夕暮→夜
お初にお目にかかります。
私、天城林檎と申します。
この度は、わざわざ当作品に、足を運んで下さり誠にありがとうございます。
当作品は、私の処女作ですので、幾分見苦しい点があると思いますが、どうか暖かい目でご覧下さい。
また、主人公であります「俺」に関しての視覚的情報は一切書かれておりません。ですので、皆様が思う「俺」を頭の中で描きながら、読み進んでいただけるとより、作品に入り込むことが出来るかもしれません。
是非お試し下さい( ´﹀` )
では、どうぞ夕暮ロストの世界をお楽しみ下さい(๑´∀`๑)
あてのない散歩をし、陽射しに包まれながら、俺は人気のない路地裏で、ふと立ち止まる。
何故だろうこの景色どこかで見た。デジャブなどと言う簡単な言葉では片付ける事のできない、底知れぬ闇の様な、奇妙な感覚。
この感覚はなんだ。分からない。分からない。
俺は何度も何度も、頭を働かせ、必死に思い出そうとする。これは使命感といった綺麗なものではない。もっと混沌としたどす黒い執着のようなもの。例えるなら、スクープを追い求める記者のような、そんな感情に突き動かされながら、俺は必死に脳を働かす。だがそんな必死な行為は報われる事なく、ただ体内時計の夕方から夜になる時間を早めただけだった。
しかし何故かわからないがただ、ひとつ。たったひとつだけ、くっきり…頭が、それを思い出せと言っているかのように浮かび上がってきた記憶、いや、物語は俺にとって、出来れば思い出したくないものだった。
内容はこうだ。
むかしむかし、とある小さな国に勇敢で、誰よりも剣術そして、学問にたけており、敗戦の危機を幾度も救って来たという伝説の騎士がいた。
その国では、老若男女関係なく、誰もが彼に畏敬の念を抱き、男達は皆、何れは自らが彼の様に…という野心を胸に、日々鍛錬に励み、そして女達は、いつか彼と夫婦になる日に思いを馳せながら、花嫁修行に励んでいた。
そんなある日彼は、突如隣国の娘に一目惚れし、恋に落ちてしまう。彼女は何処にでも居るような、普通の生娘だったのだが、誰に対しても、真摯にそして愛情を持って接していた為、誰からも好かれていた。その姿に惹かれた彼は、彼女に思いを告白し、彼女も真摯的な彼の姿に胸撃たれ、その告白にふたつ返事で返し、めでたく結ばれ、ハッピーエンドとなるはずであった。
だが、それを良しとしないもの達がいた、彼の国の人々である。彼等は、何とかして2人を離れさせようと、彼女の家にネズミの死骸や、脅迫文を送り付けたりと、娘を精神的に追い詰めていく作戦に出た。そして、彼等の思惑通り、耐えきれなくなった娘は遂に彼宛と両親宛と手紙を2通書き残し、自らを海に身を投げてしまう。
そんな事知る由もなく、数日後彼女の家を訪れた彼は、テーブルにおいてあった2通の手紙によって、彼女の死と原因全てを知る事になる。だが、不思議なことに、その2つは明記されていたのは、両親宛の手紙で、自らに宛てた手紙には「生きて」。この3文字だった。「僕に君の後を追うことは許されないんだね」そう呟くとと、手紙を抱きしめ、号哭した。
確かこんな感じの話だった。
この物語は、数ヶ月前に亡くなった母から、よく聞かされていたのだが…
続く…