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スウォード・ワールド  作者: zo-no
5/9

ACT5

テスト前に狂気の投稿。


戦闘描写難しいです。




 光を抜けると、そこには幻想的な光景が広がっていた。


 まず目に飛び込んでくるのは桜。桜の木が何百本と乱立しており、無秩序という自然の秩序を奏でている。見るもの全てに美を感じさせるそれは、たいした風も吹いてないのに花びらを散らし、ひらひらと視界を覆うように舞っている。


 いつまでも見ていられた。しかしプログラムは無情に作動する。


 身体が硬直し、視点までもが固定される。足がハルトの意思とは無関係に動き、前に進む。


 しばらく歩くと開けた場所に出た。広さは10メートル四方くらい。


 ここでボス戦か。


 ハルトは理解した。なぜなら、


「貴様は誰だ」


 蒼い和服姿の、額から二つの角が突き出た男が、ハルトに背を向ける形で正座をしていたからだ。









「−−−此処は俺の縄張り。何故貴様はそこに居る」


 ピシッ


 その鬼の周りではその剣気に当てられ桜の花びらが真っ二つに裂け、散ってゆく。


「−−−俺に挑むのか?貴様のような下等種族が」


 その鬼は、その傲慢な口ぶりに相応しい王の貫禄と実力を合わせ持っていた。


「−−−渇く。俺の身体が、心が、此の刀がっ!!」


 バリバリバリィッッッ!!!


 刀を地面に突き刺した鬼の周囲に青白い閃光が幾筋も走る。そして蒼い雷電を纏った鬼−−雷鬼は、静かに立ち上がりハルトと向き合う。


「−−−覚悟はよいな?この刀の錆と為れっ!!!」


 轟ッ!!と凄まじい爆裂音と共に、雷鬼は刀を構え地を蹴りハルトへと走り出した。




×××Battle×××




 雷鬼が凄まじいスピードでハルトへと迫ってくる。その姿は地を駆けるというよりは地を翔ける、といったほうが適切だろうか。


 雷鬼の前に構えられた刀はハルトの喉へと切っ先を向け、全く微動だにしない。凄まじい速さで移動してるはずなのに、上半身が固定されているその姿を見て、ハルトの背中に冷たい汗が流れた。


(コイツ、すげえ)


 ハルトが別に格闘のプロという訳ではない。しかし、素人が名画を見て涙するように、名曲を聞き心が揺れるように、論理的ではない凄さを無意識に雷鬼から感じとった。


 しかしそこには恐怖は無い。


 そして人見知りによる混乱も無い。


 目の前にいるのは倒すべき敵。すでにハルトはそう認識していた。


 そもそも、ハルトは戦闘が好きなのだ。それもアイテム、装備をきちんと揃え、安心して臨むような戦闘ではなく、いつ負けるかわからないという緊張感が常に付き纏う戦闘が、だ。それはβテスト時から<餓鬼の森>を見つけそこに入り浸っていたのがその証拠であろう。


 その圧倒的な恐怖感を全身で感じたハルトは、身に迫る刀を前に、喜びで身体を震わせていた。


 ハルトもその黒刀を構え、雷鬼に向かって疾走する。




 そして、二つの影が交差した。




 桜の舞う中、激しい打撃音が響き渡る。その衝撃波で辺りの花びらが吹き飛び、一時的に二人だけの空間がそこに出来上がる。お互いがお互いに刀身をぶつけ合い、そのまま静止した。力が拮抗しているためだ。ギリギリギリ、と二人は押し合う。


 二人が同時に後方へ飛び、刀の届かない距離までさがる。


「ほう。中々に出来るではないか。久方振りに斬りがいがありそうだ」


 雷鬼はそう言うと、先程とは一転、擦り足で時計回りに移動し始める。ハルトはその対角線上にいるように、雷鬼に倣って時計回りに移動する。


「おっと。ってうわッ!!!」


 ハルトに剣道の心得があるわけもなく、慣れない擦り足での移動に躓きバランスを崩してしまう。


 雷鬼がその隙を見逃さずに突きを繰り出す。空気を斬り裂くように放たれた刀はハルトが首を傾げ、紙一重でかわす。ツウゥ、と頬を伝う液体はまるで現実での出来事であるかのような錯覚を起こさせる。


 しかしギリギリの攻防の最中にそんなことは言ってられない。突きをかわしたハルトは横薙ぎに黒刀を振るう。それをいつの間にか手元に戻っていた刀で弾き、返す刀で袈裟懸けに振り下ろす雷鬼。ハルトは刀を弾かれた勢いを殺さずに雷鬼の刀へとぶつけ、その攻撃を防ぐ。


 金属音と共に火花を散らし、二人は再度距離をとる。その二人の顔は狂気を孕んだ笑みに彩られていた。


「クククッ、クハハハハハ!!!これ程とは!!この俺がまだ一太刀も浴びせきれなんだ。身体が!!刀が!!歓喜で震えている!!」


 雷鬼が叫ぶが、それはハルトも同じこと。恐怖心と闘争心がぐちゃぐちゃに混ざり合い、またそれを楽しんでる心もある。頭は心と関係なく冷静に戦闘を分析し、四肢へ指令を出している。


 この瞬間、ハルトは『生きて』いた。


 この世界が仮想空間とか、この痛みがデータとか、そんなことは頭に無い。ただ純粋に戦いに臨んでいた。現実世界での『宮本遥斗』ではなく、『ハルト』として命を削り合う彼は、『生きて』いた。


 『宮本遥斗』を知る者は『ハルト』を見て驚くだろう。その生き生きとしている表情に。




(反応するだけじゃ駄目だ。こっちから仕掛けなきゃ)


 その後、数度刃を交じ合わせたハルトは気づいた。相手の攻撃はなんとかかわせる。しかしこちらの攻撃もかわされる。このままでは戦いが終わらないことに。


 ハルトは慣れ親しんだ策を用いることにした。


 雷鬼は時計回りに移動するが、ハルトは敢えて反時計回りに移動する。振るわれた刀にハルトは黒刀をぶつけ、弾かれる勢いを利用し身体を回転。流れるように雷鬼の背後へと周り込んだ。そしてそのまま人型モンスターの急所である首に刀を突き刺した。


 急所突きと称号の効果も相まって、その初めてのクリーンヒットは莫大なダメージとなって雷鬼へ降り懸かった。


「ガアッ!!」


 しかし、流石というべきか。一撃死、とはいかず膝をつくだけに留まった。刀を引き抜き、とどめを刺そうとした。


「ッ!?」


 悪寒が走り、ハルトは慌てて雷鬼から離れた。その時だった。


バリバリバリイィィィッ!!!!!!!!!!!


 雷鬼から、閃光と轟音が放たれた。


 閃光により視覚が、轟音により聴覚が機能しなくなる。真っ白な世界で耳には耳鳴りのような音が鳴り続けた。


 ザシュ、ザシュ、ザシュッ!!


 何も無い世界の中、不意に背中に痛みが走る。


「−−−っ!?」


 苦悶の声をあげても何も聞こえない。ハルトはそのまま俯せに倒れる。


 ドガッ!!


 腹部に衝撃を感じ、仰向けにされる。徐々に感覚が戻ってきており、視界、聴覚がクリアになっていく。


「−−−−−さらばだ」


グサッ、と刀が地面に突き刺さる。


 雷鬼がハルトに刀を突き刺すところだった。


「うおおっ!!」


 素早く転がって立ち上がり、雷鬼から距離をとる。


 ハルトが自分のHPバーを確認すると、残り二割を切ったところだ。


 回復しようとアイテムを使おうとす……あれ?アイテムが使えない?


 どうやらこのボス戦ではそういう仕様らしい。危機(ピンチ)である。




 雷鬼を見ると、変化があった。


 全身を纏っていた雷電は消え去り、雷鬼の身体は赤いオーラに覆われている。そして刀がバチバチ言わせながら蒼く光っており、先刻より威圧感が増したようだ。


 地面から刀を抜き、土を払うように刀を振る。通った後には残光が残り、目に焼き付かれる。そこで雷鬼が口を開く。


「俺も貴様も、後一撃喰らえば尽きるであろう。最期は一騎打ちでどうだ?」


 そう言い、最初に雷鬼が正座していた場所まで歩いていく。そして刀を構えた。


 ハルトも最初の位置に戻り刀を構える。




 数分が過ぎた。二人は武器を構えたまま微動だにしない。


 ふわり、と無数にある桜の花びらのうちの一枚が地面に触れる。


 それが合図となって二人は駆け出した。




 疾走する二つの影。




 雷鬼の刀がハルトへと迫る。




 ハルトの刀が雷鬼へと迫る。




 交差。




 二人は止まる。


 ハルトの刀が根本から折れた。


 そして、雷鬼が崩れ落ちた。


「……見事」


 そう言い残し、虚空に消えた。




×××××××××




 電子音が複数回鳴り、レベルアップと称号入手を伝える。


 しかしハルトは戦闘が終わったことで体力的、精神的な疲れに襲われていた。


 目の前に老齢のエルフがいて何かを言っているような気がするが、眠い。


 ハルトは意識を手放した。








◇◇◇


ハルト:侍Lv46


称号:下克上、益荒男、一撃の心得、鬼神


装備:無し、見習いの服








こっそり職業を武士→侍へ変更。


本当は雷鬼の攻撃を喰らえば高確率で麻痺るのですが、益荒男で対処。


雷鬼はレベル60くらいですが称号により対鬼族に対して異常にステータスがアップされ互角の勝負。


ああ恐ろしきかな老エルフ。


新しい称号についてはまた。




読んでくださりありがとうございます。



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