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第十四節 誕生石

(M駅周辺に、誕生石占いの館? かな。こういう店があって良かった。ちゃんとした店かな?)


M駅の改札付近で、誰かを待っている主人公。


(スマシさんからの提案だけど、上手く行きますように!)


どうやら、デートで尾坦子待ちの様だ。




(回想)


「時にツトム、誕生日の月は何時だ?」


「! 2月……ですけど……」


爆破の質問に答える主人公。






「2月の誕生石はアメシスト! 石言葉は、誠実! 心の平和! 覚醒! 愛情! etc…… だ‼」






「! なる……ほど……」


少し納得気味の主人公。続けて言う爆破。


「月までは聞いたが、日付までは言わなくていいぞ、ツトム。色々な占いを試せと言われて面倒事になるからな! その辺は検索も詮索も不要、といった具合だな!」


「は、はぁ……(さり気なく韻を踏んでいる)」


爆破の唐突な発言に、心の中では軽くツッコミを入れる主人公。




「ところで、あの女性、ツトムの彼女の生年月日は知っているのか?」


「えっ?」




爆破からの質問に虚を突かれる主人公。


「そ、それは……(そう言えば、尾坦子さんの誕生日聞いたコトなかった……)」


「なんだ? 知らないのか。意外だったが、その誕生日についても、検索や詮索は不要だな!」


「どうやって検索するんですか?」


主人公は遂にツッコんでしまった。爆破は笑いながら上機嫌で返した。


「ハハハ! まぁ、良しとしようじゃないか。良いかツトム? 恋愛とは、ロジカルでは無い。それはつまり、例えて言うならこうだ! 理系の問題にはイコールで繋がる答えがある。一方で文系の知識や、問題に対する答えの様なモノ、それらは際限なしに多く存在し、これだというモノが無い。そう言った意味で、恋愛とは後者の文系の問題と捉えることができる。だから、恋愛とはひとまずロジカルでは無いのだ‼ 私から出来るアドバイスは以上だ! これから旅の支度を始める! ツトム」




「?」




「健闘を祈る」


(回想終了)




 (スマシさん、ロジカルじゃない、ロジカルじゃないとか言って、そりゃあそうだろうけど、今回の誕生石占いに頼ったデートと、どう関係があるのだろう? さっぱり分かんないや)


少し考え込む主人公。




(いや、でも)




顔を上げる。


(アメリカのN州に行く数日前なのに相手してくれたんだからひとまず感謝しないと。感謝、感謝……)






「おーい、ツトム君!」






「ハうぁああ‼」


突如現れた尾坦子に、心臓が止まった思いの様子の主人公。




「……何? どうしたの?」




不審がる尾坦子。


「あ、あぁ。ちょっと考え事しててね」


「ふーん、まぁいいわ。行こっか?」


しどろもどろな主人公にジト目対応した尾坦子だったが、早速誕生石デートが始まった。駅周辺の街を歩く二人。


「ねえ……」


「何?」


主人公が尾坦子に話し掛ける。




「尾坦子さんの誕生日って何時?」




「んーとね、それは……」


「それは……?」


息を呑む主人公。






「ヒ・ミ・ツ」






「ずでっ」


思わずズッコケる主人公。




「なっ! 何で⁉」




食ってかかる主人公。


「それはねー。店に入ってからのお楽しみ!」


ただの出し惜しみだったが、主人公にとってその言葉と仕草は、何物にも代えがたい可愛さに感じた。顔を赤らめる主人公。


(もう……敵わないなぁ)






「ところでさ」






「?」




話を切り出す尾坦子。




「どうして誕生石の占い屋に行こうって決めたの?」




「(……ここは正直に話すか)えっと、年上のとある女性に、デートスポットでおススメな場所は? 的な事を話したら、誕生石の店はどうって話になって。それでこうなりました」




「……」




主人公の回答にしばらく黙り込む尾坦子。遂に口を開く。




「年上の……女性ねぇ……女の人の知り合い、多いんだぁ?」




慌てる主人公。


「って言っても、ただの先輩とか、上司とかって感じだから(一応爆破スマシ隊長って名前は伏せておこう。ややこしくなりそうだから)」


「ふーん?」


目を細める尾坦子。


「ツトムくぅん? もし、浮気とかしたら」




「ゴクリ」




息を呑む主人公。






「訴訟するから」






「‼‼‼」




「分かったぁ? ツトム君」




いつになく表情が険しい尾坦子。


「ハ、ハイ。ワカリマシタ」


恐れをなす主人公。


(こんなにコワイ尾坦子さん初めて見た。浮気の心配は無いだろうけど……気を付けなくては)


暫く二人は歩く。そして――






「着いた」


「ここね」




二人は誕生石屋に辿り着いた。






「カランカラン」






店頭の鈴の様なベルが鳴った。




「いらっしゃい」




こじんまりとした店内。奥に店主が一人、座っていた。






「わぁ、いっぱい石がある、キレイ……」






尾坦子の反応は上々だった。


(良かった、尾坦子さんが気に入っているみたいで)




「尾坦子さん」


「何?」


主人公は尾坦子に話し掛けた。




「僕の誕生石はこれ」




主人公はある石を指差す。


「この石、アメシスト」


「わぁスゴイ、紫色だぁ」




(紫色っていうのがあの石みたいで少し気になるけど……)




ぽりぽりと少し額を掻く主人公。尾坦子は説明文を指差しながら口を開く。


「ツトム君、2月生まれなんだね。石言葉は誠実、心の平和、覚醒、愛情ね。なるほど! 浮気しそうにない‼」




「ずでっ」




腰を抜かす主人公。


「ま……まだ根に持ってたの?」


「少し……ね」


(トホホ、信用されてない……そうだ!)


何か思い付く主人公。


「尾坦子さんのは、どれ?」


「私のはね、フッフッフー」


思わせぶりな態度の尾坦子。




「これよ‼」




指差した先にあったのは! ペリドットという石だった。主人公が口を開く。


「尾坦子さんって8月生まれだったんだ」


返す尾坦子。


「8月25日よ」


「へー。石言葉は……夫婦の幸福、平和、安心、幸福。尾坦子さんらしいね」


「んー? どんなところが?」


「平和とか安心とか。誰にでも優しい尾坦子さんの印象に、ぴったりだよ」


「ありがと。他は? 幸福……夫婦の幸福って。あ……」




(ふ、夫婦……⁉)




固まる二人。






「ほっほ。お似合いじゃよ。二人とも」


店主が話し掛けるも、顔を真っ赤にしたままの二人。


「ど、どうも……です」


「あ、ありがとう……ございます」






暫くして、主人公が口を開く。


「ね、値段。見てみるね……‼」


驚愕する主人公。




「一番安いネックレスで……3万2千円……」




「あらあら……」


再び固まる二人。


「社会人の私ですら、買えないわー」


「どうしようか……」


店主に話し掛ける主人公。


「おじいさん、僕達、決して冷やかしとかで来たわけじゃないんですけど、ここにあるモノ、手が届きません」


すると店主はゆっくりと言った。


「ほっほっほ。いいんじゃよ。大抵の来店客がウインドウショッピング程度に見て帰るだけじゃ」


「あ、ハイ。ありがとうございます」






――店を出る二人。


「高かったねー」


「高かった」


呟く尾坦子と主人公。




「でもとっても楽しかった。また変わった店に連れてってね、ツトム君!」


「うん!」




今回のデートも、難なく終わったのであった。

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