エピローグ
二話続けて投稿。そして最終回です!
皆様の中に少しでもこの話が残る事を思っています。
「……と、ここまでが人間と魔族。その争いの結末という事さ」
「ふーん」
俺は天界の片田舎のお祭りで芝居の読み聞かせをしていた。
「ねえねえ、それじゃぁそのお兄さんと魔王はどっちが勝ったの?」
聞いている内の1人、まだ翼の小さい天族の男の子が質問をした。
「ああ、勝ったのはその少年さ。彼は見事魔王を洗脳してその首をとったんだ」
「おおー!! でもどうやって洗脳できたの?」
「それは君達が知るのはまだ早いかな、是非お母さんやお父さんに聞いてみるといい」
俺は芝居を終えた。
子供達からはまだ悩んでいる者、きっとこうだと考えている者、さっさと答えを知りに親の元へ迎う者もいた。
「パパー!」
「ん……? レイシアじゃないか、もう店を回るのはいいのか?」
俺は芝居を聞かせた子供達と同じくらい背丈の女の子、俺の娘を抱き上げる。
「パパと一緒じゃないとつまらないよー」
「おっそうか、そうか」
「って、ママが言ってた」
「レイシア!」
娘の後ろから俺の妻である彼女が慌てて来た。
「シルヴィア、そうだったのか?」
「えっ、それはその……です」
10年経とうとも全く変わらない彼女の態度、しかしそこも含めて俺が惚れた部分だ。
「ママって本当にパパの事好きだよね、私も少し恥ずかしいんだけど……」
「べ、別に仲が悪いよりはいいじゃない!」
そう、彼女は腹部を刺されたものの命に関わる傷ではなかった。そうして少しずつ回復した。
「それよりパパ!」
「ん? どうしたんだい?」
「パパのお芝居なんだけど、その魔王がパパに負けた理由。私にはわかるよ!」
「そうなのか?」
「魔王はママを愛して無かった訳じゃなかったんだよね? だからちょっとしたやりとりから洗脳できたんだ!」
「さすがはレイシアだ。正解だよ」
そう言いつつ、俺はちらりとシルヴィアを確認する。
彼女は少し頭を下げた。
「……ああ、正解さ」
その筈なんだ。
だから俺は勝てた、娘を殺さなかったのも全ては魔王が ――。
「そしてもーひとつ!」
「あ、ああ。どうした?」
娘の声により我にかえった俺は意見を聞く。
「パパはどんな言葉でママを洗脳したの? 一番最初だけど1番気になる!」
「ぐっ。そ、それはだな」
俺はとなりにいる妻の方を向く。
「そうですね、私ももう一度聞きたいです」
「まじかよ」
こういう時だけ頭が回るんだなこいつは……
「はーやーく」
「別に今更いいじゃないですか、あなた」
「あー、もうわかったわかった」
彼女を洗脳した当時、それはそれは恥ずかしい言葉を使ってしまったものだ。
「迎えに来たよ、お姫様。
君の命を守りに来たんだ」
当時は嘘のつもりだった。親により殺されてしまう哀れな小娘を軽く騙すつもりの。
「はい、お願いします」
そういう彼女の笑顔は、太陽のように眩しく、俺はその笑顔を守る為に魔王に立ち向かったんだっけ。
その笑顔はまだ目の前にある。
とびきりくさい台詞に笑いを堪える娘と共に、俺にはさらに守る者もできた。
嘘では無い物語をこれからも作り続ける。
生き続ける、守り続ける、愛し続ける。
ご愛読ありがとうございました!
次回作は登場人物がゲームの世界に行くのではなく、ゲームのキャラクターが現実に飛び出るお話です!ご期待ください!!