第八話・伯爵令嬢、外される
少し短くなってしまいました。
やや意気消沈した内容となっていますが、明日、明後日の内には浮上に向かうと思います。
ハッピーエンドに向けて、週明けには立ち直れるのではないかと。
準々決勝の戦績は、散々なものでした。
辛うじて勝てはしたものの、その内容は決して勝利を誇れるものではなくて。
本来、何よりも優れた武器である“開始打”はネットにかかるばかり。
攻撃は単調になり、相手の“遮断”になすすべもなく。
いつもなら有り得ないミスも多発しています。
その全てが、主将であるわたくしの不調からなるもので。
なんとか立て直してくれているのは副主将のクリス。
ついに司令塔もわたくしではなくクリスを主軸に戦略を変更しました。
プレーをしながら戦い方を変えていくのは、並大抵の頭脳ではできません。
それができる程の実力がある選手に、こんな無様な試合をさせてしまったことに、後悔しかありませんでした。
控室に引き上げたわたくしたちの空気は澱んでいます。
当然、監督兼顧問のアンディッシュ侯爵夫人の表情は険しいものとなりました。
「何が悪いか、分かっていますわね?」
その視線は、わたくしひとりに注がれています。
「申し訳ございません」
アンディッシュ侯爵夫人は、深い深い溜め息をつかれました。
「こんな調子で明日の試合を戦うのは無理だと思いますの。ビーナ、明日は貴女を先発登録から外します」
!!
わたくしだけでなく、みなさまにも衝撃が走ります。
「監督!ビーナ抜きでは、無理です!」
クリスが強く抗議したけれど。
「そもそも今日だって、ビーナがいなくても楽勝できる相手だったでしょう。明日の相手だって、そんなに変わらないはずですわ。決勝に備えて、ビーナを温存しているのだと思わせるくらい、余裕で勝ってみせなさい」
アンディッシュ侯爵夫人の言葉に、わたくしたちは何も言い返せませんでした。
★★★★★
試合後、通常なら学園に戻って翌日への打ち合わせと想定練習をします。
でも今日は。
「ビーナは、今日は帰って反省しなさい」
と、会場の馬車待機場所に置いて行かれてしまいました。
アンディッシュ侯爵夫人が家には早馬で連絡を入れてくださったので、迎えの馬車が来るまで、この護衛付きの待合室にいなければなりません。
学校では男ミネも練習しています。
わたくしがいないことに、マシューは気付くでしょうか。
気付きもしないでしょうか。
でも、知られたくありません。
今日の試合の内容も、わたくしの状態も、明日の試合に出して貰えないことも。
本当に、何をしているのでしょう。
全部、ビアちゃんの言った通りです。
「…ふぇ…」
泣いては駄目。
自業自得ですもの。
自分の心が弱いだけですもの。
泣くのなんか、逃げですわ。
こんな早い時間に帰ったら、お父さまもお母さまも心配なさるでしょうね。
待合室の長椅子で、茫然と前庭を見詰めます。
どうしたら良いのでしょう。
迷路に入り込んでしまったみたいです。
【ミントネット用語】
遮断…ブロック
司令塔…セッター
開始打…サーブ
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