第十四話・伯爵令嬢、誤解が解ける
部室棟に入り、ミントネット部の部室に向かうと、女ミネの部室前にひとつの人影が。
誰でしょう?
わたくしを待っているのかしら?
あ…。
「ビアちゃん?」
「あ…」
「待っていて…くれたの?」
ビアちゃんは、ペコリと頭を下げます。
「色々、失礼なことを言って、すみませんでした」
いつもと変わらない、淡々とした口調だけれど、表情は多少はにかんだ感じで。
「サビーナさまは、わたしにとっては憧れの選手だから…。ずっと恥ずかしくて隠していましたが、領地にいた頃から憧れていて…。でも、わたしの脚、壊れちゃったから。同じ競技場に立てている人たちに嫉妬してたの、あると思います」
「ビアちゃん…」
「ただ、最近のサビーナさまの様子がおかしいの、見ていて辛くて。でも、今日の練習を見て、安心しました。もう、大丈夫なんですよね?」
「ええ。心配をかけて、ごめんなさい」
「サビーナさまの素敵なプレーが見たかったから、みんなに憧れられるような選手でいて欲しかったから…。言い過ぎました。本当にすみませんでした」
ビアちゃん、そんな風に思ってくれていたの…。
「言ってくれて良かったと思ってますわ。わたくし、どうかしていたの。反省をしています」
「明日の決勝、頑張ってください」
「ええ。絶対に勝ってみせますわ」
にっこり微笑むと、ビアちゃんも笑顔を返してくれました。
「あ、そうそう。サビーナさま、ちゃんとマシューさまに告白されました?」
「え…ええええ!?」
「まだなんですか?」
「え、いや、あの…告白…し、ました。わ」
「え…した、んですか?された、のでなく」
「あ!…あの…して、頂きました…」
「良かった」
「あの…なんで…」
「マシューさま、いつもサビーナさまの話ばかりだから、さぞかし睦まじくていらっしゃるのだろうと思っていたのに、サビーナさまは婚約者じゃないとか言うから、ちょっと混乱してました。男ミネでは公認の仲だったので。でも、今日、ジムに叱られているマシューさまを見て、納得しました。お互いに告白してなかったんですね」
「…ええ…。まさか、マシューがそんな風に想ってくれていたなんて、思わなかったから」
…あれ?
今、ビアちゃん“ジム”って、愛称で呼びました?
男ミネはみなさま友好的だから、身分に関わらず愛称で呼び合っていますけれど、庶務担当のビアちゃんも?
でも、学年はビアちゃんが下だし、マシューのことは“マシューさま”って呼んでいるし…。
…そういえば、ジムもビアちゃんのこと、“ビア”って呼び捨てにしていたような…。
あれれ???
「でも、良いと思います、そういう関係。憧れます」
「ビアちゃん…」
ふたりでほんわかと話していると、後ろからマシューがやって来ました。
「あれ、まだ着替えてないの」
「あ、ごめんなさい。ビアちゃんと話しこんでしまったの。すぐ、着替えるわね。片付け、ありがとう」
「ちゃんとシャワー浴びないと、風邪ひくぞ」
「分かっていますわ」
微笑んで言いながら、部室の鍵を開けます。
「ビアちゃんも、早く帰んないと。馬車停めのところで、ジムが待ってるぞ」
ん?
ジム?
「…わかりました」
ビアちゃんは、少し頬を赤らめて、恥ずかしそうな表情。
あれれ???
「失礼します」
ビアちゃんは、丁寧に頭を下げて帰って行きました。
詳しく聞きたいのだけれど、マシューを待たせているから、とりあえずさっさとシャワー浴びて、着替えなくてはね。
わたくしは慌てて部室に駆け込みました。
誤字などありましたら教えてください。
ポイントなどを頂けると喜びます。
更新時間について、ご希望がありましたらお知らせください。




