第六話・王都大会を控えて
もうすぐ王都予選が始まります。
“ミントネットの頂”との呼び声高い我が学園は、当然毎年男子も女子も優勝候補に上げられているから、今年も同時優勝を期待されています。
特にマシュー率いる男ミネは、史上初の六連覇がかかっていますから、精神的圧迫も尋常ではないのでしょう。
ビアちゃんに言われた言葉が、ずっと耳に残っています。
『間違ってもマシューさまの負担になるようなこと、しないでくださいね』
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練習の見学禁止。
選手への不用意な接触禁止。
男ミネは人気があるので、今までは練習の見学に来たり、練習後に差し入れをしたり、身分に関係なく許容されてきました。
例えお互いに婚約者を持っていたとしても、“支援者”という形で認められていたのです。
けれども、この大会の前だけはそれが禁止されます。
ミントネットだけに集中したいからです。
いくら応援してくれているからと言っても、支援者に対しては気を遣います。
愛想笑いのひとつもしなくてはならないし、早く帰って躰を休める必要もあるからです。
学校をあげての通達に、女子ミントネット部もピリピリし始めました。
「自分たちの試合に集中したいのに、男子の分まで戦わなくてはならないみたいで苦痛だわ…」
クリスが愚痴ります。
クリスは試合中はめちゃめちゃ強気で、審判の目を盗んで相手チームを煽ったりする策士なのだけれど、試合前は凄く緊張しています。
どうやって切り替えているのか、未だに聞けていないのだけれど。
「わたくしたちは、わたくしたちのやるべきことを頑張りましょう」
空回りする想い。
本当は不安なことや、マシューの側にいられるだけで気持ちが落ち着くことを、ちゃんとマシューに伝えたかったけれど、結局あれからマシューとふたりで話をする機会がなくて。
マシューが視界に入るのは学園の屋内競技場で練習をしている時だけ。
しかも、マシューの視界にわたくしは入っていないのです。
きっと、今度の大会のことで頭がいっぱいなのでしょう。
男ミネの監督や副主将のジェームズ=リボウ子爵令息さまと、話し込んでいる姿が印象的です。
六連覇がかかっているのですもの、自分の代で途切れさせるわけにはいきません。
それは女ミネも同じで、わたくしも主将として連覇を果たしたい気持ちは同じです。
けれど、どうにも気持ちが上がってきません。
こんな大切な時に、どうすれば良いのでしょう。
わたくしはそっと、冷えてきた指先に息を吹きかけました。
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ミントネットの大会は、まず女子大会が行われ、その後に男子大会が始まります。
女子ミントネット部は、心配をよそに順当に勝ち上がり、明日はついに準々決勝。
この試合に勝てば上位四位に入ります。
わたくし自身の調子は、良くもなければ悪くもありません。
いえ、絶好調でない以上は、悪い方なのかもしれません。
主将なのに、情けないことです。
「ビーナ、何か悩みごとでもありますの?」
クリスに聞かれて、動揺してしまいます。
「別に、何もありませんわ?」
こう言ってわたくしが誤魔化す時は、聞いて欲しくない合図。
クリスは、そういう時は何も聞かないでいてくれます。
「なにか、甘いものが食べたくなってしまったわ。ビーナ、寄り道をして行きましょう?」
痩身中だし明日も試合だし、躊躇したけれど精神的緊張の緩和も大切、と判断。
わたくしはクリスの誘いに乗り、我が家の迎えの馬車にクリスを乗せ、王都内の人気喫茶店へ向かいました。
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