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「目的」と「手段」わたしたち入れ替わっている!?

作者: 稀Jr.
掲載日:2025/10/26

よく言われるように目的と手段が入れ替わってしまうことはよくあることだ。目的(purpose)が立派であればこそ、達成が難しくなって手段に走ってしまう。そのうち、手段(method)が楽しくなって目的を忘れてしまいがちである。とくに、プログラマという人種などがそうだ。もともと、DX や UX やらで業務改善をしようとしていたにも関わらず。DX のために丁寧なツールを作ってみるものの、ツールづくりが楽しくなってしまって、本来の目的を忘れてしまう。できあがったソフトウェアは誰にも見向きもされずに放置状態になりがちだ。「まずは完成させろ」と言うひともいるが、完成させたからといって目的が達成されるとは限らない。


A 氏は、H さんの上司である。H さんは優秀なプログラマだけど、ちょっと暴走がちなところがある。暴走といっても高速道路を逆走するのとは違って良識はあるのだが、一方通行の道を逆走して 150km でぶっ飛ばして、本線を走っていた乗用車の横に突っ込むぐらいの暴走ぐらいには良識がないのであった。国が違えばルールが違う。郷に入れば郷に従えというではないか。しかし、H さんは郷に従うタイプでもなかった。まあ、郷の国の人なのだから、


「いまさら、郷に従え、と言われても困りますよ」


と言いかねないのが H さんだった。


「しかしだね、この部分は仕様変更があって、「郷に従う」ことになっているんだよ」

「えー!、いつ頃変わったんですか?」

「先週の打ち合わせで変わったんだよ。もともと、郷とは違うところで動いていたのだけど、やっぱり郷に従わないと動かないってことで、結局、そこは仕様変更ってことになったんだよ。君、聞いていないの? 出席していたでしょう?」

「ええ、確かに出席はしていました」

「聞いてなかった? 居眠りしていたとか」

「いや、そんなことはないです。ちょっと、スマホでワニの画像を調べるぐらいの国会議員のようなことをやってはいましたが、国会議員のように居眠りはしていません。まあ、ちょっと、スマホを覗いて暇そうにしている国会議員のようなことはしていましたけど…」

「だめじゃないか、仕事中にスマホを持ってきちゃ」

「いや、仕事で使うスマホですから、スマホなしで仕事をするっていうのも今日び無理な話ですよ。ちょっとした資料も紙じゃなくて URL で渡されるわけですし。議事録のメモなんかもスマホでとったほうが楽じゃないですか」

「でもだよ、先日は機密情報の会議なんだから、スマホは禁止だろう。普通は」

「まあ、機密ってことで普通はスマホは禁止なんでしょうが、先日の場合はちょっと雰囲気が違いましたし、重要な会議だから忘れないでおこうと思って録音もしていたんです」

「え? 録音もしていたの? それはまずいよ。あの会議の資料は紙でも即日廃棄になるぐらいだし、メモすら取れなかったんだよ」

「まあ、メモ用紙の紙を配られて、それに鉛筆でメモをするよりは、スマホで録音してしまったほうがいいですよね。それに、スマホは禁止と言われたけど、スマホで録音は禁止とは言われていませんでした」

「いや、それは、屁理屈というものだろう。代議士の先生が出席していらっしゃるわけだから、録音はだめだろう。録音は。秘密の会議なんだし」

「え、でも、秘密の会議って看板には書いていなかったし。普通に、桜をめでる会、みたいな看板が立っていましたよ。よく覚えていないんですが」

「そこは、符丁みたいなものだよ。さりげない看板を出して、さりげない雰囲気で重要なことを決めるってのが大切なところじゃないか。そのあたり重々承知しておいて、忖度するってのが我々の役目だろう?」


A 氏は思った。

まったく、最近の若者ときたら屁理屈ばかり言ってどうしようもない。郷に従えと言われたらきっちりと郷に従うのが重要じゃないか。大きな目的を達成するためには、ちいさな手段の積み重ねが大切なところだ。綿密な手段の積み重ねが大切で、そのためには目的から慎重にブレークダウンをしないといけない。つまるところ、ウォーターフォール式に WBS(work breakdown structure)が必要になってくる。プロジェクトの目的を達成するには、さまざまなタスクが必要となってくる。それぞれの仕事を全うしなければいけない。

A 氏は話を続ける。


「それで、郷に従えのタスクだけど、どんな進捗なんだい?」

「ああ、それなんですけど、そのタスクはちょっとストップさせておいて、別の逃げの一手のタスクを走らせています」

「え? 別のタスクをやっているの。こまるなあ、それだと今週の進捗があがらないじゃないか」

「まあ、そうなんですが、でも、こっちのほうのタスクが重要なんです。これができあがらないとプロジェクトが頓挫してしまいそうですから」

「でも、あれだろう。郷に従えタスクができあがらないと、進捗は遅れるし、マイルストーンも達成できないから、プロジェクト全体が困るじゃないか」

「でも、ですね…」

「いや、でもも、鹿もないよ。ついでに言えば馬でないね。まさしく、いまは馬車馬のように働かないといけないし、馬車馬のようについていかないといけない時代だろう。そこに郷に従えプランが突っ込まれているのだから、ワークライフバランスとか言ってないでそれを捨て去るぐらいの努力が必要じゃないの?」

「いやあ、ワークライフバランスは大切ですよ。ライフがゼロになると、まったく動けなくなってしまうし、セーブポイントってのは重要じゃないですか。そうしないと韓国のようにテラバイトの個人情報がなくなってしまって途方に暮れてしまうかもしれませんよ。たとえですが」

「いや、たとえ、そのバランスとやらが崩れたとしても、目的を達成するのが重要じゃないか、目的を達成するためにはどんなにくだらなそうに見える手段だって、ひとつひとつ実行していかなければいけない。ネバーギブアップの精神だよ。ロックだよ。わかるかい?」

「ええ、そこの部分はわからなくもないんですが、ここでロックは関係ないんじゃないですか?」

「そこだ、そこ、君のいかんところは、手段と目的を取り違えてしまうところで、自分の目で見た範囲ですべてが分かるといってはいかんだろう。全体を見渡して判断を決めないといけない。いや、私だって全体を見えているわけではない。だからこそ、代議士先生のだね、意見を拝聴して、それに従って仕事をこなさなければいけないんだ。それこそが、わが社が成長するという目的を達成してだね、売り上げも伸ばす、顧客満足度を高めるってことだろう。会社の成長というものだよ。」

「あ、部長、演説のところすみませんが、YouTube が出ましたよ」


Z 代議士による収賄疑惑の発覚。Z 代議士はとある国家プロジェクトの重要なポストにいた利権と収賄の容疑が持ち上がっています。まだ、疑惑の段階ではありますが、Z 代議士が主導しているプロジェクトが立ち行かなくなると、プロジェクトにかかっている数十社の IT 会社に影響が及ぶでしょう。被害総額は数百億円の予想です。特捜部による捜査の途中ではありますが、被害の大きさは計り知れないものと想像されています…


A 氏は青ざめた。まさしく、郷に従えタスクのプロジェクトだったからだ。

H さんが言う。

「大丈夫ですよ。きっちりと代議士の発言は録音しておきましたし、うちの会社が被害に遭わないように、ちょこちょこと異論を唱えていたという証拠は積み重ねてきましたから」

「お、お前、目的をすり替えたな…」


【完】


元ネタ https://x.com/tomo_yuki2525/status/1976218581248639178 からのインスパイアです。


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