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CROSS DAYSTAR JADE -Jewel of Youth ep3-  作者: すこみ
第十三話 反紅武凰国地下組織
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4 カーネリアンVSウォーリア・マコト

 秋山紅葉は悔やんでいた。


 エビナコミューンにおける協力者がウォーリアに捉えられてしまった。

 彼女の事情を考えれば暴走はやむを得ないが、せめて相談くらいはして欲しかった。


 昨日、紅葉が戦った相手は紅葉と同じクロスディスターの力を持っていた。

 あの軍服風衣装の少年も危機回避能力RACを持っていると思って間違いないだろう。

 協力者と同時に拠点を失ってしまったので、これからはより慎重に行動しなくてはならない。


 ディスターカーネリアンになって以降、紅葉は三等国民地域を渡り歩いている。

 東京で通っていた学校がウォーリアに襲撃され多くの生徒が殺されたことは聞いている。

 それに対する報復としてディスタージェイドこと翠が無差別なウォーリア狩りを開始したことも。


 怒りを原動力とする行動は批判しないが、あれでは途中で斃されるのは目に見えている。

 個人が強大な国家と戦うためには闇に隠れ潜んで反撃の準備を進めるしかない。

 だから紅葉はまず東京を出て、外周部から様々な情報を探っていた。


「そろそろ次のコミューンに移動するか……」


 もちろん学校など通ってはいない。

 ここエビナコミューンでは七奈という少女の部屋に住まわせてもらっていた。

 彼女と出会ったのは偶然で、女王の目を誤魔化して外を歩いていた七奈に声をかけられたからだ。


 七奈から得た情報によると、このエビナコミューンのどこかに反体制の地下組織が存在するらしい。

 複数のウォーリアが何度か調査に来ているが未だにその所在は判明していない。

 今回やって来たウォーリアも同様の目的でやってきたのだと思っていた。

 数日間泳がせておいたが、どうやら狙いは紅葉の方だったようだ。


 現在、紅葉がいるビルの屋上からは学校の様子が手に取るようにわかる。

 七奈の姿はどこにもない。

 三等国民のフリをして潜入したウォーリアは窓際で眼鏡の少年と喋っている。

 外への警戒は全くしておらず、RACを誤魔化して接近すれば簡単に暗殺できそうである。


 たぶん、あれは囮だ。

 本命である別のウォーリアがいると見るべきだろう。

 そいつに見つかる前にさっさと壁を越えて相模川の向こうへ逃げるのが得策か……


「よっ。君がディスターカーネリアンちゃん?」


 聞き覚えのない声。

 紅葉はとっさにナイフを投げた。

 背後から気配を消して接近した人物に誰何する愚は犯さない。


「あっぶねえな! いきなり殺そうとするな!」

「ウォーリアか」


 RACは働かなかった。

 紅葉自身の感覚でも接近を察知できなかった。

 おそらく何らかの対処を取っており、かなりの手練れだろうと推測できる。


「おう。マコトだ、よろしくな」


 紅葉は二振りの小太刀を虚空から取り出す。

 クロスディスターが自由に取り出せる召喚武器だ。

 彼の武器は大抵の物質なら斬り裂くことのできる刃である。


 馴れ馴れしい態度に油断はしない。

 躊躇なく飛び掛かって敵の喉元で刃を交差させる。


「だからあぶねえって! フレンドリーにしてんだからちょっとくらい話を聞けよ!」


 マコトというウォーリアはこれもかわした。

 ふざけた態度だが相当手ごわい相手である。


 ここまで接近を許したからには逃走は悪手。

 どれほどの強敵だろうと確実に息の根を止める。


「ちっ、仕方ねえな!」


 マコトはズボンのポケットからコインの束を取り出した。

 それを空中に放り投げると、散らばったコインは空中で動きを停止。

 一瞬の間を置いた後に軌道を変えて一斉に紅葉めがけて襲い掛かってくる。


「かるーく痛めつけるけど、恨むなよ!」


 頭上から降り注ぐ豪雨のようなコイン。

 紅葉は大きく後ろに飛んでその大部分を避けた。

 的確に喉元を狙って来るコインだけを狙って小太刀で斬る。


「えっ?」


 すぐさま懐に飛び込んで反撃。

 刃はマコトの左腕を掠めた。


「痛って!」


 しかし薄皮を裂いただけ。

 ならば次の一撃で確実に首を取る。


「こ、このっ!」


 マコトが隠し持っていたコインを袖口から撃つ。

 それも慌てずに小太刀の腹で受けた。


「うっそだろお前、あれも防ぐのかよ!?」


 どうやらコインを弾丸のように飛ばすのがこのウォーリアの固有能力らしい。

 慣性や重力も無視して狙った場所に正確に当てる脅威的な技である。


 コイン以外にも武器はあると思った方が良いだろう。

 べらべらと戦闘中に喋るだけの余裕も残っている。


 絶対に油断はしない。

 確実に殺す。


「ああ、くっそわかったよ! だったらついてこい!」


 マコトは背を向けて逃亡を開始した。

 身軽な動きでビルからビルへと飛び移りながら走って行く。


 逃がすものか。

 紅葉は周囲を警戒しつつ、敵を追いかけた。

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