峯山神社で
ぎらぎらと照り付ける太陽の日差しがアスファルトを熱している。ひまわりはクラスメイトに呼ばれて峯山神社に来た。神社には、祭りの準備が始まる前から人がいる。ひまわりの同級生たちだ。その中の一人がひまわりに気づき、声をかけてきた。「よ、ひまわり。悪いな、急に呼び出しちゃって」
「いいよ。何の用?」
「お前、今日の夏祭りに来るだろ? 太鼓ってできる?」
盆踊りの太鼓のことだろうか。
「……太鼓? ごめん、僕楽器全般できないんだ」
「そっか。本当は4組の隅田がやるはずだったんだけどさ、あいつ先週の大会で肘痛めちまって……。」
「大変だね……だれか習ってる人とかが見つかればいいんだけどね。」
「そーなんだよもーー。じゃないと俺がやらされるんだよ」
「え、練習は?」
「それはしてきたよ。だけどやっぱ、ほら……彼女と屋台回りたいじゃん?」
「あー……。でも練習してる人じゃないとできないし、それに、彼女にいいとこ見せられるんじゃない? チャンスだよチャンス」
「お前、意外とポジティブなんだな」
「普通だよ」
「とにかく、あいつは多分友達と回るから、見てくれねーよ」
「ふーん……、残念だね。」
まだ何か言いたいことがあるようだが、それ以上は話さなかった。
「……それで、話はそれだけ? ほかにもあるの?」
「あぁ、そうだもう一個あった。ひまわり、お前外国語しゃべれるよな? 何語だっけ……」
そのことを離したつもりはない。隠しているわけではないが、話した相手などいなかった筈だ。黙って次の言葉を待っていたが、思い出せなかったのか、他の子のところへ行ってしまった。もう帰ってもいいだろうか。
ひまわりの事情を知っている人は少ない。一体誰に聞いたのか。母の実家、母の死……だれにも話していないと思う。とにかく、話が終わったのなら帰りたいのだが、話が終わっているのかどうかがまずわからない。それと、最後の話をだれに聞いたのかが気になる。こういう時は、誰に何を訊けばいいのだろうか。