第十六話・初めての口付け
どうしましょう。
どうしたら良いのでしょう。
とりあえずマシューに身を任せてみます。
「ビーナ…」
もう一度マシューを見上げると、優しい瞳がわたくしを映しています。
あ…これ…もしかして、目を瞑らなきゃ駄目な流れなのでしょうか?
急に恥ずかしくなって、思わず下を向いてしまいました。
「ビーナ~…」
マシュー、呆れたかしら?
繋がれた手を解かれて、不安になります。
縋るように解かれた手をマシューの胸元に持っていくと、マシューの空いた手が、顎にかかりました。
くいっと上を向かされます。
あ、マシューの顔が近いです。
本当に綺麗な顔。
うっとりと眺めていたらマシューがくすりと笑いました。
「ビーナ、その顔やらしい」
「えっ?」
「目、瞑って?」
言われるままに目を閉じます。
背中にあったマシューの手が、わたくしの後頭部を支えました。
マシューの唇が、ゆっくりと、しっとりと、わたくしの唇に重なります。
初めての、口付け。
「ビーナ…」
わたくしの名前を呼んでは、また口付けます。
「ん…」
角度を変えて口付けてくるから、その度に電流が走るみたいに頭の中が真っ白になります。
唇が触れるだけの軽い口付け。
頭を固定されているから、逃れられなくて、だから余計に興奮します。
「…ぁ…」
恥ずかしくて目が開けられません。
身体から力が抜けそうになって、必死でマシューの上衣を掴みました。
「ビーナ…」
やっと唇を解放してくれたマシューは、そのままわたくしの頭を撫でます。
「ずっと、ビーナのこと、触ってたいなぁ…」
そんなことを言うものだから、すごく愛おしいです。
「ええ。わたくしも、ずっとこうしていたいですわ」
と、マシューの胸に顔を埋めます。
嬉しい。
本当にわたくし、マシューの恋人になれたのですね。
実感すると、涙が出てきました。
「ビーナ?どうしたの?」
「…ん、…すごく…しあわせ…だと、思いまして…」
「そっか。俺も、幸せ」
ぎゅっと抱き締められます。
少し汗の匂いの混じった、マシューの匂い。
これからは、いちばん近くにいて、いちばんマシューを感じていたいです。
いちばんでいたいのです。
マシューに好きでい続けて貰えるよう、頑張りましょう。
「明日の決勝、頑張りますわ」
「うん。応援してる。俺も、六連覇、絶対達成するから」
「マシューなら、絶対に大丈夫だと信じていますわ」
「ありがと」
どちらからともなく、もう一度、唇を寄せます。
そして子どもの頃に戻って、ふたりでいたずらを成功させた時のように、なんの憂いもなく無邪気に笑い合いました。
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次が最終話です。




