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第十一節 10日記念

「おっはよー‼ 狩人隊員!」








巨房ミノリが主人公に挨拶する。


「……おはよう(その人称は無いよね)」


静かに返す主人公。




「何か、ラボだっけ? そこで大変なコトが起きたって本当?」


眉毛をハの字に、表情を歪ませる巨房。


「あ……うん……ちょっとね」


主人公も苦笑いで返すしかなかった。


「でも、主人公隊員が無事で何よりです!」


敬礼する巨房。


「はは……どうも」




巨房が話を切り出す。


「ところで主人公隊員」


「?」


「最近、たくましく成ってない? 何かあった?」


「実は……」






「え――‼ 彼女ができた――⁉」


叫ぶ巨房。


「声、大きいよ」


たじたじの主人公。ひそひそ話が、クラスを包む。


「ほら、変な雰囲気になった」


少し怒り気味に主人公は言う。




「ごみんごみん、相手は年上? 年下? このクラスにいるとか?」


「年上で、看護婦さんやってるよ」


「わお! 看護婦さんって中学生から見ても危ない響きだねー」


会話を交わす巨房と主人公。




「――だから、これからはミノリちゃんとはあんまり仲良くできないんだ。見てなくても、か……彼女に悪いし」


「そうかなー? 仲良くしても、ばちは当たらないと思うけどな――」


「えー?」


「今まで通り、友達でいちゃあダメかな?」


ズイっと乗り出してくる巨房。


「う――ん」


腕を組む主人公。




(友達でいいよって言え友達でいいよって言え友達でいいよって言え友達でいいよって言え友達でいいよって言え友達でいいよって言え友達でいいよって言え友達でいいよって言え友達でいいよって言え友達でいいよって言え友達でいいよって言え友達でいいよって言え)




目で訴えてくる巨房。


「仕方ないな(目が怖い)。今まで通り友達ってことにしようか」


「やた!」


歓喜の表情の巨房。


「じゃ、授業始まるから」


主人公に言われて、席に戻る巨房。


一瞬、切ない表情を見せた。






「フ――、今日も疲れた――」


自宅のベッドで横になる主人公。


「ピロリロリン、ピロリロリン」


「! メールだ。誰からだろう?」


携帯を取る主人公。尾坦子からだった。


「尾坦子さんからだ!」


メールの内容を確認する主人公。


「何々、明日は何の日でしょう? え? 何かあったっけ?」


首をかしげる。


「誕生日、とか? そう言えば聞いてなかったような……誕生日かな? と」


メールを送信する。


「ピロリロリン、ピロリロリン」


あ、返ってきた。


「不正解、プンプン‼ え、怒らせちゃったかも……」


顔が青ざめる主人公。


「すいません、分かりません、と」




「ピロリロリン、ピロリロリン」


「何だろう答えって」


メールを確認する主人公。


「明日で付き合ってから10日目です! ちゃんちゃん……10日ってまた微妙な。1カ月とか1年にしようよ!」


たじたじな主人公。


「またどこか行こうよ。M駅ってどうかな、か(前、クリスマスプレゼントを買った駅だー。二人で歩くとどんなところになるんだろう?)そこでお願いします、と」




主人公と尾坦子はM駅でデートする事となった。




デート当日――、




「お待たせー」




尾坦子の二回目の私服姿を、主人公は見る事となる。


(今度は取り乱したりしないぞ)


二回目とあって、耐性がついたようだ。


(でも、やっぱり素敵だ)


「うん、行こうか」




主人公は言い、デートが始まった。




いかにも若者の街といった風景に息を呑む主人公。まずは服をウィンドウショッピングする様だ。女ものの服がズラリと並ぶ。


「もうすぐ、夏だから、夏服どれにしようかなー、なんて。どれが似合う?」


主人公に話し掛ける尾坦子。


「うーん、ピンクの服かな?」


主人公は答える。


「これね。うん、いい感じ」


颯爽とレジに持って行く尾坦子。


(結構豪快に買うなぁ)


主人公は思った。


「次はツトム君の!」


「へっ⁉」


虚を突かれる主人公。


「どれが似合うかなー」


尾坦子は様々な服に手をかける。


「ぼ、僕はあんまりお金持ってないから」


「じゃあ、プレゼントしてあげる」




「へ?」




「普段貰ってる、お礼に」


尾坦子は主人公に服をプレゼントするようだ。


「何を買うか分かってるからサプライズ性に欠けるけど……気持ち、伝わるよね?」




「もちろん!」




嬉しがる主人公。


「これだ!」


「『調子に乗らせて頂きます』……はい?」


それは大きくロゴが入ったTシャツだった。


(尾坦子さん、服のセンス……)


主人公はじとーっと尾坦子を見る。


「これでいいよね! ツトム君!」




尾坦子は汚れ無き眼で主人公を見ている。




「(その顔には負けるよ)ウン、イイヨ」


主人公は募る気持ちを抑えて返した。


「ありがとうございましたー」


店を出る二人。




「ツトム君! 大切に着てね‼」


「はは……(どこで着ればいいんだろう?)」


たじたじな様子の主人公だった。




「次は! お昼にしよう」


二人はランチが食べられる店を回った。


「焼肉……は重たすぎるし、うどん……じゃちょっと軽い気がするね。そうだ!」


何か思いつく尾坦子。


「やっぱこれでしょ」


腰に手をあてて自信満々の尾坦子。


辿り着いたのはラーメン店だった。




「あっ、いいね」


「でしょ。入った入った」


店に入る二人。


「らっしゃーい!」


強面の店主が中には居た。


(! 何かコワイ)


主人公は少しばかり圧倒される。ひそひそ声で話す尾坦子。


「職人気質って言うのかな。こういう人が居る店は、大概おいしいんだよ」






「注文は?」






店主が問う。


「あ、ハイハイ。豚骨ラーメン二つ、で。いいよね、ツトム君」


「あ、はい。それで」








「お待ちどう様!」


数分して、ラーメンが出て来た。


「いただきまーす」


二人は手を合わせてラーメンを食す。




「! ! ‼ ⁉」




主人公は余りのおいしさに意識が天へと昇る思いだった。


「う……美味い‼」


「ね、言ったでしょ、もぐもぐ」


尾坦子もそう言ってラーメンを食す。


「! ! ‼ ⁉」


尾坦子も余りのおいしさに意識が天へと昇る思いだった。


「そうかい、若いもん。替え玉一玉無料だからな」




強面の店主は何気に優しかった。




「もぐもぐもぐもぐ」


「もぐもぐもぐもぐ」




「替え玉! お願いします!!」


「はいよ」


二人は一心不乱にラーメンを食べ続けた。


「んー、おいしかった」


主人公はランチに満足した様子だった。


「私に任せて、正解だったでしょ?」


「うん、ありがとね。尾坦子さん」


「どういたしまして。次、どこ行く? カラオケでもどうかな?」


「カラオケ? (そう言えば、カラオケ行くの、初めてだ)」


不安そうな顔をする主人公。


「どうしたの?」


「いや、カラオケ行くの……初めてだから……」


「じゃあ、ツトム君の初めて、もーらった」




「! !」




成り行きでカラオケ店に入る二人。








「らーららー」








尾坦子は70点台を、主人公は60点から70点台を叩き出しながら時間は過ぎていった。


「今日も楽しかったよ。またね」


「尾坦子さん、またね」




二人の二回目のデートは無事、終了した。

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