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監禁

作者: 桜月
掲載日:2026/04/07

一応この物語を書いた理由はTRPGのキャラクターの背景ストーリ―です。書いた理由が理由なので退屈かもしれません。

 僕は今何をするべきなのか、合理的に考えればこの部屋から出るべきなのだが、僕の感情はそれを否定していた。

 理由はとても簡単だが酷く理解しがたい、僕自身この感情をどう処理すればいいか分からなかった。

 僕は今、監禁されている。いや監禁と言えたものじゃない、この部屋の中に僕を繋ぎ止める物質は無いのだから。

 この部屋にはこれといって異常な物はない、ただの女性の部屋、クローゼットがあって、テーブルがあって、本棚があって、ベットがあって、そこに僕がいる。

 いやある種の異常はある、彼女は監禁と断固として言った、けれども扉に鍵が掛けられていない、身体も自由だ、ただ「この部屋にいて欲しい」と言われただけ。ただそれだけの言葉が僕にはとても強力な枷になっていた。

 彼女はとても寂しそうだった。

 彼女はとても悲しそうだった。


「ただいま」

 

 仕事から帰ってきて疲れ切った彼女の声だ。

 遮光カーテンを閉め切っているので外の風景で時間は判断出来ないが時計の針は午後7時を指していた。

 僕は生活音を聞きながら部屋の中で待ち続けた。

 足音がこの部屋に向けられるとすぐに彼女がこの部屋に入ってきた。


「疲れた、抱きしめて」


 彼女は両手を広げ僕に迫ってくる。それを僕は受け入れ両手を広げて彼女を包み込む。

 僕より少し大きい彼女の体は到底僕の腕には収まりきらないが彼女は僕の胸に顔を埋めて必死に甘えてくる。

 それに答えるように僕も彼女の頭を撫でる。


「いやあ落ち着くねぇ、君の腕の中は」


「そう言ってもらえてうれしいよ」


 僕自身も彼女が僕の傍にいてくれるだけで満たされている。


「何かしたいことはないの?」


 彼女は僕に毎回問うてくる。彼女が満足するその答えを僕は持っていなかった。


「あなたと一緒にいたい」


 僕はただそれだけが望みだった。


「本当に?私の事は考えなくてもいいんだよ」


 優しい口調で本心から僕を心配しているのが伝わってくる。これが僕にはたまらなく気持ちよかった。


「僕はただただ愛されたいだけ、たとえ束縛されて、体の自由が、思考の自由が無かったとしても愛されていれば僕は満たされる。あなたが愛してくれるなら僕も貴方を愛す」


「それはありがとう、愛を求めるのは理解するよ、でも愛以外に無欲なのは感心しない、次の休日遊びに行こうか」


 何か嫌な予感がした、言葉にはできない不確実な予感が。

 彼女はきっと壊れている。


「嫌なら良いんだ、ただ私は何時も君を心配してるからね、それだけは覚えていて欲しい」


「わかりました」


 少し寂しげでそれでも何かを訴えかけるような顔を彼女はしていた。

 しかし彼女はすぐにいつもの雰囲気に戻り仕事の愚痴を始めた、それに僕は相槌を返し続けた。

 ただ僕は働いたことが無いのでこれといったアドバイスもでいなかった、それがどうしても嫌だった。


「ありがと、ストレス発散に付き合ってくれて、ごめんねこんな話しかできなくて」


「良いですよ、僕はあなたの愚痴を聞くのも好きだから、さっきも言ったけどあなたの全てを愛している」


 彼女は満足気に僕に抱きついた。

 疲れ切っていたのだろう、僕を押し倒しそのまま彼女は脱力し重力に従い全体重が僕にのしかかる。

 異様に軽い気がしたが女性ならそんなものだろう、ただ心地よかった。


「このまま寝ていい?」


 彼女は僕に問いかける。


「良いですが風邪引きますよ」


「大丈夫予防してるし、君がいる」


 必要とされる、それだけでやはり僕の心は満たされていた。


「それなら良いですよ」


 できるだけ彼女が冷えないように彼女よりも小さい体を精一杯広げ抱き込んだ。


 どれ程の時間が経ったものか数週間、いや正確には分からない。

「寂しいよ」

 最近彼女がこの部屋に入ることが少なくなってきた。

「何で先に行ったの……」

 何故か分からないが涙がよく溢れる、家族が恋しいのだろうか、彼女と居るときはこんな事ないのに。

 さっきから勝手にこぼれる声も嗚咽混じりになり、次第に大きくなり泣き喚いた。

 息が苦しい、どれだけ吸おうと思っても吸い込めない、それでもうめき声は勝手に出ていく。

 忙しない足音が家中を響かせる。

 扉が開く、薄暗くゴミや雑多な物々で荒れた部屋に光が入り込む、そちらを見れば母さんがいた。

 ここは僕の部屋、彼女はどこ……何処なの。


 母さんが駆け寄ってくる。

 何も言わず背中をさすってくれた。

 彼女は先週亡くなった。

 どうにも受け止められない現実が僕を襲う。

 僕が泣いてる間母さんはずっとそばに居てくれた。

 それが酷く現実を実感させてくる。

 空想に逃げることを否定する。

 どうすればこの残酷な事実を受け入れられるのか。



 あれから数カ月経った。

 僕が出した結論は現実を見ないことだった。

 眼鏡を掛け始めた、決して目が悪くなった訳じゃない、ただ現実を暈してしまえば彼女が見える気がしたから。

 僕はこれからもただひたすらに彼女を求め続けた。

彼女は病死で一年程度心を整理する時間はあった想定です。

死を受け止めるのって難しいですよね。

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