表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/15

第七節 戦い、終わって

「隊長ォオオ!」






身体が爆破の身を案じて叫ぶ。






「副隊長ォオオ!」






それに呼応して逃隠も叫ぶ。


「どうぞご無事で」


相も変わらず無視される逃隠。感動の再会となる抱擁も見事にスルーされる。




「やるぞ、サケル……」


「はっ!……あいあいサー」


「弔い合戦だ……‼‼‼」




「ザッ……」


二人は身構える。身体は空手で言う正拳突きの前の構えを、逃隠はキックボクシングの様な構えをとる。


「今だ‼‼‼」






「ダッ‼」






二人は走り出す。




「ガッ‼」「ガギィン‼」




「ゴッ‼」「ガギィン‼‼」




身体は拳を、逃隠は蹴りを繰り出すも、硬い壁によって阻まれる。次に渾身の右ストレートを放つ身体。






「ビュン‼」


「ゾム!」






それを左にかわす壁のゾムビー。




「ブン‼」




すかさず右ストレートを裏拳に変えて繰り出す身体。


「ガギャ……」


ヒットした。しかし……


「ピシッ」


右拳にひびが入る。


「ぐぅ……なんの!」


次いで左拳を掲げる身体。


それも――


「ガギャ‼」


「ピシッ」


両腕共にひびが入ってしまう。


「副隊長‼ くっソおおおおオ‼」


刀を振りかざす逃隠。




「フォン!」


「カッ‼」




弾き返される。


「なァ! なんのこれしキ」


両腕を体の前で組み、ダッシュする逃隠。


「行くゼイ‼」


そのままタックルする。しかし――






「ガギャア‼」「バギ‼」






逃隠の両腕は粉砕骨折した。


「‼‼‼‼ がアアアアアア‼」


阿鼻叫喚ともとれる悲鳴を上げる逃隠。


「サケル‼ 下がってるんだ‼」


身体が叫ぶ。


「サケル君‼」


尾坦子を近くで守る主人公も叫んだ。




「クッそおおおおおおおお‼」




身体は無謀ともとれるような行動に出る。考えなしに突進していったのだった。


「ゾム……」


「ゴッ‼」


顔面にゾムビーからの重い一撃が入る。そして




「ゴン‼」


「かっは!」




腹部への重い一撃。身体は吹き飛ばされ、肋骨は骨折した。身体副隊長、沈黙。


「副隊長ォオオ!」


主人公は叫ぶ。


「ふく、たいちょウ……」


逃隠は叫ぶこともできない。しかし遂には渾身の力を込めて叫ぶ。


「つ……ツトムゥ‼ 行け、行くんだァアア‼」


残るのはこの物語の主人公、主人公ツトムのみとなった。


「……行く……行くんだ……行くぞ……‼」


主人公は自分に言い聞かせるように呟く。




「ザ……」




身構える主人公。そして――




「リジェクトォオオ」


リジェクトを放つ。


「ガギィン‼」


リジェクトは無効化だった。




(次はもっと近くで!)




「ダッ」




主人公は壁のゾムビーの懐に入る。


「ゾ……」


右拳を振りかざすゾムビー。


「回避の術!」


主人公は自分の一番得意とする技を使った。回避の術で殴打を避け、リジェクトを繰り出す。


「ハッ‼‼」


しかし、




「ガギィン‼」




その技も、当然の如く弾かれた。そして


「ゾム‼」


主人公の腹部に、お返しと言わんばかりに一撃を加える壁のゾムビー。


「かっは……」


吹き飛ばされる。




「ガッ」




ラボの壁まで飛ばされる主人公。


「ガハ‼ ガハ‼」


余りのダメージに咳込む。


「ツトム――‼ さっきのだ! さっきの技を使うんだ‼」


目を覚ましたのは身体。持てる力をもって全力で叫ぶ。


「副……隊長」


満身創痍の主人公。爆破も身体の声に目を覚ましたのか、目蓋をゆっくりと開いた。


「ツ……トム……行けぇ‼‼ 行くんだ‼‼」


叫ぶ爆破。次いで


「行けェ――。ツトムぅ――‼‼‼」


逃隠も叫ぶ。




そして、




「ツトム君‼ 頑張って‼」


尾坦子も声を上げる。




主人公は確固たる自信を持って進む。自分にとっての天敵、苦手とする石のゾムビーを倒し、文字通り自分が愛する者、その者を守ったという自信。それを持って、主人公は進む。




主人公は左手の人差し指と中指の間に右手人差し指を置き、次いでそのほかの指を並べて置いていった。主人公の体は虹色に輝き始める。主人公の手のひらから光りの矢の様なモノが出始めた。




「ハッ‼」




矢は大きさを増していく。主人公は手のひらを壁のゾムビーに向けた。


「行っけぇえええええええ‼‼‼」


光りの矢は壁のゾムビーに向かって放たれた。


「ゾ……」


壁のゾムビーは光り輝いて段々と消えていった。




「シュウウウン」




「やっ、やった……‼」


「カラン」




そこには二つの宝石のみが残った。


「ツトム君‼」


主人公に一番最初に近寄るのは尾坦子だった。抱きしめ、言う。


「ケガはない⁉」


「おなか殴られちゃったから少しそこが……(今日は二回も殴られちゃったなぁ。でもその分二回も抱きしめられた)」


「ツトム‼ よくやった」


次に労いの言葉を掛けたのは爆破だった。


「何だったんだ? さっきの技は?」


「自分でもよく分かりません。でも、大切な人を守りたいと、切に願った時体が輝いて……」


「今の技になったんだな?」


「はい」


爆破と主人公は会話を交わす。


「やったんダーイ……ってワー‼」


近寄ろうとする逃隠の首根っこを掴んだ身体は言う。


「先程発現した技でして、こちらの女性を元の姿、人間に戻す性質も持ち合わせております」


「何⁉ それは本当か?」


「はい……」


「……」


身体の言葉に、少し考え込む爆破。


「ところで隊長、セツナさんは?……」


「そうダイ! あのトサカ頭はどこダイ?」


何の気なしに主人公は問い、逃隠もそれに続く。


「…………」


爆破は首を横に振った。






――――、


「何……で。どうして」


「くソ……!」


「……」


主人公は嘆き、逃隠は怒り、身体の顔は下を向いたままだった。


「あの……私は……」


「そうだ! 尾坦子さんは元に戻れたんだから、セツナさんだって……」


尾坦子の一声に、反応し、続く主人公。


「ツトム、見たところあの技は体力を存分に使う技だと見受けられる。それに、この方はゾムビー化した後も正気を保ち、人の為に動けた。しかしセツナは違ったんだ。私たちに刃を向け、攻撃してきた……恐らく、元には戻れなかったであろう(今は、そう言い聞かせるしかない……)」


「そんな……」


爆破の言葉に、ショックを隠せない主人公。爆破は続いて言う。


「子供じみた表現だが、ツトムとこの方との信頼関係と、思いが通じあってこその奇跡が生んだ産物だったのだろう」


(私って、特別だったのか……)


尾坦子は静かにそう思う。




「救護班‼ 急いで‼」




ふと、隊員の声が聞こえ始めた。


「さて、……ラボはこの有様だ。上への報告からだな、私の仕事は――。今回はずさんな警備体制も惨事の原因となった……。ふぅ、皆は清掃班の手伝いでもやっていてくれ」


爆破はそう言うと、少しふらつきながらラボの中へ歩いていった。


爆破は自責の念に駆られていた。自らの抜刀セツナへの処遇は、遺恨の念しか残らなかった。


(狩人部隊……それは一種の軍だ。……軍を保有する上での責任の所在は……私は――もう動かなくては)




「…………」




身体、逃隠、主人公は声も出せなかった。


(もう次の事をお考えになってらっしゃるのですね……隊長。その様な忽然とした態度を取られなくとも……あなたは釈然としない事くらい分かります)


(クッ……死んでモ死なねェようなヤツが)


(セツナ……さん)


ぼろぼろと涙を流す主人公。それを遠くで見つめる尾坦子。


(ツトム君……私、ツトム君の、あなたの助けになりたい。あなたを助けたい。あなたを……私、あなたのコトが好き)






ラボは数時間かけて清掃された。しかし、施設は所々破壊され、隊員達はラボ設立以来最悪の死傷者を出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ