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第十五話・伯爵令嬢のときめき

シャワーを浴びて、制服に着替えます。

マシューは、練習着のままでしたわね。

ちゃんとシャワーを浴びたのかしら。


“マシュー”と“シャワー”という単語が、頭の中でもやもやっとして、急に恥ずかしくなってしまいました。

恋人になるって、将来的に結婚するって、やっぱり、いずれはそういうこと?

いつかは、口付けとか、その先とか…あるのですよね、やっぱり…。


うわぁ…急に恥ずかしくなってきました。


 ★★★★★


部室を出ると、マシューが廊下で待ってくれています。


「お、お待たせしました…」


寒くなかったでしょうか…。


「ん。帰ろうか」


と、マシューは自然に左手を出してくれるから、おずおずと自分の右手を乗せました。

ぎゅっと握られて、引き寄せられます。


「手を繋ぐのって、子どもの頃以来だね」


「ええ」


恥ずかしいから、肩掛け(ショール)の中に顔を隠します。

チラリとマシューの顔を覗くと、今までとは違って、男らしくなったように見えます。


 ★★★★★


冬の空は空気が澄んでいて綺麗。

他愛のない話をしながら、馬車停めまでの道をゆっくりと歩きます。

明日も一緒にいられるのに、できるだけ長く、一緒にいたいと思ってしまうのです。


「マシュー。膝は大丈夫ですの?」


「うん。大事をとってたけど、今日の診察で許可が出たから、明日からは普通に動けるよ」


「わたくし、知らなかったから…」


「うん、ごめんね。俺も、ビーナに心配かけたくなかったから」


「ビアちゃんに聞いた時、嫉妬してしまったの…」


「本当に?」


「ええ…」


ちょっとだけ…ちょっとだけ、良いかしら。

マシューの腕に、躰を寄せてみます。

頭も寄せます。


今はもう日も暮れきって、街灯の灯りだけが足元を照らしています。

馬車停めにはネイスミス侯爵家の馬車だけが待っていました。

御者が扉を開けてくれ、マシューに手を引かれて馬車に乗り込みます。

月に二度の部会の後の、いつもの光景。

けれど、お互いに気持ちを伝え合った今は、なんだか凄く照れくさくて。

それは、いつもは向かい合って座るマシューが、今はわたくしの隣に座って、ずっと繋いだ手を離さないでいてくれるせいでもあるのだけれど。


「あ…の、ビーナ?」


「ん?」


「もっかい、ちゃんと確認するね?」


「はい」


「俺のこと、男として認識してる?」


「え…ええ、勿論ですわ」


「じゃあ…俺が、今、滅茶苦茶ドキドキしてるのも、理解してよね?」


「え…?」


姿勢を崩してわたくしの顔を覗き込むマシューは、繋いだ手はそのままに、空いた方の手をわたくしの背にまわして抱き寄せました。


「あのね、男っていうのは、基本的にやらしいことしか考えてないの。だから不用意にくっついたりしたら、触りたくなるの」


そう言ってから、少し躰を離してわたくしの顔を見詰めます。

わたくしはその瞳にくらくらしながら、俯いてしまいそうな気持ちを堪えて視線だけマシューに添わせました。


「あ…えと…ごめん、なさい?」


「…っ!…も、その上目遣いもヤバい…」



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