004 アカリのイロイロ
キャストのお姉さんは知己の アカリちゃん だった!
- 実は、俺は最初のタクシー会社を1年で辞めている。
時同じくして退社したのが今ココにいるアカリちゃんだ。
俺がタクシーを始めたのは22才。これでも若いほうだったが
アカリちゃんは当時21才。第二種免許と地理試験が取れるギリギリの年齢だ。
実はタクシー運転士になるために必要な地理試験は国家試験だ。
結構な人数が落ちると聞いていて、実際に一度落ちた俺がそのことを話すと
アカリちゃんは俺に 「なんで?」 と言った。 負けん気の彼女は優秀なのだ。
声優志望でずっと頑張ってきて声優さんとしての夢破れた(らしい)年に
OBのおじさんの進めで思い切って入社したらしい。
すこぶる若くしてタクシー運転士となり、さらに鳴り物入りで入社したが
このアカリちゃんは若いだけではなかった。その容姿が尋常ではない。
会社の意向とOBで個人タクシーのおじさんの顔を立てる形で
” 美しすぎるタクシー運転士 ” として1年で何度もテレビ出演を果たしている。
見たことありませんか? 同僚との食事で俺もチラッと映ったんだけど。
- 俺の退社理由なんて、合わなかった…いや 周りについていけなかった事と
その他に一点、不服があったからで大したものでは無いけれど、
アカリちゃんは大変だった。会社からの宣伝役としての要求も増え
それに比例して、見返りのように予約や無線での仕事も優遇されていた。
走り回ってお客様を探すのが主軸の先輩たちの冷ややかな目に晒され、増して
彼女を苦しめたのが無線で芸能やらのスカウトに呼び出され密室で口説かれる毎日。
アカリ「首都高3週してくれですって!とうとう目的地まで無しですよ!
本当にイヤになっちゃう…。 本当は負けたみたいでイヤだけど…
このままぐるぐるしてたらいつかチーズになっちゃうと思って…。
言ってやりました。退社しますのでもうお会いすることはありませんっ! て」
ジン「え…そうなの?実は俺も…」
会社の食堂で最後にてんぷらそばを啜りながらした会話を今でもはっきりと覚えている。
- それからアカリちゃんとは同志のような心境で当時付き合っていた彼女の
お許しが出る度に月一ペースで飲みに行ったり近況を語り合ったりしていたのだけれど
3、4年くらい前からぱったり連絡が来なくなってしまった。
こんなものなのかなぁとは思ったが正直寂しくもあった。
アカリ「アンナちゃんは元気?」
ジン 「…んー…連絡とってないからわからないな」
アカリ「 ! 別れたの!?」 ジン「んー…ふられました」
アカリ「うそっ…なんでまた」
ジン 「それが…よくわかってないんだけど…もう尊敬できないって言われた」
アカリ「何それ」
ジン 「尊敬ってなんだって暫く考えたけどどっち道悲しいから忘れる事にしました」
アカリ「…ムカツク」
ジン 「え?」 アカリ「なんでもないっ…それで…今彼女は?」
ジン 「イナイ歴3年です」
アカリ「んんんんんんんんんん!!!私の大馬鹿!!!」
ジン 「あれっ…4年ぶりくらいだよね?」
アカリ「3年!きっかり3年ぶり!」
ジン 「あら、3年…そうか」
アカリ「…あっ! 昨日の電話! 電話変わってないよね?出てくれなかったけど」
ジン 「公衆電話からのやつ?」 アカリ「そう!」
ジン 「あれアカリちゃんか! …おむつ…じゃなくて買い物してて1時間近く
電話は車におきっぱなしで…アカリちゃんだったか…それはそれは…
なんか嬉しいなぁ」
アカリ「……おむつって子供いるの?」 ジン「いえっ いません!おむつは忘れて」
アカリ「おむつ…あぁ 安心した」 ジン「その鋭さだけは慣れない。ドキっとする」
ジン 「それは、あまり良くないけど良しとして、3年ぶりの用事って何だったの?」
アカリ「3年…確かに3年なんだけどね」