秋田 紅葉④
先日卒業旅行で大阪に行きました。
なんと二日目のusjで4万歩以上歩いている事が発覚。
今でも何故あんなに歩いたのか謎です。
「よし、これでやるべき事は終わった。最後の詰めにかかるぞ」
「最後のですか?」
「ああ。俺の復讐がやはり人間へと向けるべきだと確認した今、もう無駄な時間を過ごす必要はないからな。攻撃を開始する」
「それは……どちらに向けてですか?」
「両方さ。直接的原因ではないとしても俺の両親への処刑を許可したのは君の父親だ」
「はい……」
「君には申し訳ないが、これはもうどうしようもない事だ。俺は復讐という名の力に洗脳されている。誰にも止められない」
「私には復讐の気持ちは理解できない。けれども、母を失った私は貴方の寂しさは理解できると思います」
「俺を止めるつもりか?」
「まさか。洗脳されている私には貴方を止める事などできない、洗脳されてなくとも……恐らく同じだと思います」
「そういうと思ったよ」
我ながら意地の悪い受け答えだ。本当は彼女はどんな気持ちなのか? 母親を亡くしながら父親の命を狙う男の隣にいる。
「時間だ」
「!?」
俺が時計を見て10秒を過ぎたあたり。
人間界、魔界共に耳を切り裂く様な音と大地震の様な地響き。全てが灰塵と化し、文明は崩れ行く。
「一体何を!? 何が起きたんですか!!」
彼女の表情はまさに驚愕の一言。俺の腕を掴み説明を求めた。
「大量の火薬を同時に爆発させた。量的に両国の8割は損失する計算だ」
「そこまでの物をどうやって!? この火力、この規模なんて1人の力では不可能です!」
「いいや違うよ、俺は10年間に人間も、魔族も、慎重にかつ決してバレない様に少しずつ洗脳をしていったんだ」
「10年間……洗脳を繰り返した……?」
「そう、今日洗脳した魔王の娘を含む約7000万体の魔族と今日殺害した王の部隊を除いた約1億2100万人は俺の支配下にある」
「……っ!!」
「ただ普段通りに過ごさせる中に少しずつ、少しずつ火気のあるものを集めさせた。それが洗脳の内容だ」
「そして今日、爆発させたという事ですか?」
「さすがに王城や上級貴族は攻撃できなかったけどね。警備が厳しいしバレたら大変だから」
俺はガソリンを隠した場所から武器を取り出した。
「魔界の観測所からの伝達役を洗脳して誤った情報を送らせた。これで少人数同士の戦争が起きる」
「……その武器でどうするつもりですか?」
「魔王を殺す。今からのぶつかり合いで人間は滅ぶ。残党狩りと共に魔王を洗脳しよう」
「はい……」
「今日は一旦休憩だ。この先に用意した小屋で休んだ後避難して戦争に巻き込まれないようにする」
「一つ、質問してよろしいですか?」
「どうぞどうぞ」
「それだけの力、それだけの意思を持つ貴方なら冥界に駆け寄り両親を生き返らせる事もできると思います。貴方はそれを知っている筈です。何故復讐にこだわるのですか?」
「生き返らせる。か。とても魅力的で俺もかつて目指して道だったよ」
「ならばどうして」
「悲しくないからだ」
俺は当然のように告げる。
「俺が両親を殺された時の感情は悲しみじゃない。怒りなんだ。復讐を果たすまで喉が潤う事はない、眉間の皺は緩まない、頭の痒みは収まらない。目を閉じた時の残像は、消えない」
一つ呼吸を置き、続ける。
「俺は死んだ両親を生き返らせたいんじゃない、両親を殺した奴らが死ぬ姿が見たい。悲しみを無くしたいんじゃない、怒りを晴らしたいんだ」
「貴方は、狂っている」
「だろうね、しかし君も狂っている」
「私が狂っている? どうしてですか!?」
「そんなに驚くな、教えてやるよ。 お前は自分に無頓着すぎる」
「私に……?」
「自分が親の都合で殺されるってのに大人しく城で暮らしてる女の子見て異常と思わない方がおかしい」
「くっ……そう、ですよね」
「そうゆうこった、ほら着いたぞ」
俺らの先には小屋という訳ではなく厳密に言うなら地下室。隠れる事が目的だからね。
「水を浴びてくるぞ。戦力的に明日の昼には人間は負けている。かなりの時間此処に籠る事になる」
「わかりました」
彼女を近くの川へと案内した。
「このタイミングで言うのもなんだが先程の理由に付け加えよう」
「理由?」
「俺の能力には発動条件と弱点がある」
「そうなのですか?」
「発動条件は嘘を吐く事だ。君を洗脳したのはもちろん、君の父親に対しても嘘を使用した」
「そんなタイミングありましたか? パパに嘘など……」
「咳さ。あの咳はワザとした。最も奇襲から遠く、油断をさせた嘘を使用した」
「なるほど……!」
「んでもって弱点は一つ。精神力が強い敵には効き目が薄い、すぐに洗脳が切れる」
「自力で解く事ができるのですか?」
「ああ、君の父親なんか10秒程度で効果が無くなる。だから君を透明にするという洗脳もあまり保たなかった」
「なるほど、だからあの地点でパパを倒さなかった理由にもなるのですね」
「最初から狙ってなかったにしろ、あの場で仕留めたかったからなあ……次は洗脳次第すぐに仕留める」
俺は服を脱ぎ始めた。
「ひゃっ!? ちょっと何脱いでるんですか!」
「はぁ?」
俺は少し考え、なるほどと結論に至る。
「期待している所悪いが別にお前みたいな貧相興味ないからな」
「ひ、貧相……」
彼女は落ち込んでいるが関係ない、必死で人間を滅ぼした魔王との戦いのイメージを考えていた。
大丈夫だ、奴らに与える未来なんてない。
俺は復讐を果たすだけなのだから。
メイドインフィクション
…秋田紅葉が持つ能力。魔族が使う魔法とも超能力とも違う未知なる力。嘘を吐く事によりそれを聞いた周囲の人間の意識、記憶、言動を支配する。精神力の強い者は自力で解除できる。
イメージ的にデスノートやヘブンズ・ドアー、ドラえもんの予定メモ帳が近いかと。