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止まない雨は君のせい

作者: 和銅修一

 この町にとある異常が起こった。

 それは雨が止まないこと。始まったのは六月。何日か続いてもそれは時期のせいだと誰も不思議には思わなかったが一週間、二週間とそれが続くと怪しみ始める。

 流石に祟りとか呪いを信じるほど田舎ではなかったがそれほど都会でもない。駅から遠ざかるほど緑が増えてくるし、コンビニは歩いて二十分くらいのところにしかない。

 だから噂とかは人伝いに早く伝わる。

 この止まない雨は彼女のせいだと。

 彼女、ちょうど止まない雨が降り始めた頃に雲霧高校二年C組に転校したきた雨露 久留美。

 これといって証拠はないが時期が時期だけに雨へと苛立ちは彼女へと向けられる。

 つまりはいじめ。

 しかも教師に気づかれないギリギリのところ。

 無視は当たり前。掲示板であることないことを書かれたり、傘を盗んだり、特定のグループではなく学校の生徒全体が行っている。

 僕はそれが許せない。

 確かにこの雨は止んでほしい。だけどこれは間違っている。

 結局みんなこのあり得ない現状から逃げているだけ。その証拠として彼女に直接的な何かをしているわけじゃない。

 現実逃避。

 ジトジトしたこの空気。雨だけのせいではないだろう。

 憂鬱な気持ちが伝染して今に至る。もはやみんな甘んじてこの状況を受け入れている。

 彼女を供物にすることによって。

 けどここは山に囲まれた田舎町。最近、少しずつ都会化してきたけど子供の真似事みたいで穴が多い。

 山が削られたわけでもなく、建物が増えただけ。

 この雨でそれは中止されしまっている。まだ再開の目処は立っていないそうだ。

 まずはこの雨を止ませるのが先らしい。もう既に土砂崩れが何度も起きて山周辺に住んでいた人たちはやむなく中心部に引っ越すなどで被害者は出てしまっている。

 大人たちは躍起になってどうにかしようとしているけど、この雨のせいでどれもふいになってしまう。

 みるみるうちに町から出る人が増え、遂に学校に残ったのは僕と彼女だけになってしまった。

 だけど生徒がいる以上授業はある。残った中村先生は産まれも育ちもかの町で離れられないのだそうだけど後は校長先生しかない。 廃れた学校、静かな教室。

 土砂は雨で徐々に中心部へと近づいて来ている。この町が土に埋もれるのはもう時間の問題。

 教師側もそれは分かっていたようで全ての行事を前倒しして今日はテスト。

 せめて最後の先生はきちんと卒業させたいという校長先生のはからいで明後日には卒業式。

 残念ながらその日も雨になった。

 桜も、送り出してくれる後輩もいない。親と先生と僕と彼女しかいない卒業式。

 卒業証書だけを渡す最低限のもの。特に感動する部分はなかった。

 ここはあの現実逃避をしていたみんながいた学校。ろくな思い出はない。それにこれからのことを考えるとそうも言っていられない。

 そう、僕はこれから雨露 久留美さんに告白する。これが最後のチャンスだ。

 もうすぐここは住める状態ではなくなる。何処かへ引っ越す必要があるけど同じ場所というわけでもない。

 だから卒業式が終わってから屋上に呼び出して素直な気持ちを伝えた。

 そうすると彼女は一瞬驚いたような表情を浮かべて少し考えるように手に顎を乗せ、どこか納得したように微笑んだ。




「そう……この止まない雨は君のせいだったのね」




 彼女が何を言っているか理解出来なかった。彼女の目線を追って空を見るまでは。

 久しぶりの青空を見るまでは。

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