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CROSS DAYSTAR JADE -Jewel of Youth ep3-  作者: すこみ
第二話 管理
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11 下等

 死んだ。

 徹二キャプテンが死んだ。


 琥太郎がどれだけ必死に追いかけても、その背中に追いつくことができなかった憧れの先輩が。

 こんなにもあっさりと……殺された。


「う、うわああああっ!」


 耐えきれなくなった真男が絶叫を上げる。

 必死になって暴れようとするがブシーズ兵士の拘束は解けない。


「馬鹿が。まだわからんのか」


 別の兵士が真男の頭に銃口を向けた。


「やめっ――」


 琥太郎が止める声を発するより早く、真男の頭が不自然に揺れた。

 頭部に銃弾を撃ち込まれた真男は血飛沫を撒き散らして動かなくなる。


「おいおいおい、なんで殺すんだよ!?」


 副キャプテンの直太が焦った声で文句を言っていた。

 何故か直太だけは拘束されておらず、立ったまま兵士の一人に詰め寄っていた。


「約束が違うだろ! それに徹二は危険遺伝子の持ち主だった可能性もあったんだぞ!」

「抵抗したから射殺したまでだ」

「勝手にこんな事して、お前らの上役に……」


 なおも食ってかかろうとする直太に銃口が向けられる。


「三等国民ごときが口答えするな。生かしてやるだけありがたいと思え」

「だ、だからって、こんなのはあんまりだろ」

「文句があるならお前も死ぬか?」


 そう言われて直太は押し黙る。


「貴様は命じられた仕事だけこなせばいい。我々の行動に口出しをするな」


 一体なんなんだこの状況は。

 状況から推測するに直太はブシーズ兵士たちがトラックを止めることを知っていたらしい。

 思い起こせば琥太郎を誘ったのは彼だったし、きっと他のみんなもそうだったのだろう。


 琥太郎たちは、はめられたのだ。

 しかし一体何のために?


「危険遺伝子を持つ可能性がある人物は二人いるという話だったな?」

「……はい」

「もう片方はどいつだ。まさかと思うがこのガキではないだろうな」


 ブシーズ兵士は真男の遺体の頭を爪先で小突いた。

 まるでゴミ扱い、こいつらは三等国民を人間とは思ってはいない。


「違います。もう一人はそいつ……」


 直太はゆっくりと腕を上げ、琥太郎を指差した。


「ふん、こいつか」


 ブシーズ兵士が琥太郎に近づく。

 髪を引っ掴まれて頭を上げさせられた。

 野生動物さながらの悪臭漂う顔を近づけてくる。


「おい小僧」

「……」


 不快さに無言で視線を逸らす。

 背中を思いっきり殴りつけられた。


「がはっ!」

「呼ばれたら返事をしろ。下等国民は学校でそんなことも習わないのか?」

「げほげほっ……!?」


 こいつ今、下等国民と言ったか?

 琥太郎は咳き込みながらふつふつと怒りの感情がわいてくるのを自覚した。


 午前中は大人に混じって労働し、午後は必要な教育を受け、趣味や休養に費やす時間もある。

 自由がない生活でも自分たちは紅武凰国を支えている立派な国民だと教わってきた。

 二等、三等などというのは単なる呼び方の違いだ。

 誇るべき仕事をしていることに違いはないと。


 そんなのは欺瞞だった。

 現に川の向こうに暮らす二等国民には自由と権利がある。

 自分たちは狭い世界に押し込められ、こうして理不尽な暴力に晒されている。


 抵抗した徹二と逃げようとした真男は虫けらのように殺された。

 自分たちの命なんて奴らにとって気分次第で摘める程度の価値しかないのだ。


「どれ、ダメで元々だ。死ぬ気になって貴様の底力を見せてみろ」


 銃口の堅い感触が頭に当たる。

 ゴミを見るような目で見下ろすブシーズ兵士。

 この筋肉女が指先を少し動かせばそれで琥太郎の人生は終わる。

 目前には死が迫っているが、それを怖がるにはあまりにも実感がなさ過ぎた。


 強く拳を握り締める。

 命乞いをしようとは思わなかった。

 どうせ奴らに慈悲や同情の心なんてない。

 たぶん言い訳も通用しない。


 だったらせめて、下等な三等国民として一矢報いてやる。


「うおおおお……っ!」


 精一杯の力を振り絞って背中を踏みつけるブシーズ兵士を撥ねのけようとした。

 しかし、あまりの体重差と力の入りづらい組み伏せられた姿勢のためビクともしない。


「ふん、この程度か」


 ブシーズ兵士が嘲笑する。

 それはこの女が琥太郎の命に価値がないと見做した証明であった。


 まもなく引き金が引かれ命が終わる。

 痛いのだろか、死んだあとはどうなるのか。

 抵抗が無駄だと悟った今になって、ようやく実感を持った恐怖がわきあがってきた。


 いやだ、死にたくない。

 こんなことなら命乞いをしておけば良かった。

 でももう遅い、琥太郎はすべての無念を飲み込んで目を瞑った。


 その瞬間。


「この野郎、いい加減にしやがれぇっ!」

「ぐおっ!?」


 自分を抑えていたブシーズ兵士がぐらつく。

 何かが横からぶつかってきた。

 拘束の手が緩んだが、琥太郎は状況が理解できず、すぐには動けなかった。


 横を見れば別のブシーズ兵士が仰向けに倒れていた。

 そして代わりに立っていたのは、友人のひとり。


「和喜雄……?」


 お調子者の和喜雄がブシーズ兵士から奪った銃を構えている。


「よくも真男を殺したな! 琥太郎に手を出すな! 洋一を解放しやがれ!」

「や、やめ……ぎゃっ!」


 大声で叫びながら彼は引き金を引き、無造作に銃弾をばらまいていく。

 撃たれたブシーズ兵士たちはわめきながら路上へと転がった。

 ほとんど抵抗する間もなく七人全員が撃ち抜かれる。


「逃げるぞ、琥太郎!」

「え、あ」

「はやく!」


 サイレンの音が鳴り響き、建物から別のブシーズ兵士たちが姿を現す。

 琥太郎はとにかく気持ちを切り替えてトラックまで全力で走った。

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