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第五話

章のタイトルを変更しました。

だって黄巾の乱が始まってすらいないんだもの……

 沙雪とただ無言で酒を飲み交わしていると、

 砦に向かってくる金色に輝く鎧を身に纏った

 兵士を発見した。

 間違いない。あれは袁術の兵だ。

 まさか奴らが動くとは思いもしなかった。

 噂じゃあどうしようもない餓鬼だと

 聞いていたんだがねぇ。

 沙雪に下で馬鹿騒ぎしている連中に

 敵が接近していることを伝えるように頼み、

 アタシは奴らの動向を観察する。

 袁術軍の奴らはそのままの勢いで

 砦に向かってくるが、ギリギリ矢が届かない

 場所で突然進軍を止めた。



 「何だ?攻めてくるわけじゃないのか?」



 いや、そんなはずはない。

 戦力は少ないものの、態々目立つ鎧を着て

 ここまでやって来たのだ。

 奴らは間違いなくアタシらを討伐しに

 きたとしか思えない。

 それに斥候にしては、明らかに鎧の色が派手すぎる。

 あれでは見つけてくださいと言っている

 ようなものだ。

 ……相手が袁術なら有り得そうではあるんだが。



 「……疾風」


 「おっ!速いな。もう伝えてきてくれたのかい?」


 「……ん」


 「そうかい。ご苦労さん」



 沙雪の頭を撫でて労っていると、

 ようやく他の連中が砦から出てきた。

 全く……行動が遅すぎるっての。

 連中の行動の遅さに呆れていると、

 こちらの動きを合わせるように

 銀髪の女性が馬に乗って前に出てきた。

 あれが軍を指揮してる奴みたいだな。

 ……かなりの手練れみたいだ。

 ここからでも凄い威圧感を感じる。

 この距離でこれだけ感じるんだ。

 奴の近くだと、どれだけの威圧感を

 感じるんだろうな。



 「聞こえるか!我らが領地に足を踏み入れた

 憐れなる賊共よ!我が名は紀霊!

 貴様らを討伐しに参った者だ!」



 紀霊の声が辺りに響く。

 同業者の何人かが弓を構えるが、

 アタシはそれを制した。

 話ぐらいは聞いてやっても良いだろうと

 考えたからだ。



 「本来ならば、このような少ない戦力で

 戦をすることは無いのだがな。

 貴様ら程度の有象無象なぞこれだけの

 手勢で十分よ!」



 紀霊がアタシらを嘲笑う。

 あーこれは不味いかもしれない。

 アタシと沙雪はそうでもないのだが、

 他の連中は妙に自尊心が高く、

 下に見られることを嫌う。

 その為、紀霊にあんなことを言われれば--



 「あの女ぁ……!!」


 「上等だ!今からブッ殺しに行ってやらぁ!!」



 当然コイツらは憤り、砦から出ようとする。

 一時の感情に支配され、有利な条件を

 自分から捨てようとするのだ。

 こうなれば、もうアタシの話を聞こうと

 しないだろう。

 こりゃあ負けたかもしれないねぇ……



 「ふんっ!口でならば何とでも言えるわい。

 口だけではないと申すならば、

 儂の目の前に参ってこの頚を

 取って見せるが良い!」



 紀霊はそう言って挑発してくる。

 その瞬間、同業者達の怒号が辺りに響いた。

 こりゃあ完全に駄目だな。

 覚悟を決めておくとするかねぇ……





 賊共はあっさりと儂の挑発に乗り、門を開け放った。

 よしっ!これで次の策に移れる。



 「これより撤退を始める!全速力で走るのじゃ!」


 「分かってますよ。任せてください!」


 「俺の逃げ足の速さを見せてやるぜ!」


 「フッ……俺様の本気をその目に焼き付けな」



 兵士達が軽口を叩きながら走り出す。

 うむ……まだまだ余裕があるようじゃな。

 その余裕が最後まで続けば良いのじゃが……

 そう考えなからも馬を走らせ、兵士達の後を追う。

 突然退却し始めた儂らを見て恐れをなしたと

 考えたのだろう。

 儂らを殺そうと砦の中から次々に賊共が出てくる。

 ……いくらなんでも簡単に引っ掛かりではないか?

 こんな子供騙し以下の愚策、普通の思考能力を

 持った者ならば気づくはずだが……

 あの砦には馬鹿しか居ないのだろうか?

 それともわざとこの策に引っ掛かったのか?



 「……どちらでも構わぬか」



 頭を振って頭の中の思考を打ち消す。

 砦から出すことが一番の課題だったのだ。

 出すことが出来たのだから、無駄なことを

 考える必要はない。

 今はただ、我が愚策を成すことに専念するのみ。





 紀霊に挑発され、憤った奴らが次々に

 砦から飛び出していく。

 アタシと沙雪はそれを城壁の上から眺めていた。

 馬鹿な奴らだ。

 いくら怒りで頭が回らなかったとはいえ、

 あんな単純な策に引っ掛かるなんて。



 「いや……丁度良いか」



 態々相手から死に場所を作ってくれるんだ。

 最大限に活用させてもらおう。

 そう考え腰に差された愛刀、夜兎の柄を撫でた。





 もはや戦況はこちらの圧倒的有利になっていた。

 まんまと兵を伏せてある場所まで

 誘導された賊共は伏兵による奇襲を受けて混乱し、

 混乱を収めしようとした賊の頭も楊泰に

 よって既に討ち取られていた。

 元より頭の存在があってなんとか

 統率が取れていたのだ。

 頭が討ち取られた以上統率が取れるはずもなく、

 烏合の衆になり下がっていた。

 こうなってしまえば戦力差など意味を成さず、

 命を奪う側が奪われる側へと変わる。

 辺りには賊共の屍が無数に転がり、

 溢れ落ちた血が大地を赤く染めていた。



 「投降してくる者には手を出すな!

 抵抗してくる者のみ切り捨てるのじゃ!」



 馬上から指示を出しながら突き出された

 槍の柄を掴んで止め、頚をはねる。

 その瞬間、血が宙を舞い大量に体に付着するが、

 気にすることなく片手で槍を持ち直し、

 後ろから楊泰に襲いかかろうとしている

 賊に槍を投げつけた。



 「ゲピッ!?」



 投げられた槍は易々と賊の体を貫き、

 木に縫いつけられた。

 楊泰は儂に助けられたことに気づくことなく、

 大暴れしている。

 やれやれ……全く気付いておらんな。

 儂が助けてやらなければ、今頃命は無かった

 かもしれんの。

 楊泰の不注意さに息を吐いた。

 その時、ブオンと風を切る音を耳で捉える。

 その音を聴いた瞬間、直感で三尖刀を真横に振るう。

 ガキリと鉄がぶつかり合う音が鈍く響き、

 その一撃の重さに腕が痺れた。

 それに顔を歪めながらも

 視線を横に向けると左目に眼帯をし、

 青色の髪を肩で切り揃えた無表情な

 少女がそこに居た。



 「ふふふ……やりおるのぉ。

 おかげで腕が痺れてしまったわい。

 儂の名は紀霊じゃ。

 お主の名を教えてはくれぬかの?」


 「……雷銅」


 「雷銅か……良き名じゃ。

 では雷銅よ、お主に問おう。

 何故お主は賊などに加担しておる?」


 「……」


 「お主の目は周りの者とは違って

 決して濁っておらず、とても澄んでおる。

 にも拘わらず賊に与し、悪逆の限りを尽くす

 その理由はなんじゃ?」



 儂の問いに雷銅は答えず、ただ沈黙を貫く。

 これはつまり、儂の問いに対する無言の拒否。

 雷銅の澄んだ瞳が答えるつもりはないと語っていた。

 これ以上、言葉を交わす意味はない、か……

 雷銅の姿を見て、こちらも刃を交える

 覚悟をしたその時--



 「おぉぉぉぉ!!」


 「ぬぅっ!?」



 何者かに組み付かれ、馬から落ちてしまう。

 馬から落ちた儂は、その衝撃で

 一瞬だけ視界が暗くなる。

 視界が回復した時、最初に目に入った物は

 儂に馬乗りになり、に柳葉刀を

 振り下ろそうとしている

 赤髪の少女の姿だった。

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