ダンジョン攻略法
7月8日
AM:06 00
現在、自宅警備員として家にいる俺に悲劇が起きた。
「金が無いだと…?!」
朝食代が消えていた事件である。昨日を振り返って見よう…
えーと、確か昨日は『対面会』で自身の過去について話したんだよな…
その後、会計の事になって…ユウナさんがこう言って…
「奢れる男はモテるよ~きっとね☆」
「マジすか…」
目の前のユウナさんもそうだが、この3人めっちゃ可愛い!!美形は良いなぁ…俺もイケメンに生まれたかった。
しかしッ!ユウナさんはこんな俺にある希望を与えてくれているッ!先程の言葉…これは三次元の先輩として、ハーレム(?)の先輩としてのアドバイス!ならば奢らざるを得ない!
「みんな!今日の主催者は俺だから、会計は任せてくれ!」
………
……………
我ながら変な思考に至ったと後悔した。
それで金が圧倒的に無いのか…
朝食を買えない絶望と、今更で思い出した『ブレイクオンライン』のイベントに、俺は肩を落とした。
AM:09 45
『ブレイクオンライン』起動。
ユートは3人と待ち合わせした場所へと急ぐ。
「もう!遅いじゃない!」
「ごめん、朝食をどうしようかと己の食欲と戦ってた…」
「ユートは不正級の力があっても、リアルは脆いのだな…」
「辞めて!抑えていた涙が溢れでちゃうから?!」
「ユート君は大変だねぇ~」
「ユウナさんは楽しそうですね…」
「フフッ…」
「それよりよっ!今日は何処に行けば良いの?」
メリアが話を切り上げて、本題に移る。
今日は3人のシナリオサポートだ。『地上』のシナリオをこれから進めに行こうと思う。
「今日は『亡者の巣窟』に行き、『英雄の魂』を手に入れる…いいな?」
「OKよ!」
「承知した…」
「了解~」
3人の許可が降りたので、早速向かう。
AM:10 25
~『亡者の巣窟』より~
「いいか…ここは『不死』のスキルを持つモンスターがほとんどだ。だから一々相手にしない事を意識しよう」
四人は頷き、静かにダンジョンを歩く。
辺りは暗く、松明も青い炎で燃やされている。むしろ不気味さを漂わせている。
「なるほど、周り全て『アンデッド』しか居らぬな…」
「しかもコッチが何もしなければ…」
「襲って来ないね~」
「『不死』のスキルを持つモンスターは大体そうだから、覚えて損はないよ」
「ユート?」
「ん?」
「ここのボスって『不死』のスキルを所持してるわよね…?」
「うん…」
「どうやって倒すの…?」
「それはねぇ…」
『不死』スキルのモンスターの倒し方は色々ある。例えば…モンスターにとっての9999のダメージを与えたら倒せるだろう。
後は、再生回数が0になるまでボコす。
除去魔法、破壊魔法、消滅魔法、時空魔法などの攻撃。
以上が倒し方となっている。しかしこのパーティーには誰も当てはまらないのだ。
だから、ユートが消滅魔法で倒す予定だったんだけど…
(メリア達が納得いくか…)
ユートは頭を抱えて考えた。結果、そのまま伝えることに…
「メリア、さっきの事だが…」
ユートは全てをメリアとカスミに伝える。(ユウナさんは手話で、『分かってるよ☆』と合図をくれた)
「なるほど…戦職の相性か」
「まぁ…倒せないなら仕方ないよね」
「良かった、ドロップアイテムは全部上げるから…」
「ユートはそこキッチリしてるよな…」
「本当にね…」
「一応、『地上』攻略の講習先生だからねぇ~」
「そうだったね、ならユート、お願いね」
「頼むぞユート」
「お願いね~」
「あぁ…任せとけ!」
AM:10 55
ユート達はボスの部屋の前に来ていた。
「遂にボスね」
「私は準備OKだ」
「私も~」
「よし、じゃあ行くぞ」
ユートがドアを開ける。
すると中には大量の『スケルトンソルジャー』が居た。
(予想するに、ボスはまだこの中に『居ない』)
「それじゃ行くよ!」
メリア達は武器を取り出し、群れに突っ込む。
ユートもそれなりの応戦をする。
「何コイツら!硬いッ―」
「メリアちゃん!そろそろ離れて!」
「え?!」
咄嗟の言葉にメリアはギリギリで反応する。
「連なれ―『チェインボム』」
カスミの配置爆破魔法が発動、敵はほぼ全滅した。
「すげぇな…『不死』スキルを全滅って―」
「ユート!後ろ!」
「大丈夫…分かってる―よッ!」
背後で大剣を振りかぶっていた『パイレーツ』に肘で攻撃する。何も予想していない『パイレーツ』は衝撃で吹っ飛ぶ。
「さぁさぁ…こっからは俺が殺りますかぁ!」
ユートは地面を強く蹴る。移動魔法を使ったくらいの速さで、『パイレーツ』の正面に入る。
「えぇい!昇れ悪霊―『ターン・セイント』」
『パイレーツ』はまともに喰らい、光となって消えた。
「ユート!レアドロップは?!」
「えーとね…」
ユートは手持ちの倉庫を開く。新規アイテム欄を読み上げた。
「えーと、『戦士の骨』、『英雄の魂』、『上品な骨』…」
「え…?後は」
「無い…ね」
「えええええええええええええええ!?」
メリアの嘆きに近い声がダンジョンに響いた。