ガリウルと猫
こんな生活が一週間続いた。
僕を虐めるものは増え、いじめもどんどん酷くなっている。
そんなある日、公園にいると僕は一匹の猫を見つけた。
その猫は僕に懐き、体を寄せてくる。
僕も嬉しくなってその猫を抱き抱える。
「ミャーコ、どこに行ったの?」
一人の女性がミャーコと言う何かを探している。
きっと僕に懐いてる猫のことだろう。
僕は猫をそっと下に置くと、猫はその女性の元へと走って行ってしまった。
「猫に触れてんじゃねえよ」
「公園に来るな!化け物!」
子供達が公園の石を僕に投げてくる。
少しくらい居させてくれてもいいじゃないか。
肩を落とし街を歩く。
僕の後ろに何匹かの猫がついてくる。
「うちの猫取らないでくださる!?」
そう言って僕についてくる猫を取っていく。僕が誘拐したわけじゃないのに何故か当たられる。
その時だった。
「ミャーコ!どこ行くの!」
こんな声が聞こえた。さっきの猫だろう。
僕はそっちをすぐに見た。
女性は猫の名前を叫び、猫は車がたくさん通る道路へと飛び出している。
轢かれそうだった。
道路の真ん中に取り残され右へも左へも行けない。僕は猫の方へ向かった。
「危ない!」
猫が轢かれそうになると同時に僕はジャンプして猫を取り反対側の歩行者の所までもう一度ジャンプし着地した。
「良かった」
猫を抱き抱え、僕は優しく撫でる。
そんな僕にみんなはこう言う。
「猫泥棒が現れたぞ!」
「最低」
「警察に連絡よ!」
そんな声が飛び交う中、猫の飼い主の女性は大声を張り上げた。
「違うでしょ! この人はうちの猫を助けてくれたのよ。ねえ、お礼をしたいわうちへ来てくれないかしら」
急な展開に僕は首をかしげた。
猫を女性に返すと、女性は僕の腕を引っ張りその場から走っていった。
女性はレストランと書かれた所へ入って行く。
「あの僕お金持ってませんので」
引っ張られる腕を反対側へ引いた。
「大丈夫。お金なんてなくてもいいから」
女性はニッコリ笑って僕に言うと中へとどんどん入っていった。
中に入るとお客さんや従業員は一斉に僕を見て固まる。
そんな視線を御構い無しに女性は厨房を通り一つの畳の部屋へと入った。
そこに僕を座らせ、猫を置く。
「ミャー」
猫は再び僕の元へと近づく。それを見た女性はまた笑う。
「お茶入れてくるね。待ってて」
そう言うと部屋を出て行ってしまった。
しばらくして戻ってきたと思うと幾つかのお菓子とお茶を持って僕の前へ置いた。
「食べていいよ、タダだから」
「ありがとうございます」
僕は疑うことなくありがたくいただいた。
「私は杉本水菜、貴方どこから来たの? 名前なんていうの?」
「僕は天球から来ました。ガリウルと言います」
「へぇ、凄いのね」
水菜さんは僕の体をまじまじと見ていた。
「この二十三世紀、たくさんの宇宙人が居るけど貴方のような宇宙人は初めて見たわ」
僕も初めてだった。
「僕もです。こんなにも性格がバラバラな宇宙人は見たこと無いです」
そう言って笑うと水菜さんは大爆笑した。
「そっか、私達も貴方達から見れば宇宙人だもんね」
水菜さんは初めて僕に普通に接してくれた優しい人だった。
「ありがとうございます。そろそろ帰りますね」
少ししてそう言うと彼女は顔をしかめて僕に言った。
「もうちょっとここにいなよ?」
「いえ、仕事を探さなきゃいけないんです」
眉を下げてそう言うと水菜さんはニッコリ笑った。
「なら、ここで働きなよ」
僕は水菜さんの言葉に僕は固まってしまった。
「大丈夫よ、ここは私が始めたレストランだからね。あなたが働くことに誰も文句は言わせないわ」
片目をパチリと閉じ僕にウィンクをして見せた。
「本当にいいんですか?」
僕は目を輝かせながら水菜さんの手を取り両手で覆った。
「あはは、いいに決まってるじゃない!」
親指を立てぐっと僕の前に手を出した。そしてこう言ってくれた。
「これから頑張ってね! ガリウル」
僕は大きく頷き、返事をした。
「はい! よろしくお願いします!」