第一章:畑に響く不協和音
湿った土の匂い。夕立の後の、清々しく生命力に満ちたその香りは、木の板の隙間から忍び込み、霊米特有の純粋で、少し土臭い香りと混じり合った。
それが、光が瞼に触れるよりも先に、ヴェイナードを呼び覚ます最初のものだった。
彼はしばらくじっと横たわり、静寂に耳を澄ませた。小さな屋根裏部屋には、自分自身の規則正しい寝息だけが響いていた。
目を開けると、唯一の窓枠が生き生きとした絵画に変わっていた。
東の空がちょうど薔薇色に染まり、その清らかな朝の光が、まだ深い眠りについている銀の湖の表面を薄紫色に染め上げていた。まるで、天地によって磨き上げられた巨大な鏡のように、湖面は静まり返っている。
ヴェイナードにとって、この十六年間、毎日はこのように始まった。
あまりに慣れ親しんだ平穏で、彼はもはやそれを意識することさえほとんどなかった。それは彼の呼吸の一部となっていた。
彼は身を起こし、木製ベッドの馴染みのある軋む音を感じた。
椅子の上には、ごわごわした布の服が彼を待っていた。
それを身に着けると、肌にその軽いざらつきを感じた。これから始まる一日の労働を思い出させる、現実的な感覚だった。
階下の家へ下りると、そこは空気がより暖かく、かまどの煙の匂いがした。エルムスワース氏がすでにそこにいて、そのがっしりとした姿が壁に影を落としていた。
テーブルの上には、こんがりと焼かれたパン一切れと、湯気の立つ温かいミルクの入ったカップがすでに置かれていた。
「腹を温めるために食べなさい、ヴェイナード」と、彼は言った。その声は、彼自身の人柄のように、低く温かく、そして優しかった。「今日はわしとお前で、西側の畝に霊草の灰をもっと撒かなければならん。昨夜は大雨だったから、土にもっと栄養が必要だ」
ヴェイナードは頷き、静かに腰を下ろした。ミルクのカップからの温もりが、彼の手のひらに伝わった。
彼はいつも、この男性に対して、目に見えない借りがあるように感じていた。彼が赤ん坊だった頃、湖のほとりで彼を見つけてくれた人。
彼は彼に家を与え、名前を与え、そして人生を与えてくれた。
その借りのせいで、彼は重い農作業について一度も文句を言ったことがなかった。
それどころか、たこだらけの手が土に触れると、彼は奇妙な繋がりを感じ、彼とこの土地との間に静かなエネルギーの流れを感じることさえあった。
畑に出ると、空気は清々しく、ひんやりとしていた。ヴェイナードが先に立ち、重い霊草の灰の袋を肩に担いでいた。
その重さは、彼のような痩せた少年をうなだれさせるはずだったが、それはただ慣れ親しんだ筋肉の張りをもたらすだけであり、彼の体はそれに耐えることに慣れているようだった。
彼は一度、村の中央にある古い樫の木の最も高い枝から滑り落ちたことを思い出した。
皆は恐怖に叫んだ。あらゆる事故を見てきた鍛冶屋のボリンでさえ、「牛でも足を折るほどの」転落だと断言した。
しかし、彼はしばらくそこに呆然と横たわった後、数か所の打撲だけで自力で立ち上がったのだ。
村人たちは囁き合い、彼は銀の湖の神に守られているのだと言った。
彼はただ、運が良かっただけだと思った。
彼らは青々とした霊米の田を通り過ぎた。雨の後、稲は力強く立ち上がり、朝日にきらきらと輝いていた。
すべてが調和し、すべてが本来の秩序の中にあった。しかし、その時…
「待ってください、父さん」ヴェイナードは突然立ち止まった。漠然とした不安感が背筋をぞっとさせた。
彼はそっと灰の袋を地面に置いた。その音は湿った草に飲み込まれた。
彼は目を細め、そう遠くない一画の田んぼに意識を集中させた。
見たところ、そこには何の違いもなかった。
エルムスワース氏が歩み寄り、たこだらけの手を彼の肩に置いた。
「どうした、息子よ?わしには何も見えんが。稲は青々と育っているではないか?」
「いいえ」ヴェイナードは首を振った。奇妙な確信が心の中でますます大きくなり、自分自身の疑念さえも打ち消していった。「よく見てください」彼は指をさした。「あの稲の育ち方が…おかしい。稲の列に乱れがある。肉眼ではほとんど見えない、秩序の乱れが。まるで…まるで何かが下から栄養を吸い取っていて、稲が混乱しながらも必死に伸びようとしているかのようです」
どうしてそんなことがわかるのか、彼自身にもわからなかった。ただ、それを感じ取ったのだ。
まるで、彼が畑という馴染み深い交響曲を聴いていて、まさしくその一画で、何人かの楽団員が音を外して演奏しているかのようだった。
天地の偉大な調和の中で、彼だけに聞こえる、か細く耳障りな不協和音。
エルムスワース氏はしばらく息子を見つめていた。普段は土を見、空を見て天気を読む彼の目が、今やヴェイナードの眼差しの中にある確信を見抜こうとしていた。
彼は現実的な人間だったが、ヴェイナードのこともよく知っていた。
この子は嘘をついたことがなく、また、植物や天気に関する彼の奇妙な「感じ」が外れることもめったになかった。
「わかった」エルムスワース氏はついに口を開き、その溜息は朝の風に溶け込んだ。「行ってみよう」
親子は共にその田んぼの方へ歩いて行った。
近づくと、エルムスワース氏は身をかがめ、その経験豊かな目で一本一本の稲を丹念に調べた。
彼は青々とした葉をかき分け、その色を観察した。
やはり、生命力に満ちた深い緑色だった。
一方、ヴェイナードはひざまずき、目を閉じて、右の手のひらをそっと湿った土の上に乗せた。
彼は静かに、手のひらの感覚に全神経を集中させた。
そして彼はそれを感じ取った。表土のひんやりとした感触の下に、冷たい領域が、奇妙な空虚さが存在していた。
それは生命が吸い尽くされた冷たさであり、まるでインクの染みのように静かに広がる死の領域だった。
「わしには何も見えんが」しばらくしてエルムスワース氏は言い、試しに稲を一本引き抜いた。
その根は真っ白で、完全に健康だった。
ヴェイナードは目を開け、手を土から離した。あの冷たさはまだ彼の肌に残っているようだった。
「もっと深いです、父さん。何かが…空っぽなんです。この土地は下から死につつあります」
「死」という言葉を聞いて、エルムスワース氏は眉をひそめた。まだ疑念はあったが、彼はその頑丈な指で、ヴェイナードが触れたばかりの土を深く掘り始めた。
土はふかふかで柔らかかった。彼は絡み合った稲の根をかき分け、さらに深くへと掘り進んだ。
そして、彼の指先が硬いものに触れた。
石ではなかった。石には馴染みのあるざらつきがある。
この物体は、奇妙なほど滑らかな表面を持っていた。
好奇心に駆られ、彼は両手で周りの土を掘り、ゆっくりとそれを地中から引きずり出した。
それは大人の手のひら半分ほどの大きさの、漆黒の破片だった。
その表面は一切の光を反射せず、まるで降り注ぐ全ての日差しを飲み込んでいるかのようだった。
エルムスワース氏がそれを手に取ると、身を切るような冷たさが即座に彼の肌を伝わった。
エルムスワース氏は呆然とした。彼の生涯の経験をもってしても、これが何であるか説明できなかった。
彼は顔を上げ、ヴェイナードを見た。その瞬間、父親の目にあった疑念は完全に消え去り、その代わりに深い不安が宿っていた。
少年は正しかった。畑の交響曲には、不協和音が存在していた。
そして今、彼はその耳障りな音を、自分の手のひらに握りしめていた。
第一章の二:地中の破片
静寂が親子を包み込んだ。それは、朝の穏やかな静けさとは全く異なる、重苦しいものだった。
風は相変わらず霊米の畑をそっと撫で、馴染み深い囁き声のような音を立てていたが、今や彼らにとって、それは息を殺しているかのようだった。
生命のあらゆる音が後退し、エルムスワース氏の手の上にある奇妙な物体の存在に場所を譲ったようだった。
エルムスワース氏はその破片から目を離さなかった。その冷たさはまだ静かに広がり続けており、その不自然な冷気は彼の指の関節を麻痺させた。
彼はそれを裏返した。片面は黒いガラスのように滑らかで、もう片面はずっと大きな物体から砕け散ったかのように、ざらざらとしていた。
どれほどの時間、土の中にあったのかわからないにもかかわらず、傷一つなく、腐食の兆候もなかった。
しばらくして、彼は断固とした行動に出た。
彼は慎重に破片を乾いた草の上に置き、それから霊草の灰の袋から布切れを一枚引き裂いた。
彼はその布で物体を念入りに包み、まるでその冷たさと異常さを封じ込めようとするかのように、何重にも巻いた。
「家に戻るぞ」と、彼は言った。その声は低く、かすれていた。
彼はヴェイナードを見なかったが、これが提案ではないことを少年は知っていた。
彼は習慣で灰の袋を肩に担いだが、すぐにまたそれを下ろした。
今日の一日は、もう終わったのだ。
ヴェイナードは静かに頷いた。彼は何も聞かなかった。
彼は養父の心の中の動揺を感じ取っていた。それは、彼が樫の木から落ちたのを見た時よりも、ずっと大きな動揺だった。
これは幸運でも不運でもない。これは全くの異物、侵入だった。
家への帰り道は、いつもより長く感じられた。日はすでに高く昇っていたが、親子は共に目に見えない悪寒を感じていた。
エルムスワース氏が先に歩き、片手で布包みを固く握りしめていた。いつものしっかりとした足取りに、今は少し焦りが混じっていた。
ヴェイナードは後に続き、父の手にある、畑の「秩序の乱れ」が包み込まれたその布包みから目を離さなかった。
馴染み深い木の家に戻っても、緊張した空気は少しも和らがなかった。
テーブルの上には食べかけの朝食が残っており、ヴェイナードのミルクのカップはすっかり冷え切っていた。
エルムスワース氏は布包みをテーブルの中央に置いた。それはそこに、静かな塊として横たわっていたが、全ての注目の中心だった。
彼は慎重に布を一枚一枚開いていった。家の中の光の下で、黒い破片は一層奇妙に見えた。
それはランプの光も窓枠も反射しなかった。
まるで、全てを飲み込む小さなブラックホールのようだった。
エルムスワース氏は台所へ行き、果物の皮をむくのにいつも使っている小さなナイフを取り出した。
彼はナイフの先端を破片の滑らかな表面に当て、軽く削ろうと試みた。
「キィッ」という耳障りな音が響いた。彼がナイフを持ち上げると、良質な鋼鉄製の刃先が小さく欠けていたが、破片の表面には傷一つなかった。
彼の心は重く沈んだ。彼はヴェイナードの方を見た。息子が安全な距離を保ち、複雑な表情で破片を見つめているのが見えた。
「これは、ここのものじゃない」ヴェイナードはほとんど自分自身に言い聞かせるように、そっと言った。
「石でもないし、金属でもない。そのエネルギーは…終わりのエネルギーだ」
エルムスワース氏は深く息を吸った。彼は農夫だった。
彼の世界は木であり、土であり、作物だった。
ナイフで傷つけることのできない物体や、「終わりのエネルギー」については何も知らなかった。
彼は自身の理解の限界に達していた。
そして、人が限界に達した時、彼らは先人たちの知恵を必要とする。
彼は決然と立ち上がり、もう一度破片を包んだ。今度はさらに慎重に。
「これをケレン村長に見せなければならん」と彼は言った。その声はすでに落ち着きを取り戻していた。「あの方は、この土地の歴史について、我々よりも多くのことをご存知だ」
彼はヴェイナードを見た。その眼差しは厳格だったが、庇護に満ちていた。
「お前は家にいろ。朝食を済ませてしまいなさい。この件は、大人が何とかする」
そう言うと、彼は少しも躊躇せず、布包みを手に取って素早くドアから出て行き、オークヘイブンの中心にある村長の大きな家へと向かった。
ヴェイナードは一人、家の中に立ち、父の姿が遠ざかっていくのを見送った。
父の言いつけがまだ耳に残っていたが、彼は、これがただの大人だけの問題ではないことを知っていた。
この土地を傷つけることができるものは何であれ、それは彼自身を傷つけるものでもあった。
ケレン村長の家は、オークヘイブンの心臓である古い樫の木の木陰に建っていた。
家の中は、古い木材と乾燥した薬草、そして使い古された革表紙の本の匂いが充満していた。
ケレン氏は、霜のような白髪と、時の皺が深く刻まれた両手を持ち、エルムスワース氏がテーブルに置いた布に包まれた物体を注意深く見つめていた。
エルムスワース氏の顔にあった決意は次第に消え、老いた村長が慎重に布包みを開いていく間、緊張した待ち遠しさに変わっていった。
目に見えない冷気が、再び部屋中に広がったようだった。
ケレン氏は破片には触れなかった。彼はただそれを見ていた。幾度もの不作、幾度もの破壊的な嵐を見てきた彼の老いた目が、今は細められていた。
彼は長い間沈黙していた。エルムスワース氏がそわそわし始めるほど長かった。
「わしはこのオークヘイブンで八十六年生きてきた」と、ついにケレン氏は口を開いた。その声はかすれ、ゆっくりとしていた。「この土地に関するすべての記録を読み、ギルドの商人や冒険者たちのあらゆる話を聞いてきた。しかし、これだけは…」彼は首を振った。
「…見たことも、聞いたこともない。これはここのものではない、エルムスワースよ。その存在は、土地に対する侮辱だ」
明確な解決策は示されなかった。ただの警告だけだった。
現実的な男であるエルムスワース氏は、恐怖よりも戸惑いを感じた。
彼は理解できない敵と戦うことはできなかった。
彼は村長の助言に従うことに決めた:慎重に行動すること。
その夜、彼は破片の入った樫の木箱を、地下室の一番奥まった隅、リンゴ酒の樽や古いジャガイモの袋の後ろに隠した。
彼はもう少し考えよう、いつか適当な日に、これを遠くへ持って行こうと自分に言い聞かせた。
彼は問題を埋めていた。時間が答えを与えてくれることを願って。
そして、時はただ過ぎていった。
最初の数週間は、緊張した沈黙の中で過ぎ去った。
何かを取りに地下室に下りるたびに、エルムスワース氏は意図的にその暗い隅を見ないようにした。
しかし、彼はまだその存在を感じていた。まるで心の中に刺さった見えない棘のようだった。
ヴェイナードもまた変化を感じていた。彼らの家は少し温かみを失ったようで、時々、地下室の暗闇の中から誰かに見られているような気がした。もちろん、下には誰もいないことはわかっていたが。
しかし、何も悪いことは起こらなかった。太陽はまだ昇り、湖面はまだ静まり返っていた。
日々の暮らしの心配事が、徐々に漠然とした恐怖を覆い隠していった。
壊れた柵を修理しなければならず、来るべき収穫の準備をしなければならなかった。
エルムスワース氏は、人が夜明けと共に悪夢を振り払おうとするように、その木箱と秘密を心の片隅に押しやろうとした。
しかし、それはまだそこにあった。見えない棘として。
やがて霊米の収穫の季節がやってきた。オークヘイブン村全体が収穫祭の賑やかな雰囲気に包まれた。
笑い声、牛車のきしむ音、脱穀される稲の束の音が至る所で響き渡った。
ただエルムスワース家の農場だけが、異様な静けさに包まれていた。
彼らの田んぼ、特に家に近い区画は、見たところまだ青々と茂っていた。
しかし収穫してみると、最も経験豊富な農夫たちでさえ首を振るしかなかった。
稲の茎は奇妙なほど硬く強靭だったが、中の米粒は小さく軽く、霊米本来のふっくらとした艶やかさが欠けていた。
その年のエルムスワース家の収穫は不作だった。
それは大惨事ではなかったが、重い失望だった。
親切な隣人たちはエルムスワース氏の肩を叩き、「土地にも休息が必要だ」と言ったが、彼は、問題が土地にあるのではないことを知っていた。
彼が埋めようとした恐怖が、以前よりも冷たく、そして鮮明に蘇ってきた。
冬がオークヘイブンに訪れ、北からの凍えるような風を運んできた。
その寒さと共に、憂鬱な雰囲気が村を覆い尽くしたようだった。
家畜が病気になり始めた。重病ではなかったが、痩せ衰え、元気がなくなり、食欲をなくしていった。
猟師たちは森から不機嫌な顔で戻ってきた。彼らは森が「死んでいる」と言った。
鳥のさえずりはもはや聞こえず、鹿や猪の足跡はますます稀になっていった。
時折、彼らは傷一つなく死んでいる動物の死体を見つけた。体はまるで生命を吸い尽くされたかのように、ただ干からびていた。
銀狼の群れの遠吠えは夜にまだ響いていたが、もはやそれは雄壮ではなかった。
彼らの遠吠えは悲しげで、途切れ途切れで、絶望と名状しがたい苦痛が混じっていた。
オークヘイブンの誰一人として、それらの出来事を結びつけることはできなかった。
彼らが知っていたのは、それがひどい冬だということだけだった。
そして、ヴェイナードはその変化を最もはっきりと感じ取っていた人物だった。
彼はより無口になり、しばしば一人で何時間も湖のほとりに座り、灰色の水面を眺めていた。
彼は不眠に悩まされ、もし眠れたとしても、恐ろしいほど静かな漆黒の空間の奇妙な夢を見た。
目に見えない冷気が彼の骨髄に根を張ったようで、彼は常に孤独を感じていた。
こうして、オークヘイブンの生命は、誰にも見えない病原菌によって、地下室の下に埋められ、半年もの間忘れ去られていた秘密によって、ゆっくりと、静かに蝕まれていった。
そして、静かな腐敗の長い冬の後、春の最後の満月の夜がやってきた。
その夜、月は満月で、銀の湖の上に巨大で無表情な銀色の目玉のように浮かんでいた。
その光は暖かくなく、冷たく、鋭く、木々や家々の真っ黒で長い影を描き出していた。
不自然な静寂がオークヘイブンを覆っていた。
虫の鳴き声もなく、木の葉を揺らす風の音もなかった。
村全体が息を殺し、誰も名付けることのできない何かを待っているかのようだった。
屋根裏部屋で、ヴェイナードはどうしても眠れなかった。彼はその耳障りなほどの静寂に耳を澄ませていた。不安感が岩のように胸に重くのしかかっていた。
彼は窓の外の世界全体が自分を観察し、待っているような気がした。
そして、静寂は破られた。
遠吠えによってではない。村の端にいる羊たちのパニックに満ちた鳴き声の連続、それに続く犬の狂ったような吠え声、そして突然の沈黙によって。
短い、死のような間。
そして、地獄の扉が開かれた。木こりの家から恐ろしい絶叫が響き渡り、それに続いて木が砕ける音と、何十匹もの怪物の野蛮な唸り声が聞こえた。
オークヘイブンは炎と混乱の海に沈んだ。
エルムスワース氏はヴェイナードのそばにいた。斧を手に。
彼の温和な顔は今やこわばり、外から差し込む揺らめく松明の光に照らし出されていた。
「ここから出るな!」と彼は命じた。その声はひどくかすれていた。
しかし、ドアの隙間から、ヴェイナードは繰り広げられている悪夢を見ることができた。
彼は鍛冶屋のボリンがハンマーを振り回し、一匹の狼の頭蓋骨を粉々に砕くのを見たが、すぐに別の一匹が彼の足に食らいついた。
彼は隣人たち、毎日会う馴染み深い顔が、戦い、倒れていくのを見た。
銀月狼の群れはもはや森の誇り高き獣ではなかった。
彼らは骨と皮ばかりに痩せこけた抜け殻であり、内側からのエネルギーへの渇望に蝕まれ、その真っ赤な目は石炭のように燃え、ただ空虚さと病的な渇望を映し出していた。
「ドォォン!」という激しい音で家全体が揺れた。奴らは彼らの家を攻撃していた。
エルムスワース氏は一言も発さなかった。彼はヴェイナードを深く見つめ、そして振り返り、ドアを勢いよく開けて暗闇の中へと飛び込んでいった。
彼は戦士ではなかったが、今夜、彼は家族を守る父親だった。
彼の手にある斧は鋼鉄の竜巻と化した。
彼に技術はなかった。ただ、農夫の両腕から生み出される純粋な力と、憎しみだけがあった。
斧の刃が振り下ろされ、一匹の狼の肩に深く食い込んだ。
彼はそれを引き抜き、黒い血が飛び散り、そして身をひるがえし、突進してくる別の一匹の鼻面に斧の柄を叩きつけた。
彼は吠えた。追いつめられた温和な男の咆哮は、狼の遠吠えよりも恐ろしかった。
彼は戦いながら、地下室の方へと後退していった。血と汗が彼の顔を流れ落ちた。
そして、戦いの最中、彼はそれを見た。一匹の狼が、彼に飛びかかる代わりに立ち止まり、地下室のドアに向かって鼻をクンクンと鳴らし、その真っ赤な目に病的な貪欲さが光った。
一瞬にして、エルムスワース氏は全てを理解した。箱。破片。彼の過ち。
「ヴェイナード!」彼は絶望にかすれた声で叫んだ。「箱だ!地下室にある!それを持ってこい!」
ヴェイナードは地下室に駆け下り、暗闇の中でつまずき、そして冷たい木箱を見つけた。
彼がそれを持って上がると、父が包囲されているのが見えた。
「湖へ走れ!それを湖に投げ込め!」エルムスワース氏は唸り、斧を振るってわずかな空間を作り出した。
「わしが奴らを食い止める!」
それは自殺命令だった。ヴェイナードはそれを知っていた。彼は立ち尽くし、麻痺していた。
「行け!」エルムスワース氏は叫び、彼の目をまっすぐに見つめた。
その眼差しには命令だけでなく、懇願もあった。生き延びろ、と。
ヴェイナードは養父が倒れるのを目撃し、狼の群れと対峙していた。
彼はまだ、砕け散った木箱に入った破片を握りしめていた。
リーダーらしき狼が進み出た。その鼻先にはまだ父の血が付着していた。
ぞっとするほどの静寂がヴェイナードを包んだ。
戦いの音、叫び声、炎の燃える音…全てが消え去った。
ただ、彼の胸の中で激しく脈打つ鼓動だけが残っていた。
彼は父の動かない体を見つめ、それから目の前の怪物を見た。
彼の内なる痛みと憤怒は、冷たく、鋭利な何かに凝縮された。
絶望の中、彼は血が滲むほど唇を固く噛みしめ、その塩辛い味が口の中に広がった。
彼は手の中の砕けた木箱を強く握りしめた。最後に残されたものにすがる無意識の行動だった。
一滴の真っ赤な血が彼の唇から滴り落ち、箱の割れ目を通り抜け、中にある闇の破片の漆黒の表面に触れた。
即座に、信じがたいことが起こった。
破片はもはや沈黙していなかった。それは「目覚めた」。
光の欠如ではなく、生きた闇である漆黒の光の流れが、血の滴が触れた場所から広がり始めた。
それは霧のように消えるのではなく、砕けた木片を通してヴェイナードの肉体を「侵食」した。
「ああああああっ!」
ヴェイナードは叫んだ。今度は憤怒からではなく、想像を絶する痛みからだった。
彼は何千もの見えない氷の根が、手を通して自分の体に入り込み、骨髄に深く突き刺さり、彼の魂に絡みついているのを感じた。
冬よりも冷たい冷気、夜よりも濃い闇が、彼の体を強奪していた。
リーダーの狼はその変化に気づいた。
それは唸り声を上げて突進し、何かより悪いことが起こる前に獲物を仕留めようとした。
しかし、遅すぎた。ヴェイナードの血脈と感情によって解放された虚無のエネルギーは、弱い肉体に収まりきるものではなかった。
それは出口を必要としていた。そして、それは彼の生来の風の元素という出口を見つけた。
ヴェイナードは顔を上げ、その目は大きく見開かれ、空虚だった。
彼の喉から、言葉にならない叫びが発せられた。
小さな嵐、何千もの見えない風の刃の竜巻が、彼の手の中の破片そのものから「爆発し」、彼の体を震源地とした。
空気が引き裂かれた。リーダーの狼は空中で無数の肉片に引き裂かれた。
他の狼たちは風の刃に皮膚を深く切り裂かれ、ぼろぼろの人形のように吹き飛ばされた。
数秒で、すべてが終わった。
包囲網は消え、ヴェイナードが中心にひざまずく完璧な円の中に、ずたずたの死体が残されただけだった。
彼はぜいぜいと息をし、鼻と口から血を流していた。
その力は彼の体を内側から破壊していた。
彼はよろめきながら自分の手を見下ろした。木箱は細かい粉になっていた。
闇の破片は消えていた。ただ、血管のような黒い紋様がゆっくりと彼の皮膚に沈み込み、そして消えていった。
彼は自分の一部が死に、そして彼の心臓があった場所に、冷たく、古く、空っぽな「穴」が生まれたのを感じた。
彼は父の亡骸のそばに倒れ込み、意識を失った。もはやただの孤児ではなく、禁断の遺産の器となっていた。
空の上で、月はまだ満月であり、冷ややかにすべてを目撃していた。