ACT2
時は少し遡り、ログイン前。
ハルトはβテスターだけに配られる限定盤<Sword∞World>のメモリソフトを嬉しそうにイマージュギアに読み込ませていた。
「よし。オッケー。」
頭部にLoading完了の文字がでたので、そのヘッドギア型の仮想出力機を頭にセットする。そして起動音声サインを言う。
「コネクト、スタート。」
◇◇◇
まずは名前設定。オレの名前は宮本遥斗だからハルトでいいな。名前を入力し、次の画面へ。
次は顔のデザイン設定。ハルトはβモデル4の顔を選ぶ。これはハルトが500人のβテスターの特典で貰ったものである。一人一人特典が違うらしい。モデル4は切れ長の眼で現実のハルトの顔に若干似ている顔だ。髪は黒、眼を白にして完成。もっとパーツの配置や選択等で細かくできるがめんどくさいのでパス。
その後もいろいろめんどくさい文面が出てくるが全部書くのは面倒だから書かない。
そしてやっとログイン場面へ。ログインするとオープニングムービーが流れた。直接視神経へと送られる映像は映像とは思えないくらい鮮明に映り、その壮大な音楽とも相まって、いやがおうでもテンションが上がってくる。
−−ようこそ、<Sword∞World>へ
そして光に包まれた。
その後、広場にハルトは降り立ち、先程のメールが届き今へと至る。
◇◇◇
時は戻って今。
広場にはまだ混乱して残っている人もいるが開かれた街に散っていく人もたくさんいる。
ハルトもβテストでの経験を活かして、道具屋に行き回復薬を全財産を注ぎ込んで買い、急いで街の外に出る。
何故急ぐかって?そんなもの10億の為に決まってるだろう。他にも特典があるみたいだし。
ハルトはその時を想像してにやけた笑みを浮かべた。
◇◇◇
ハルトが街を出てフィールドへ出ると、他のプレイヤーが数名いた。彼らもβテスト参加者だろうか。既にモンスターと戦闘を始めている者もいる。
ハルトはそこから離れ、南へ向かって歩きだす。まるで隠れるように。
途中で数匹のモンスターに遭遇したが、スルー。相手はスライムで初期に出てくるモンスターだ。青い液状のモンスターで攻撃力、防御力ともに低くHPも少ないため初心者が最初にお世話になるモンスターだ。しかし入ってくる経験値は微々たるものでレベルアップには余り意味が無い。この世界に慣れる為の練習台の意味が強いであろう。
しかしハルトはβテスト参加者。そんなモンスターには目もくれず、ずんずんと歩いて行く。
ようやく目的地にたどり着いた。ここは<餓鬼の森>。βテストの時にハルトだけが見つけたエリアだ。初期装備でしか入れないという特殊な条件があり、初期装備縛りプレイを楽しんでいたハルトだからこそ見つけることができたのだ。
このエリアの特徴は、出てくるモンスター(主に子鬼)がこちらのレベルの5レベル上になるというところだ。ここでは初期装備でしか挑めないため、装備に頼ったプレイスタイルでは生き残れない。完全にプレイヤー自身の技術が試される場だ。
βテスト時代、ここを見つけたハルトはそのスリルと爽快感に魅せられ、攻略そっちのけで入り浸った。そしてそのおかげで様々なPSを身につけたのだ。
入り口をくぐり、歩いていると一体のモンスターが現れた。<子鬼>だ。見た目は人間の子供で、小学高学年くらいの背丈で仮面をかぶっている。腰には黒と黄色の縞々模様の布を巻き付けている。そして最も目を引くのはその頭部にちょこんと生えた親指程の大きさの角だ。
「がおーーー。」
かわいい声をあげておそいかかってきた。
×××Battle×××
子鬼がハルトに迫る。その手には金棒が握られている。子鬼は金棒を振りかぶりハルトに向かってたたき付ける。
「ッ!!」
かわいい見た目に騙されてはいけない。相手のレベルは自分より5も高いのだ。振り下ろされた金棒を必死にかわし、距離をとる。
ハルトは自分の持っている初期武器の剣を握りしめこちらをうかがっている子鬼に構える。 もう一度子鬼が襲い掛かってきた。ハルトは持っている剣を子鬼の金棒にぶつける。
ガキーンッ!!
レベルで負けているハルトは当然筋力も負けているわけで、ハルトの剣は大きく弾かれる。しかしハルトは弾かれた勢いの向きを変え、そのまま回転して子鬼の背後に回り込む。そして剣を子鬼の首に突き刺す。
「ぎゃーーす」
子鬼はか細い断末魔をあげて虚空に消えた。
×××××××××
ピロリロリーン
頭の中でレベルアップを告げる電子音が数度連続して鳴る。
ピローン
先程とは違う音階の電子音が聞こえた。どうやら称号をゲットしたようだ。
「どれどれ」
確認すると、<反抗期>とあった。自分よりレベルが上の相手と戦うときに各種ステータスUPするらしい。この<餓鬼の森>では重宝しそうだ。名前は気に喰わないが。
βテスト時代には無かった、称号というシステムに少し喜びながらハルトはまた歩き始めた。
◇◇◇
その後、丸一日かけて子鬼を狩りつづけたハルトは、夕方になって帰ることにした。出口へ行くため自分の進んだ道を戻……あれ?
出口が無い。
進んだ通りに戻ったはずなのにいつの間にか同じ道へと戻っている。
……バグ?
とりあえず休憩ポイントまで行く事にした。
休憩ポイントまで来たハルトはすぐにウィンドウを開き、運営に報告するためコールボタンを押した。すると目の前に新たに小さいウィンドウが現れ、そこにはうさぎとパンダを足して割らなかったようなキャラクターがいた。
「ヤッホー、ペッポだよ〜。何でも聞いてね。フフッ」
こいつがこのゲームの質問に答えるようだ。ハルトは<餓鬼の森>から出れないことを伝えた。すると、
「フフッ、それは仕様だよ〜。頑張ってね〜。」
とのことだ。ハルトはウィンドウを消し、解決策を考える。
考えると言っても方法は一つで、このエリアのボスモンスターを倒すしかない。しかしβテスト時代はボスモンスターのボの字も見えなかった。あの時は確か20レベルは超えていたはずだがそれではダメだった。とにかく、戦いまくろう。ハルトは人知れずボスモンスターを一人で倒すことを決意し、今日のところは寝ることにした。
……え?フレンドリスト?あるけどフレンドとかいないっつーの。
◇◇◇
ハルト:見習いLv12
称号:反抗期
装備:見習いの剣、見習いの服
ペッポって誰かに似てるな〜、と考えてたら某女性ハーフタレントだったwww
どんどん進みたいな……