表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/17

第十二話・伯爵令嬢と公爵令息(前編)

学校に戻って、いつも通りの練習をします。

いちにち休んで頭が冷えたからか、以前より良いプレーができました。

これなら、明日は行けます。


みなさまは帰り支度を始めたけれど、わたくしはもう少し開始打の練習がしたくて、ひとり、居残り練習を志願しました。


「あんまり無理をしては駄目よ」


と言うアンディッシュ侯爵夫人から室内競技場の鍵を預かり、練習を続けます。


男ミネも練習を終えたから、ここには本当にわたくしひとり。

鞠の弾む音と、わたくしが踏み込む靴音だけが、静寂の中に響きます。


今日も、途中からマシューの姿はありませんでした。

ビアちゃんは競技場にいたから、一緒に行った訳ではないらしいです。

膝の具合はどうなのかしら。

話す機会があったら、聞いてみようと思います。


 ★★★★★


開始打の練習を続けます。

開始打は、最初に相手の陣地に鞠を打ち込むプレーで、ここでそのまま得点を取ることも可能です。

わたくしはこの開始打が得意で、そのおかげで注目される選手になれたのです。

昨日はそれがどうにも上手くいかず、結果、他のプレーにも影響が出てしまっていたのでした。

丁寧に鞠を放り上げ、美しいと評価して貰えた型で素早く打ち切ります。


小一時間練習をして、調子が良いことを確認しました。

真っ直ぐに綺麗に決まって気持ち良いです。


「明日も、よろしくお願いします」


鞠に願いをかけて、片付けを始めます。

ネットをしまって、支柱に手をかけた時、背後に人の気配を感じました。


「ビーナ」


「…マシュー…?」


練習着姿のマシューが、こちらに歩いて来ます。


「ひとりで片付けてるの?」


「ええ」


「手伝うよ」


「えっ?!大丈夫、ひとりでできますわ?マシュー、膝が痛いのでしょう?」


マシューは少し淋しそうに笑って、わたくしの頬を撫でます。


「ビーナは、人の心配しすぎ。俺にもビーナの心配させて?」


「マシュー…」


温かい掌。

なんだかすごく久し振りな気がします。


「今日、試合出なかったって?調子悪い?」


「ええ…。ちょっと凹んでいたのですけれど、もう大丈夫。明日は出ますわ」


「そ、っか。…明日、俺たち男ミネも応援に行くから、頑張って」


「本当?では、更に頑張らなくてはね」


にっこり微笑むと、マシューははぁ~っと大きな溜め息をつきました。


「凹んでたのから浮上できたのって、ジムのおかげ?」


えっ?!

どきん、と胸が振動しました。

ジムが、マシューに何か言ったのでしょうか。


「え…え、昨日、偶然会って…」


「今日、俺、ジムに叱られた」


「え?」


「なんにも言わないのが優しさじゃないって」


マシューの瞳が、後悔の色を湛えて揺らぎます。


「ビーナが凹んでるの分かってた。俺のこと、気遣って何も言わずにいてくれてるのも分かってた。それでも、いつか相談してくれるって勝手に思ってたから、昨日のこと、正直哀しかった」


「哀しい…?」


「ジムがさ、言うんだよ。女の子はそんなに強くないって。ちゃんと言葉で伝えないと駄目だって」


マシュー…?



誤字などありましたら教えてください。

ポイントなどを頂けると喜びます。

更新時間について、ご希望がありましたらお知らせください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ