第六章:暗闇の中の息遣い
その乾いた「ザッ」という音は、まるで一本の針のようにヴェイナードの神経系をまっすぐに突き刺した。
オークの森で父の目を盗んで狩りをした経験から培われた生存本能が頭をもたげ、彼は素手で松明の火を湿った岩壁に押し付けて消した。
全てが濃密な闇に沈み、彼の世界は胸の中で激しく脈打つ心臓の鼓動と、洞窟の奥から響いてくる音だけになった。
それは動物の音ではなかった。知性を持つ生き物の、低く、かすかな唸り声だった。
彼は息を殺し、耳を澄ませ、規則正しく滴る水の音からその音を分離しようと試みた。
逃げるべきだと彼はわかっていた。ゴリンとの約束は、ただの苔一掴みのことだ。
自分の命はそれ以上の価値がある。しかし、別の衝動が、胸の中の破片から来る冷たい好奇心が、彼を引き留めた。
ここに何がいるのかを知らずに去ることは、次に戻ってくる時のための災いの種を蒔くことだった。
彼は岩壁に身をぴったりと押し付け、ほとんど音を立てない足取りで、微かな光が漏れてくる曲がり角へと進んだ。
近づくにつれて、汗と、古い血と、焼けた肉の強烈な悪臭が鼻を突き、彼は吐き気を催しそうになった。
彼は慎重に目を細めて覗き込んだ。
より大きな洞窟が広がっており、揺らめく焚き火によって照らされていた。
十数匹のゴブリンがそこにいた。しかしヴェイナードの背筋を凍らせたのは、その組織だった静けさだった。
彼らは騒がしく叫びはしなかった。数匹は骨のかけらをかじり、数匹は粗末な武器を研いでおり、そして継ぎ接ぎの革鎧を着た、より大きな一団が見張りに立っていた。
そして中央の、平らな岩の上には、ゴブリンのシャーマンがいた。
それは儀式を行っていた。その前には銀狼の死体があり、腹が切り開かれていた。
シャーマンは指を血だまりに浸し、ぞっとするような呪文を呟きながら、岩の上に汚い文字を描いていた。
その杖からの光が、全ての光景を病的な緑色に照らし出していた。
ヴェイナードは後ずさった。彼は恐ろしい事実に気づいた。彼の記憶の洞窟は、ただの巣穴ではなく、拠点だったのだ。
そして、彼にはあの苔が必要だった。皮肉なことに、最も瑞々しい銀光の苔は、洞窟のメインホールの奥の壁、ちょうど眠っている三匹のゴブリンの一団の真後ろに生えていた。
「ちくしょう」彼は心の中で悪態をついた。手ぶらで去ることは、鷹の羽根を失い、ゴリンとの約束を破ることを意味した。
最初の任務が失敗に終わる。彼は唇を噛み、無謀な決断を下した。
彼は深く息を吸い込み、破片の冷たさに恐怖を抑え込ませた。
彼は動き始めた。人間としてではなく、亡霊のように。
彼は一つ一つの岩の突起を、揺らめく炎が生み出す一つ一つの影を利用した。
一歩一歩が計算であり、音を最小限に抑えるために踵から先につま先を下ろした。
悪臭は強くなったが、それは彼の匂いを隠してもくれた。
眠っているゴブリンたちから数メートルのところまで来た時、そのうちの一匹が身じろぎした。
ヴェイナードはその場で凍りつき、心臓が止まるかと思った。しかし、それは寝返りを打って、またいびきをかき始めただけだった。
彼は壁にたどり着き、狩猟用のナイフを持つ手は、苔をそっと削り始めると、がたがたと震えた。
金属が石に擦れる音は、ごく小さいものだったが、この空間では雷鳴のように聞こえた。
苔を少しだけ袋に入れたところで、近くのゴブリンの一匹が突然起き上がった。
彼は見つかったわけではなく、単に用を足したくなっただけだった。
そいつはよろよろと立ち上がり、ヴェイナードが身を潜めている暗い隅へとまっすぐに向かってきた。
もはや逃げ道はない。
ゴブリンが用を足すために背を向けたその瞬間、ヴェイナードは飛びかかった。
これは綺麗な暗殺ではなかった。これは無言の格闘だった。
彼はありったけの力でその喉に腕を巻きつけ、もう片方の手で脇腹にナイフを突き立てた。
ゴブリンは思ったよりも強かった。それはもがき、その肘がヴェイナードの腹に強くめり込み、息を詰まらせた。
それは叫ぼうとしたが、音は彼の腕に阻まれ、ぞっとするような「ごぼっ」という音になっただけだった。
死の間際にもがく中、その足が岩壁に立てかけられていた錆びた盾に当たった。
ガキィン!
甲高い音が洞窟中に響き渡った。
全ての活動が即座に停止した。いびきも、武器を研ぐ音も、全てが止んだ。
ゴブリンのシャーマンは呟きをやめた。それはゆっくりと頭を上げた。
その杖からの緑色の光が闇を薙ぎ払い、そして恐怖の一瞬、それはヴェイナードがまだ痙攣している死体を押さえつけている暗い隅で止まり、まっすぐに照らし出した。
彼は息もできず、身動きもできず、心臓が破裂しそうだと感じた。
沈黙は一世紀にも感じられた。
やがて、シャーマンはただのネズミか何かだと判断したようだった。
それは自分の儀式に戻った。ヴェイナードは地獄から引き上げられたような気分だった。
しかし、隊長格と思われる、より大柄な見張りの一匹は、そう簡単には納得しなかった。
それは別のゴブリンに唸り声で命じた。「あの隅を確認してこい」
命じられたゴブリンは槍を手に取り、ヴェイナードの方へと進み始めた。
こいつには敵わないと彼はわかっていた。行かなければ。すぐに。
見張りの視線が岩の柱に遮られた隙を利用して、ヴェイナードはそっと死体を離した。
彼は走る勇気はなく、ただ闇の中を、苔の袋を固く握りしめながら一歩一歩後ずさった。
しかし、急ぐあまり、彼の踵が小石を踏んでしまった。
小石が転がり、「ころころ」という小さな音を立てた。
今回、シャーマンにもう疑いはなかった。
それは杖をまっすぐ彼に向け、甲高い、アーマン語の音を響かせた。
「侵入者だ!」
洞窟全体が爆発したかのようだった。ゴブリンたちは唸り声を上げ、武器を掴み、彼に向かって殺到した。
即座に、シャーマンはヴェイナードに向けて杖を構えた。
病的な緑色のエネルギー球が、空気を切り裂きながら飛んできた。
非現実的な一瞬、ヴェイナードの目には世界がスローモーションになったかのようだった。全ての音が遠のいた。
エネルギー球はもはやぼやけた光の筋ではなく、明確な実体だった。
彼はその正確な飛翔軌道を、それが押し出す空気の揺らぎまでも見ることができた。
唯一の逃げ道、左手にある二本の岩柱の間の狭い隙間が、まるでインクで描かれたかのように、彼の心にはっきりと浮かび上がった。
一瞬のためらいもなく、オークヘイブンでかつて爆発したあの、馴染みのある力が、胸の奥深くから湧き上がった。
彼はそれを制御するのではなく、ただ流れに身を任せた。
見えざる風が彼の足を包み、非合理的な加速で彼の体を前方へと押しやった。
彼は風の中の木の葉のように滑り、エネルギー球は肩をかすめ、背後の岩壁に当たって爆発し、焼け焦げた跡を残した。
彼は外へと続く唯一の通路である、狭い廊下に入り込むことができた。
背後では、ゴブリンの群れのどたどたという足音がますます近づいてくる。
この廊下は死地だが、同時に隘路でもあった。
ヴェイナードは盲目的に走らなかった。彼は突然立ち止まり、振り返り、安物の弓を構えた。
矢筒には三本の矢。慎重に狙う時間はない。
しかし、危機に瀕した彼の目は、異常なほどによく見えた。
彼は混沌とした群れではなく、一つの流れを見ていた。
先頭を走る、最も大柄なゴブリン。それが彼の生きる道を塞ぐ巨岩だった。
そいつが倒れれば、流れは滞る。
ヒュッ!最初の矢が放たれ、大柄なゴブリンの膝に深々と突き刺さった。
それは痛みに唸り声を上げ、前のめりに倒れた。
すぐ後ろを走っていた二匹は反応できず、仲間に躓いて折り重なるように倒れ、混沌とした肉の障害物を作り出した。
ヒュッ!二本目の矢が放たれ、その群れを乗り越えようとしているゴブリンを狙った。
矢はそいつの肩を滑ったが、バランスを崩させて後ろへ倒すには十分だった。
ヴェイナードは結果を待たず、振り返って走り続けた。
彼は貴重な数秒を稼いだのだ。
しかしその時、巨大な黒い影がその混沌を乗り越えてきた。
屈強な見張りの一匹が、怒りで血走った目で、仲間の死体を乗り越え、石斧を高く振りかざしながら恐ろしい速度で突進してきた。
距離は瞬く間に縮まった。
もはや逃げ道はない。ヴェイナードは振り返り、手の中の狩猟用ナイフを固く握りしめた。
木を両断するほどの力で、斧が振り下ろされた。
ヴェイナードはナイフで受け止めたが、ゴブリンの力はあまりにも大きかった。
ガキィン!
狩猟用のナイフは彼の手から弾き飛ばされた。斧の刃は、逸らされはしたものの、それでもヴェイナードの左肩に深い一撃を食らわせた。
焼けるような激痛が走った。骨にひびが入ったように感じた。
しかし、奇妙な粘り強さ、その骨髄の奥深くに眠る並外れた頑健さが、彼の体が崩れ落ちるのを防いだ。
痛みは消えなかったが、それは心の片隅へと追いやられ、彼を止めさせる命令ではなく、冷たい警告のようなものへと変わった。
ゴブリンは勝ち誇ったように唸り、とどめの一撃のために斧を振るった。
しかし、衝撃がヴェイナードを後方へ押しやっており、彼はその勢いを利用した。
彼は身をかがめ、そして再び、見えざる風が彼の足を包んだ。だが今度は、逃げるためではなかった。
それは、回転するためだった。彼は目も眩むほどの速さで体を回転させ、間一髪で斧の一撃をかわした。
巨体の脇をすり抜けるその瞬間、彼の右手は地面に落ちたばかりの狩猟用ナイフを掴んでいた。
無駄な動きは一切なく、彼は残された全ての力と最後の風の一吹きを、下から上への突きに込めた。
彼の目は、彼が届きうる唯一の弱点を見抜いていた。鎧で覆われていない、脇の下だ。
風によって加速されたナイフの先端は、ゴブリンの体に柄まで深く突き刺さった。
巨体は動きを止め、血走った目は驚きに見開かれ、そして轟音と共に倒れた。
ヴェイナードはナイフを引き抜いた。血と汗が混じり合っていた。
彼は、ゴブリンの群れが障害物を取り除き、殺到してくるのを聞くことができた。
彼は洞窟の入り口を見た。昼の光はわずか数十メートル先だ。
絶望の中、彼は頭を上げた。彼の目は全てを、敵ではなく、周囲の環境を薙ぎ払った。
そして彼はそれを見た。入り口の真上の天井から、何十もの大きな鍾乳石がぶら下がっていた。
狂気的な考えが閃いた。彼は弓を構え、最後の矢をつがえた。
左肩が悲鳴を上げて抗議したが、彼の意志が全てをねじ伏せた。
彼はゴブリンの群れを狙わなかった。彼は、最も大きな鍾乳石の、最も脆そうな接合点を狙った。
ヒュッ!
最後の矢が、彼の全ての希望を乗せて飛んでいった。
それは岩壁に当たり、小さな亀裂を生んだ。足りない。
しかしその時、最初のゴブリンの群れが追いついた。
何十という足が石の床を走るその振動が、とどめの一撃となった。
亀裂が広がった。バキッという音が響き、そして天井全体が崩れ始めた。
「グガアアアアア!」
ゴブリンたちの怒りと恐怖の咆哮が、彼の背後で響き渡った。
ヴェイナードは振り返らなかった。彼は力の限りを尽くして光へと走った。
巨大な岩が落ちてきて入り口を塞いだその瞬間、彼は洞窟の入り口から飛び出した。
土埃と小石が舞い上がった。ゴブリンたちの叫び声は遮られ、くぐもって遠のき、そして止んだ。
ヴェイナードは湿った地面に倒れ込み、胸を激しく上下させた。
左肩からの血は止まらず、服の一角を赤く染めていた。
彼はぜいぜいと息をし、口の中に鉄の味が広がった。
しかし、彼の右手は、まだ布袋を固く握りしめていた。
銀光の苔は、冷たく、そして無傷のまま、そこにあった。彼は生き延びたのだ。
名のあるスキルによってではなく、本能と、無謀さと、そしてその血脈に静かに流れる遺産によって。