第十五話・伯爵令嬢のときめき
シャワーを浴びて、制服に着替えます。
マシューは、練習着のままでしたわね。
ちゃんとシャワーを浴びたのかしら。
“マシュー”と“シャワー”という単語が、頭の中でもやもやっとして、急に恥ずかしくなってしまいました。
恋人になるって、将来的に結婚するって、やっぱり、いずれはそういうこと?
いつかは、口付けとか、その先とか…あるのですよね、やっぱり…。
うわぁ…急に恥ずかしくなってきました。
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部室を出ると、マシューが廊下で待ってくれています。
「お、お待たせしました…」
寒くなかったでしょうか…。
「ん。帰ろうか」
と、マシューは自然に左手を出してくれるから、おずおずと自分の右手を乗せました。
ぎゅっと握られて、引き寄せられます。
「手を繋ぐのって、子どもの頃以来だね」
「ええ」
恥ずかしいから、肩掛けの中に顔を隠します。
チラリとマシューの顔を覗くと、今までとは違って、男らしくなったように見えます。
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冬の空は空気が澄んでいて綺麗。
他愛のない話をしながら、馬車停めまでの道をゆっくりと歩きます。
明日も一緒にいられるのに、できるだけ長く、一緒にいたいと思ってしまうのです。
「マシュー。膝は大丈夫ですの?」
「うん。大事をとってたけど、今日の診察で許可が出たから、明日からは普通に動けるよ」
「わたくし、知らなかったから…」
「うん、ごめんね。俺も、ビーナに心配かけたくなかったから」
「ビアちゃんに聞いた時、嫉妬してしまったの…」
「本当に?」
「ええ…」
ちょっとだけ…ちょっとだけ、良いかしら。
マシューの腕に、躰を寄せてみます。
頭も寄せます。
今はもう日も暮れきって、街灯の灯りだけが足元を照らしています。
馬車停めにはネイスミス侯爵家の馬車だけが待っていました。
御者が扉を開けてくれ、マシューに手を引かれて馬車に乗り込みます。
月に二度の部会の後の、いつもの光景。
けれど、お互いに気持ちを伝え合った今は、なんだか凄く照れくさくて。
それは、いつもは向かい合って座るマシューが、今はわたくしの隣に座って、ずっと繋いだ手を離さないでいてくれるせいでもあるのだけれど。
「あ…の、ビーナ?」
「ん?」
「もっかい、ちゃんと確認するね?」
「はい」
「俺のこと、男として認識してる?」
「え…ええ、勿論ですわ」
「じゃあ…俺が、今、滅茶苦茶ドキドキしてるのも、理解してよね?」
「え…?」
姿勢を崩してわたくしの顔を覗き込むマシューは、繋いだ手はそのままに、空いた方の手をわたくしの背にまわして抱き寄せました。
「あのね、男っていうのは、基本的にやらしいことしか考えてないの。だから不用意にくっついたりしたら、触りたくなるの」
そう言ってから、少し躰を離してわたくしの顔を見詰めます。
わたくしはその瞳にくらくらしながら、俯いてしまいそうな気持ちを堪えて視線だけマシューに添わせました。
「あ…えと…ごめん、なさい?」
「…っ!…も、その上目遣いもヤバい…」
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