1/1
1-1
――残響が聴こえる。
うねりのように重なり合った音はステージから解き放たれて、時には反射を繰り返しながら拡散し、やがて力尽きたように虚空へと飲み込まれていく。
誰もが音を発せられない、まさに神の時間とも思える一瞬の緊張。
音の余韻が消えていくにつれて、誰もが現実に引き戻される。
どこからか手を叩く音が生まれ、すぐに拍手となって空間全てを埋め尽くす。
「……そろそろか」
未だ鳴り止まない音が俺の元まで届く中、抑えられているがよく通る声が耳に入る。
ここは仄暗く、最後尾付近にいる俺の場所からでは、声の主が誰なのかは確認できない。
ただ、俺を含め全員がたった一人に身体を向ける。
黒のタキシードに身を包んだ姿は、同性ながら何度見ても様になっている。
言葉にされたことで、今一度感慨深くなる。
周りを見渡してみれば、皆も俺と似た表情で耳を傾けていた。
そうだ、俺たちはここまで来た。言葉は発さずに、相槌を打つ。
「」
思えば、随分と離れたところまで来たものだ――