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秋田紅葉⑤

社会人になり時間が想像以上に取りづらくなりました。

しかし書くという習慣をなんとかつけていきたいと思います!


突然の大きな音で私は目が覚める。地下室にしては快適な空間とはいえこの状況で眠り続ける者はなかなかいないだろう。


地上では恐らく戦争が始まった。


人間と魔族の、行き違いによる哀しき戦争である。


「……私はどうして何もできないの」


自分の父親と、自分の国の危機なのに私は何もできない、あまりに無力だ。


私は壁にもたれて眠る彼を見る。戦争を引き起こした張本人だというのに呑気なものだ。――いや、彼にとって戦争など目標の通過点でしかないのだろう、最終的に私のパパを殺せればそれでいいのだ。


「秋田紅葉、貴方は復讐が終わったらどうするつもりですか……?」


燃え尽きる様に自殺でもしてしまうのだろうか。


「パパ……今私が帰ってきたらどの様な反応をするのでしょうか」


まさかとは思うが歓迎はしないだろう。 足手まといだと思われるか、自分のせいだと思われるか。





――それでも私は、自分の親を彼から守らなければならない。



「くっ……!? 何……これ、耳鳴りが……」


「…………とう」


私の頭に彼の、秋田紅葉の声が流れ出した。


「どういうこと……? 彼は確かに寝ているはず……」


「おめでとう、やはり君なら解除できたか」


「解除? 一体どういうことです?」


「おっと、これは俺が君に仕組んだ洗脳のオマケの様なモノだから君の反応には答えられない、一方的に話をするよ」


「あっ、はい」


答えられないとわかってもつい返事をしてしまう。


「結論から言うなら君の洗脳は消えた、君の意思が俺の洗脳に打ち勝ったんだ」


洗脳に勝った……? そんな方法は。

直後私はハッとし、強い精神力を持つ者には洗脳があまり効かないことを彼が話していたのを思い出した。


「……君は優しいな、きっと魔王を救う為に洗脳が解けたのだろう。その結果が自分の命に関わるかもしれないというのに」


図星だ。私はパパを救う為に洗脳が解けた。


「いや、きっと俺も君の立場ならそうしていた。親が何をしたとしても命の危機なら何が何でも止めただろう」


「失った後にでもそう思ってしまう、復讐の最中だというのに困ったものだ」


そもそも、と彼は切り出した。


「これは勝ち目のない戦いだ、過去の文献に洗脳の能力者が君の先代に殺されたのを見た。魔王は、君の親父はやはり同じほどに強いのだろう」


「俺は恐れていた、復讐を果たせず地に転がる自分の姿を。

……だから君に託すよ、復讐という形ではなく証明される親への愛を」



「紅葉……君」



「俺は弱い人間だ。中身も、強さという点でも。だから本当は強い君に頼む。

俺の首を持って親父の元に行くといい。そしてこの戦争の元凶を討ち取ったと言うんだ」


「私は、そんな……!」



「やれ!! 君が俺を倒せ!!

親父を守ってやれ!」


「嫌だ……貴方だって! 親を殺されて!!

望んだ復讐を果たせず死ぬのなんて、あんまりじゃないですか!!」



「……頑張れ、シルヴィア」



声は収まった。最後のメッセージが途絶えた。



「私の名前を……どうして」



壁にはわざとらしく飾られた刀が光る、彼の故郷の獲物なのだろう。



私はゆっくりと刀に手を掛けた。







☆ ☆ ☆ ☆







「これで本当に良かったのか?」



俺は欠伸をしながら彼女に話しかけた。




「いいんです。私は母国の運命より貴方の道が気になっただけです、想像してたより貴方は ――」



優しい方ですから。

と彼女はよくわからない理由で俺を活かしたらしい。



「ならいこうか、俺の道を進みに」


「はい、ですがその前にもう一つ」


「ん? なんだ?」


「パパ ――魔王の能力です」


「!!」


「魔王は貴方と同じく特殊な能力を持ちます、魔力を含むものかもわからず、能力を使われたことすら相手は気づけない。みたいなんです」



「まるで俺と同じだな。どうりで魔族の奴らも全く知らないわけだ」


「はい、私も少し見た程度ですが……」


「構わない、今はなんでも情報が欲しい。何せもう洗脳対象は全て死んだからな、つまりもう魔王しか生きていない可能性がある」



そう、つまりは完全な最終決戦なのだ。





「わかりました。魔王の能力は、周囲の一定の範囲の時間を停止させる能力です」



「なっ!?」




俺がその事実を聞かされた瞬間、いや驚くのも遅かったかもしれないその瞬間。




「かはっ!!!? 嘘……どうして!?」




彼女の腹部を刀が貫いた。俺はまだ時間を止める能力を聞いたという点で驚いていたというのに。



「お前っ、実の娘を!!」


「実の娘? 国の破壊に加担し、この俺の能力をも明かしたこの出来損ないが?」


「こいつは俺が利用しただけだ! 少なくともあんたの事を思い、悩んでいたのに!」


「煩いぞ!! もはや一から作り直す他ない国を前に、愛すべき娘など必要ない!」



魔王はシルヴィアを吹っ飛ばした。


「そして最後のチャンスだ、人間。 お前の手を貸せ、お前の力があれば天界など敵ではない! この世の半分を分けてやろう」



「断る」



「まあそうだろうな。では無駄口(・・・)を叩かれる前に倒しにかかるとしよう」


「!!」




バレている。まずい、相手が時間を止める能力ならば嘘を吐くのはまるで意味がない!!



否、一か八かの勝負だ、もし先程の言葉が通じたなら洗脳は決まる――!







「終わりだ! ステイタイムズ!!」


「間に合え!! メイドインフィクション!」




最終決戦はあっという間に決着がついた。

いとも容易く、世界の一部であるかのように。








シルヴィア=ライオット


性別:女

年齢:16

身長:149cm

体重:41kg


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