第三節 本拠地襲来
――狩人ラボ、とある廊下。狩人隊員がケースの様なモノを運んでいる。
(例の宝石、こんなに持って次の実験室に移動……か。研究の成果とやらはでるのかねぇ)隊員の一人が、心の中で愚痴をこぼしている。
「っと、なーんか気になっちまうな。おい、ちょっとここで、中身がしっかりあるか確認するぞ」
「了解。手短にな」
成り行きでケースの中身を確認する事となった。
「パカ……」
中身を確認する。
「1個、2個……よし、全部あるな。それにしても……良く光ってら、不気味なもんだぜ」
何の気なしに宝石を手に取る。
(これを他の石から離してみれば光らなくなるんだよな)
そう思っていたその時、
「ストン! カッカッ……カラン!」
宝石は隊員の手からするりと落ち、跳ねたあと廊下の溝に入っていった。
「いっけね!」
「おい、何をしているんだ! 上にバレたら懲罰モノだぞ」
「悪い悪い、すぐ見つけるから、内密に、な」
「……全く」
宝石を落とした隊員は、溝に手をやる。
(この辺か? ……)
溝は思いの外深く、なかなか手が届かない。
「おい、早くしろ」
「まぁまぁ、そう怒るなよ。今に見つかるって」
ゴソゴソと手を動かす。
「ピチャ」
「ぴちゃ?」
手に湿った何かが触れた。瞬間、「ゾゾォオオ‼」
「緊急警報! 緊急警報! ゾムビーが発生しました。発生区域は……ここ、狩人ラボです! 第4研究室付近を中心に、ゾムビーが現れたと見られます」
爆破自室。手を顔の前で組んでいる爆破。
「本拠地襲来とは、随分と派手な真似を」
ふと、窓の外に目が行く。
「! 何だと……外にも……そして、この数は……!」
「ゾゾォ」
「ゾム」
「ゾゾゾ」
ラボの外ではラボに向かう数十のゾムビー達が。
「緊急警報! 緊急警報! ゾムビーを新たに確認! 数十体のゾムビー達が、ここ狩人ラボに向かってきています!」
抜刀、逃隠、そして主人公へと爆破から連絡が入る。
「緊急の招集命令だ。招集場所はここ、狩人ラボ。ゾムビーが、我々の本拠地である狩人ラボに、わざわざ出向いてくれたようだ」
爆破の表情は決して冷静ではなかった。
「はい、分かりました」
「ピッ」
携帯を切り、狩人ラボに向かう主人公。
(どうなるんだろう? 狩人ラボが襲われるなんて、過去にあったんだろうか……!)
ハッとなる主人公。
(ラボには、……尾坦子さんも!)
――狩人ラボ内、爆破が指示を出している。
「非戦闘員は武器庫へ避難しろ!」(マズいな……第4研究室付近以外に、外からも敵が……。研究室付近だけでも、恐らく隊員の射的能力を持ったゾムビーが居るため厄介なのに……)
「隊長!」
身体が現れた。
「只今参りました! 前線へ出てゾムビーと対処致しましょうか⁉」
「いや……」
爆破は申し出を拒否する。
「副隊長は主力の隊員の中でもこのラボの造りを良く知っている。その為安全な場所が頭に入っているはずだ。非戦闘員の非難の補助を頼む」
「ハッ‼ 分かりました‼」
爆破の指示を受け入れる身体。
「研究室付近のゾムビーは私が駆除する! 戦闘員の半分は正面入り口前の群集に対処してくれ!」
「ラジャー」
狩人は戦闘態勢に入った。
――「ツカ……ツカ……ツカ!」
爆破は第4研究室に続く廊下に辿り着いた。
「やはり、――か」
爆破の前には銃器を持ったゾムビーが4体、立ちふさがっていた。
(隊員が数名やられたか。と、いう事は……)
銃器を構える2体のゾムビー。
「カチャ」
「すっ」
爆破は左手を差し伸べる。
「タタタタタタタタ!」
「バチン!」
ゾムビーの発砲と共に指を弾く爆破。
「ボッ! ボッ! ボッ!」
銃弾は爆破によって爆破された。
「……お返しだ、バースト‼」
「ボボンッ‼‼‼」
「ザッ」
主人公が狩人ラボに到着した。
(正面入り口のゾムビー、ものすごい数だった。迂回して東側入り口から入ったけど、判断、間違ってなかったよね。スマシさんに連絡しても通じなかった……)
「そうだ、尾坦子さん!」
主人公は尾坦子の居る部屋へ急ぐ。
――正面入り口前、隊員達が迫り来るゾムビー達に対して銃器で応戦している。
「タタタタタタタタ‼」
「ゾムッ!」
「ゾバッ!」
銃器の前に倒れるゾムビー。しかし――
「……ゾム」
「ゾ……」
後から、次から次へとぞろぞろ現れるゾムビー達。
「くそっ! キリが無いぜ」
隊員の内の一人が溢す。
「文句を言うな。次だ」
「はいよ」
「タタタタタタタタ!」
「ドムゥン」
「‼」
一体のゾムビーが、銃弾を吸収するように被弾した。
「ゾ?」
そのゾムビーは何事も無かったように佇んでいた。
「あれは……石の……」
「ツカツカツカ‼」
「遅くなったな! 状況は⁉」
爆破が正面入り口前に到着した。
「隊長! 応戦を続けていたところ! 石の、らしきゾムビーが」
「何? 分かった」
「スチャ」
隊員の言葉を聞き、何か取り出す爆破。例の紫色の宝石だった。
「カッ」
先程銃弾を吸収したゾムビーの胴体部分が光った。
「成程、間違いないな。石のゾムビーは私が……」
「抜刀、一閃」
「ズバッ」
一瞬の出来事だった。爆破が口を開き、次の言葉を言おうとした瞬間、光り輝く剣が、石のゾムビーを一刀両断した。
「ゾゾオ、ゾゾオ!」
「スッ……ピン!」
真っ二つになったゾムビーの体から、剣先は石を弾いて、石は宙に舞った。
「パシッ」
左手は宝石をキャッチする。
「よお、遅くなったな」
抜刀セツナ、見参。
「途中にぞろぞろとまあバケモンが居やがったから、相手してたら時間食っちまってよぉ」
ボリボリと頭を掻きながら言う抜刀。
「で、どうすりゃいいよ? 隊長?」
その時、狩人隊員が突如、正面入り口に辿り着き、言う。
「爆破隊長! 東側からも、正面よりは少ないのですがゾムビーの大群が現れています!」
「隊長!」
「…………」
考え込む爆破。遂には口を開く。
「セツナ……行けるか?」
輝く刀を肩に担ぐ抜刀。
「ハッ、とーぜん!」
東側のラボ入口へと足を速める爆破。
「隊長! 石のゾムビーでも、抜刀セツナ隊員なら対処できますね! 流石の判断です」
「…………」
「隊長?」
隊員が話し掛けても、爆破は暫く口を開かなかった。
「もし……」
「?」
「もし……あのペースでゾムビーが現れ続けて、石のゾムビーまで数を増やすと」
「ええ」
「セツナの体力では、確実にもたない」
「⁉」
一方で主人公は、尾坦子の居る研究室前に辿り着いていた。扉が開き、慌しく研究員が部屋から出て来た。
「ウィ――ン」
「あ! 君。避難場所はここではないよ! 僕らみたいなのは早く邪魔にならない様に避難していないと……部屋の中はほぼ、避難が完了しているよ。あのゾムビー以外はね」
表情を曇らせて、研究員を睨み付ける主人公。
「ま、まぁそういう事だから!」
足早にその場を去る研究員。主人公は研究室に入る。部屋の奥のガラス張りの部屋には尾坦子が不安そうに佇んでいた。
「尾坦子さん……」
「タッタッタッ」
速足で尾坦子に近付く主人公。
「尾坦子さん!」
「あ……ツトム君……」
不安の表情を隠せない尾坦子。
「早く! ここから出よう!」
「ウィ――ン」
「‼」
研究室の扉が開いた。そこに立っていたのは、銃器を持った一体のゾムビーだった。