秋田 紅葉②
いきなり遅くなって申し訳ないです……
短い文で投稿しようとは思ってはいるのですがついつい追加してしまいます。
二つに分割したので明日も投稿致します。
魔界の巨鳥が疲れてきているのを感じた俺は地面に下ろしてもらい、軽く礼を言う。
「わ、私をどうするつもりですか!」
抱えている小柄な彼女はなんとあの魔界を統べる王の娘、魔王の娘である。
「どうにもしないよ、君には少し手伝いをしてもらうだけだ」
そう、手伝いをね。
「ふんっ、残念でしたね? 私を人質にすればパパは手出しできないと思いましたか! 私は、私は……!!」
彼女は俺を睨みつけながらも次第に表情は曇り、顔は下を向いてしまう。
「知ってるよ」
「え?」
俺は彼女の事情を話した。
「君のお母さんは既に亡くなっている。そしてこの事実は魔王とその側近、それに君しか知らない事を」
魔界は幾つもある世界の中でもかなりの戦闘国家。つまりは王に危機が訪れた際にその子を宿す母親が必要不可欠だ。
しかしその母親はもうこの世にはいない。そして新しく迎える妻にとって現在の魔王の娘は邪魔でしかないのだ……
「……知ってるいるのにどうして私を誘拐したんですか?」
「それは……いや、きちんと言うべきだろう。君が魔王への効力とならなくても、人間が魔王の娘を誘拐するという事実が魔王への効力となるんだ」
「??」
あっ、凄く考えてる。彼女のコウモリの様な尖った耳がピクリと動いていた。
「よし、一から説明しよう。まず俺が君を我が国の王へ差し出したとしよう。どうなるかな?」
「それは大喜びなのでは? 貴方は王に命令されたパパの暗殺を試しました。結果的には私を誘拐する事になりましたが……いま現在の私の事情を知らない貴方の王にとってかなりの成果のはずです」
「ところがどっこい。実は俺は魔王を暗殺するように頼まれてなんかいないのさ」
「えっ……えっ!? それは一体どういう」
「教えてあげようかな、俺の真の目的を」
俺達は人間界への道を歩きながら話している。ここで俺は自分の目的を発表しよう。
「俺の目的は魔界、そして人間界の破滅だ」
「人間界も……ですか!?」
「むしろ魔界はオマケだ、人間界を潰す。その為に俺は生きていた」
「…………」
彼女は黙り込む。俺の事情を探っているのだろうか。
「そこを踏まえてもう一度聞こう。俺が君を我が国の王に差し出したら……?」
「それは……困ります」
「そのとーり。魔界と人間界は不可侵条約を結んでいる、人間界も力をつけてきているとはいえ魔界軍に攻められたらひとたまりもない」
「でも、パパはわざわざ私を取り戻しに来るでしょうか?」
「来るさ、君が誘拐されたという事実が広まらない様にする為にね。広まればそこに付け入る隙が生まれてしまう、魔王の存続が危うければ魔界は恐らく攻められてしまうだろう」
人間界だけではない。もはや天界にとっては格好の餌食だ。
「さらに俺は魔王にわざと嘘を吐いた。王に命令された……ってね。暗殺する素振りすら見せたしな」
「そんな、そんなまさか……」
「もはや魔界は人間界と協力する理由はない。じきに人間界は滅ぶだろう」
「貴方は……貴方はそこまで計算済みなんですか!? そこまでして、どうして人間界の破壊を望むのですか!」
「両親を殺された復讐だ!!」
「っ!!」
「俺はな、魔界と人間界との間に生まれたハーフだ。まだ不可侵条約も組まれていない時代のな」
「ハーフですって!?私が聞く限りそんな方はいない筈では!?」
「そうだ。今の国王は両親の仲を利用して、殺害して悲劇のストーリーを作り上げたのさ!! 魔界に媚びるきっかけを作る為になァ!!」
俺は拳をギシギシと音を立てて握りしめた。
「だから復讐を誓った!! 今度は俺がこの世界を悲劇のストーリーに染めてやる、でっち上げではなく! 本当に俺が殺ったという歴史を残す!!」
彼女は終始震えていた。
いやこれはただ俺に驚いていただけかな。
「……いきなり大声を出して悪かった。
まだ距離はあるけどゆっくりいこう」
「あっ……はい」
「まだやることはある。たぶんこれだけじゃ人間界を滅ぼすには足りない」
「どうしてですか? このまま戦争が起きれば人間界は……」
「いいや、まだ人間界には道が残されている。俺が人間界の意志とは関係ない事を魔界に伝えるか、俺を始末するか……どうだろうね」
「それしきのことで死罪になるのですか? 人間界は厳しいのですね」
いやそれしきのことかなあ……魔界は思ったより優しいのかもしれないな。
「とにかく俺が今するべき事は……いや、どうやら後者だったみたいだな」
「え……?」
俺は少し先を指さす。そこには人間が居た、1人ではなく複数の。
秋田 紅葉 (あきた くれは)
性別:男
年齢:19
身長:175cm
体重:59kg