだって、安静にしてなきゃ!」

「いいから、トメさん」

「トメさんでもなんでもいいよ! とにかく横になって、安静にしてれば怪我は治るって医者も言ってたから!」


 リシアはとっさに嘘を付いて博士の身体を押し止めようとした。

 しかし博士は強い力で彼女の手を振り払い杖を手に取る。


「時間がない。黙って着いてこい」

「え……」


 ボケているわけじゃない。

 たぶん、ふざけているわけでもない。

 博士の纏う空気は真剣で有無を言わせぬ強さがあった。


 ふらつく足で部屋を出て行く博士。

 リシアはせめて肩だけでも貸そうと横に並んだ。

 一瞬厳しい目で睨まれたが、支えるだけとわかると再び歩き始める。




   ※


 向かったのはバジラがバギーを作っていた整備室。

 すでに部屋の主もバギーもなく、床に工具類が雑多に散らばるだけの寂しい部屋。

 博士は迷うことなくその一角へ向かうと、何もない壁に手を当てレンガを横にスライドさせた。


「隠し金庫……?」


 こんなのが存在していたなんて初めて知った。

 博士は中に手を突っ込むと、金色に輝く腕輪を取り出した。

 何度も手を突っ込み、一つ、二つ……合計で五つ。

 それぞれに装飾が異なる色違いの宝石がはめられている。


「トメさん、あんたに頼みがある」

「あ、はい」


 もしかして冗談じゃなくて本当にトメという名前で覚えられてるのかもしれない。

 とにかく茶化すような雰囲気ではないので訂正はせずに話を聞く。


「こいつを紅武凰国に持って行ってくれ」

「え……」

「ふさわしき者が持てば、必ず世界を救う希望になる」


 ということは、これがバジラが言っていた博士の開発した兵器ってやつなのか?

 リシアはてっきり小型の核爆弾か何かだと思っていた。

 死ぬ気の特攻をする気なのかと……


 だが、これは何だ?

 一見すると単なる装飾品にしか見えない。


「こんなもので日本を滅ぼせるの?」


 疑問がつい口から出る。

 博士は眉を顰めてリシアを睨んだ。


「滅ぼしてどうする。それに敵は日本ではなく紅武凰国だ」


 その辺の違いはリシアにはよくわからなかった。

 国家が分断されていようが、一般的なクリスタ人から見れば対して変わりはない。


「兵器なのか、これ」

「兵器と言えば兵器ではある。だがこいつを使う目的は破壊ではない。やつらが独占しているSHINEの秘密を暴くことだ」

「シャイン?」

「紅武凰国が利用している、E3ハザードの影響を受けない電気に替わるエネルギーだ。そいつの秘密が世界中に公表されれば地球はかつての繁栄を取り戻す。クリスタの民もこんな地下深くに潜らず、地上で再び機械文明の恩恵を享受することができるようになる!」

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