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第十七話・伯爵令嬢のその後【最終話】

最終話です。

ここまでお付き合い頂きありがとうございました。

わたくしがマシューの恋人になった日。

この先ずっと、マシューと一緒にいたい、そう思った日。

マシューも同じように思ってくれた日。


この日のことは、ふたりとも後々まで忘れずにいます。


 ★★★★★


翌日、わたくしたち女ミネは圧倒的な強さで王都予選の優勝を得ました。

そしてその後の男子大会でも、マシュー率いる学園の男ミネ部は優勝を果たします。

(いただき)”の名を(ほしいまま)にしたわたくしたちは、そのまま王都―――いわゆる全国大会でも男女同時優勝を果たしました。

勿論、男ミネは念願の六連覇を達成です。


 ★★★★★


わたくしたちの関係は、というと。

実はマシューとわたくしは、幼少の頃―――五歳の時に既に両家の話し合いで婚約がなされていたのでした。

そのことをマシューの父であるネイスミス侯爵も、わたくしの父であるハルステッド伯爵も、当の本人であるわたくしたちに伝え忘れたまま十年以上経ってしまっていました。

お国柄、婚約者を伴って出席するような規則の夜会や式典が、存在しなかったせいでもあります。


「学園の卒業と同時に婚約したい」と両親に話をしたマシューに、ネイスミス侯爵は一瞬不思議そうな顔をした後、突然何やら叫び、そのままわたくしの家に先触れを出したのだとか。

そしてわたくしの家に侯爵夫妻とマシューが訪れ、そこでわたくしのお父さまであるハルステッド伯爵も突然何かを思い出したらしく、大きく叫んでお母さまに叱られました。


マシューとわたくしの婚姻は何も問題なく認められ、卒業と同時に婚約のつもりでいたわたくしたちは、卒業後すぐに結婚式を行うこととなったのです。


 ★★★★★


そうそう、ジムとビアちゃんについて、マシューに教えて貰いました。


なんとジムとビアちゃんは子どもの頃からの婚約者同士で、わたくしたちのように領地が隣で王都の屋敷も隣の間柄。

ジムがミントネットを始めた時に、ひとつ歳下のビアちゃんにミントネットを勧めたのだとか。

当時、令嬢としては身長が高かったビアちゃんはそれに劣弱意識を持っていて、それを払拭するためにジムが画策したのだそう。

案の定ビアちゃんはミントネットの楽しさの虜になり、当時既に実力選手と言われていたわたくしに、憧れてくれていたらしいのです。


わたくしとビアちゃんが初めて会話をしたあの部会の日。

教室からなかなか部室に戻って来ないわたくしをビアちゃんが心配し、教室まで様子を見に行こうと男ミネの部室を出たところへわたくしが戻ってきたそうなのです。

部室にマシューとビアちゃんのふたりだけなのかと不安に思ったあの時、部室にはちゃんとジムもいたのだそうです。

部室に入り扉を閉めた途端に床にしゃがみこんだビアちゃんは、顔を真っ赤にして


「尊い…」


と呟いたのだとか。


そしてビアちゃんを独りで帰してしまったことを悩んでいたわたくしですが、当然あの時もジムはひとあし先に馬車停めに行っていて、わたくしを一目見てから帰りたいというビアちゃんを待っていたのだそうです。


だから、それほどまでにわたくしのことを尊敬してくれていたビアちゃんが、まさかわたくしに厳しい言葉をかけていたとはマシューもジムも思っていなかったらしく。

あの準々決勝の日、泣きついたわたくしから色々と聞き出したジムは、翌日マシューとビアちゃんをふたり並べて叱ったのだとか。


そんなジムとビアちゃんの結婚式は、わたくしたちに遅れること一年。

ビアちゃんの卒業を待って行われました。

このふたりとは、この先長いこと、友好的なお付き合いを続けることとなります。


 ★★★★★


歳をとり、マシューもわたくしも、もうミントネットはできなくなったけれど、相変わらず一緒にいます。

子どもも立派に育ち、長男に家督を譲ってからは悠々自適に、時々孫や曾孫(ひまご)たちの活躍するミントネットの試合を見に行ったりもします。

頭の髪は全部真っ白になりました。

けれど、マシューは今でも、わたくしの頭を撫でるのが好きです。

わたくしも、マシューの胸に抱かれるのが好きです。


手を繋いで室内競技場の客席廊下を歩きます。

ミントネットの有名選手であったわたくしたちは、“伝説”と呼ばれて多くの方々の称賛を浴びていました。

それは歳をとった今でも、ミントネットの会場では忘れられてはいないため、客席にいる方々から温かい眼差しを向けられます。


「ビーナ」


「はい」


客席に座り、試合開始の合図を待ちながら、マシューはそっとわたくしの手を握りました。


「これからも、ずっと一緒にいようね」


マシューの言葉に、静かに頷きます。


残された余生も。

あの世に行っても。

来世でも。

ずっと、一緒にいましょう。


マシュー、大好きですわ。


 ★★★★★


わたくしたちは手を繋いだまま、同じ日の同じ時間に、そっと天寿を全うしました。

多くの子どもと孫、曾孫と玄孫(やしゃご)に囲まれて、暖かな日差しの中、微笑んで天に召されたのでした。



おしまい。



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