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寂寥

作者: 相模

 空が青かった。果てしなく続く空の繋がりは世界中の人々との一体感を感じさせられる様だが、私の心の中にある欠落を鑑みるにきっとただの思い過ごしなのだろう。

 昼食後の講義を聞き終えた私は、次の講義まで一限開くというので外に出てみた。肌寒い空気の中浴びせられる陽光は心地よかったが、その澄みきった青空を見つめれば見つめるほど私が感じている一抹の寂寥は膨らみ続けている。

 いったい何が足りないと言うのだろうか。愚かにも私は自らの孤独を忘れその様な事を考えていた。

 大学に入ってからというもの、中々人と話す機会が恵まれなかったのに生来の口下手も相まって、友と呼べる友ができずにいた。だとするとこの寂寥感は大学での孤立からくる物なのだろうか。いや、そうではない。そう断言できるのはまだ友人も多くいた幼年期、少年期にもこうして物思いにふける事が少なからずあったからだ。

 孤独さと寂しさは違う。そもそも孤独というのは周りに人がいて成り立つのであって、もし誰もいないところで独りになったところで孤独という概念自体を認識できないのではないだろうか。その一方で「寂しさ」というものは四季の移ろいや時間の経過に対して使われる事もある。「口寂しい 」という言葉が体現する様に物を対象にできるのだ。

 ここでようやく気づいた。私はいつだって過去を懐かしみ、寂しく思っていたのだ。ああ、本当になんと愚かか。私は今の空を子供の頃見た空と重ねて寂しさを感じたのだ。

 空は何も変わっていない。むしろ変わったのは私だった。多くを知り、純粋に物が見れなくなっていた。だからこそ大した事でもない事ではしゃいだ子供時代を思い出していた。

 ならば、無垢に戻ればいいではないか。

 私は立ち上がった。すると、今まで見ていた風景がまるで新鮮な物に変わっていた。

 私の心は今日の空の様な快晴で、そのまま歩き始めた。

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