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スウォード・ワールド  作者: zo-no
7/9

ACT7


やっぱりまた短いです。テスト終了祝いで書きました。




 目を開くと知らない天井が見えた。






……異世界転生だと思った人は、もう手遅れです。




 閑話休題。




 とにかく、ハルトはあの戦闘のあと意識を失いどこかへ運ばれたらしい。


 寝ながら見える天井は木造でできている。どうやらあの老エルフの家らしい。


「お目覚めですか?」


 すぐそばから声がかけられた。その声は穏やかで優しい色を浮かべている。


 ハルトは起き上がり、布団の上に胡座をかいて向き合って座った。


 老エルフを見ると様子が変わっていた。まず目に入るのが服装。クエストを受注した時は紺色の落ち着いた和服だったが、今は黒と金の派手な羽織りになっている。次に顔。どこか疲れたような、そして何かに飢えているような雰囲気は消え失せ、満ち足りた、生き生きとしたオーラを醸し出している。顔の肌にハリが出てシワは減り、渋い、カタカナで言えばダンディなエルフになっていた。羽織りを着たその姿は、Vシネマに出ても違和感は無いだろう。


 ダンディエルフは扇子で仰ぎながら言った。


「此度は誠にありがとうございました。あなたのおかげでこの地にまた戻ることができました」


 このダンディエルフ、態度と言葉使いが合ってないぞ。とは思わなくもなくなくない。


「こちらが私どもからの感謝の品です」


 差し出される木箱。中を確認したいがイベント中なので自由に動けず断念する。


「そして、こちらが−−−」


 そう言って再度差し出されたものは、


「−−−<蒼雷の太刀>。あの憎き鬼の刀です」


 強敵の形見だった。











 あの後、<蒼雷の太刀>を受け取り、感謝の意を長々と聞きようやく解放されるまでに1時間くらいかかった。


「ふ〜〜〜〜〜っ。長かったなぁ」


 今、ハルトの視界がぼんやりとした光に覆われている。集落が消えていく。ダンディエルフ曰く、「私達は二度と繰り返さないよう姿を消します」だそうだ。おそらく、また幻術やら結界やらを使ったのだろう。


 しかし、<絶の太刀>を壊した事を伝えた時のダンディエルフは少し様子がおかしかった。そのあとも態度がよそよそしかったし、それだけ大事な物だったのだろう。とハルトは一人納得する。











 集落が消えていく。


 特に感慨があるわけではないが、その光景はやはり何か寂しさを覚えさせる。


タッタッタッタッ


 何かがこちらへ近づいてくる。


「お兄ちゃ〜ん!」


「ちゃ〜ん!」


 ハルトを<餓鬼の森>からこの集落へ連れ出した子供エルフの二人だ。あの時はパニックになっててよく見てなかったが、この二人、かなり可愛い。ハルトは決してロリータ・コンプレックスでもショタコンでもないが、その二人はとても可愛らしかった。


 二人が手を繋ぎながら走ってくる。ハルトの事を呼びながら。あっ片方がこけた。片方が心配している。こけた方は泣かない。そして立ち上がり二人で走ってくる。その姿はとてもいじらしく可愛い。しかしハルトは決してロリータ・コンプレックスでもショタコンでもない。


 そして二人はハルトの目の前まで来た。その姿は集落とおなじようにぼんやりとした光に覆われ、消えようとしている。


 二人はハルトの前で横に並び、揃って頭を下げた。


「助けてくれてありがとうございました!!」


「ました!!」


 顔をあげた二人の顔は、あどけない満面の笑みでいっぱいだった。


 そして徐々に足元から消えていく。


「またね〜!!」


「ね〜!!」


 二人はぶんぶんと手を一生懸命振る。ハルトも必死で両手を振った。




 そして二人が集落とともに見えなくなった。




 そして、ハルトは目覚めてしまっていた。











 ハルトは草原に一人立っている。その立ち姿は深い哀愁を漂わせており、その両目からは涙がとめどなく溢れ出て、何度も何度も鼻水をすする音を鳴らす。


「うぐ……ひっく……ぐすっ」


 どれほどそうしていただろうか。ようやく落ち着いてきたハルトは自分の醜態を確認し、頭を抱える。


「あっぶねー」


 ああ恐ろしきかな、ロリアンドショタの魔力。


 ハルトも、自覚がないままその扉を開き、踏み込もうとしてしまっていた。気をつけよう。ハルトはそう決意した。











 辺りを見回すとそこは、ハルトが<餓鬼の森>を見つけた場所だった。しかしもう森は見えず、草原が広がっているのみ。スライムなどの初期モンスターがちらほら見えて、遠くには始まりの街が見える。ただそれだけ。


「よっしゃーーーーーっ!!」


 長かった。現実ではそんなに時間は経ってないのだろうが、この世界では3ヶ月。3ヶ月!!


 あなたは想像できるだろうか。


 3ヶ月間、誰とも会話せず、ウィンドウに映るマスコットキャラに対して毎日毎日同じ会話をする日々を。


 毎日毎日葉っぱのソファで眠り、少ない食料(植物)をケチりながら過ごす日々を。


 毎日毎日少ない水で気休め程度に水を浴びる日々を


 ホントに長かった。よくやったと自分を褒めてやりたい。


 今ハルトの頭にある単語は、『肉』と『ベッド』と『シャワー』。


 その3つの単語を胸にハルトは始まりの街に向かって走りだした。






 クエスト報酬も確認しないまま。




 そして、自分が3ヶ月でいわゆる『コミュ障』に近いものになってしまっていたことを。






 彼は知らない。








ショタコンって何の略?わからないです。

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