ガリウルと友達の仕事
「早く洗ってくれる?」
僕が仕事を忘れていたのをみんなやっぱり怒っている。
「ごめんなさい、すぐやります」
少し俯き申し訳なさそうに謝る。水菜さんは苦笑いをする。仕事をほっぽかした僕が悪いんだけどね。
でもお皿洗いなんてすぐに終わる。たくさん溜まっていたけどもう半分も済んでいる。
「ガリウルは皿洗い得意なのね」
水菜さんはそう言って僕に微笑んでくれる。みんなも仕事のことは認めてくれそうだった。
「じゃあもうそろそろ閉めるよー」
水菜さんがドアの前のオープンと書かれたものをクローズに変えた。人がどんどん減っていき、みんな仕事が終わった人から帰っていく。僕はお皿洗いだから最後まで残らなきゃいけない。
最後のお客様が帰り、僕の今日の仕事は終わった。
「おつかれさまでした!」
仕事一日目が終了した。
服を着替えてすぐに翔くんの待つ屋上へと向かった。
「お待たせ!」
そう言いながら扉を開けると翔くんは地面で寝ていた。ゆさゆさと翔くんを揺らして起こす。
「ん……? ガリウル?」
「うん、ごめんね。遅くなっちゃって」
「ううん、大丈夫」
「ありがとう! そうだ、ここで話すのも何だし今日さ家に来て話さない?」
「え? いいの?」
「もちろん!」
僕は翔くんを家に呼んだ。翔くんはニコニコしながら僕について来てくれる。
家は狭いが二人くらいは入るだろう。
「ここ僕の家だよ、ボロボロだけど入って」
「お邪魔します」
翔くんは家に入り靴をきっちり並べた。部屋へ入り、僕はお茶の準備をした。特にこれといってお菓子なども無い。
「ごめんね、お茶しか出せなくて」
「ううん、ありがとう」
翔くんと向かい合って座り、音を立ててお茶を飲んだ。
「翔くんは仕事どうするの? いきなりでごめん。だけど気になっちゃって」
「ガリウルは優しいんだね。
うーん……、さっき考えてたら寝ちゃって何も考えてないや」
ふふふと笑いながらそう言った。
「そっか……。僕から水菜さんに頼んで一緒に働けるようにしてみようか?」
「え!? そんなの悪いよ」
「水菜さん優しいからきっと大丈夫だと思う」
「でも今の仕事給料はすごくいいんだ、こんなことでへこたれてちゃ、やっていけないかもしれない」
翔くんは泣きそうな顔で僕に言う。僕はそっと震えている翔くんの肩に手を置いた。
「僕がなんでもする。翔くんのために出来ることなんでもするから」
目を合わせてはっきりそう言うと翔くんはぐちゃぐちゃになった顔で僕に微笑んだ。
「ありがとう、ガリウル。じゃあ辛くなったらなんでも聞いてくれる? 泣きたい時はここに来てもいい?」
「もちろんだよ」
「……ありがとう」
「うん」
僕たちの間にこれ以上話すことは無かった。
翔くんはじっと肩を震わせ泣いていた。何度もお母さんを呼んでは謝っている。
少しして落ち着いたのか、翔くんは座ったまま寝ていた。そっと翔くんを寝転ばせると毛布をかけ、僕も眠りに入った。
ガタガタと夜中に音がする。
「ふぁ……あ、なんだろ」
僕は目を擦りながら身体を起こすと、翔くんが起きていた。時計を見ると午前四時。僕が起きるのは基本午前六時だ。
「翔くん、眠れないの?」
僕が声をかけるとびっくりしたようにこっちを見ていった。
「ごめん、起こしちゃった? もう出勤時間なんだ。いってくるね」
「もう行くの? 早すぎない?」
「早くいって遅くまですると給料が基本より高くなるんだ」
「そっか……。頑張ってね」
「ありがとう、ガリウルがいると思うと心強いよ。行ってきます」
「行ってらっしゃい」
僕は翔くんが仕事へ行くのを見送った。
「今日はもう寝れないや」
翔くんのことが少し心配だった。朝ごはんも出せていないのに、身体は持つのだろうか。
そう思うと僕はじってしていられず、部屋にあったパンとジュースを持って外へ出て行った。
全力で走っていると、すぐに翔くんの後ろ姿が見えた。足が四本もある僕は地球人に比べると走るのも早いのだ。
「翔くん!」
後ろから翔くんの名前を叫ぶと、彼は勢いよく振り向いた。
「ガリウル!? どうしたの?」
目を丸くしてこっちを見つめる翔くんにパンとジュースを差し出した。
「これ、朝ごはんなかったら身体もたないよ? 少ないかもしれないけど」
「……ありがとう」
僕の手からそれを取るとにっこり笑ってお礼を言った。
「うん、頑張ってね」
「じゃあまたね」
「またね」
翔くんが僕に背を向け、どんどん歩いていく。パンもちゃんと食べているようだった。
ここでは食べ歩きは行儀が悪いと言われてるらしいが彼には止まってゆっくり食べている時間はないのだ。
僕はそんな翔くんの後ろ姿に大きく手を振った。




