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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

限界集落

作者: HORA

限界集落。若者の流出が(いちじる)しく65歳以上の高齢者が半数以上を占めており、収入や活動が地域として回らない状態を指す。


某村(ぼうむら)。県としては重要な市同士を結ぶ道沿いにあるその村も限界集落であった。コンビニは1件あるものの地元住民が利用することはほとんど無い。その村に暮らす多くの年金生活の年配の人達にはコンビニの商品は値が高く手が出せない。隣の市や、都会へ若者が流出し続け、町で一番若い人は40台後半に。人手のかかる作業や行事が行なえず、老人の孤独死などの問題も増え始めた。


その村に新しい風を入れようと移住プロジェクトが組まれる。

【先着順!子供のいる5組までの家族が対象!引っ越してから5年間は家賃が無料!仕事もリタイアした老人の農作業を引き継いで行えるので、ノウハウや農機具なども揃っており未経験でも大丈夫!更に本決まりとなれば県から50万円が支給!】

ネット上や、チラシで近隣県や大都市に周知するようにしたものの、2年間で1件の応募・問い合わせすら無かった。もうそろそろ文字通り限界を迎えるという段階で移住プロジェクトに待望の応募があった。それも一気に5組も。


都会から越してきた5組の夫婦は高校からの知り合い。SNS上でその移住プロジェクトを知り、その5組の夫婦は皆で相談の上で申し込んできた。その夫婦5組10人は高校では農業を専攻していたということで農作業では即戦力。ただし、その夫婦5組の子は全員が一人っ子で小学5年生の女児であった。将来的に5人の女の子は結婚して別の地域に嫁いでいってしまうという懸念はあったが、県と村としては近々(きんきん)のトラブルの解消の方が重要であったので快く受け入れたのだ。


村の集まりでも一部の村民からは「問題の先延ばしだ」なんて声も出たのだが、それらの意見はものの数日で聞こえなくなる。


七海美心(ななみみここ)

加賀見(かがみ)美鈴(みすず)

野々間茉由優(ののままゆゆ)

大笹(おおささ)良々(らら)

飯州(いいす)(すもも)


5人の女の子があっという間に村のマスコットになったのである。仲の良い5人の美少女達はいつも一緒に居て、村のお爺ちゃんとお婆ちゃんに積極的に話しかけてすぐに仲良くなる。都会の子は不愛想で挨拶もしないなんて先入観はあっという間に老人達からは消えさった。いつも5人笑顔で楽しそうに村を行く若人(わこうど)達に老人達は癒され、虜にされたのだ。朝の登校時にはその5人に「いってらっしゃい」と言いたいがために朝早くから外に出て待機している老人たち。夕方も同様に。である。

5人はアイドルのように村の話題を独占することになった。


その両親である夫婦5組10人も積極的に働き、集まりや役割もしっかり(まっと)うし村を助けた。結果として移住プロジェクトは大成功を収めたのである。


5人の美少女は学校でもその話題を独占する。村には学校が無いのでバスで30分程離れた隣の町へ向かう。1クラスしかない小学5年生。そこに都会から来た5人の美少女が編入。学校中の児童が休み時間の度に見学に訪れる程であった。それどころか近隣の小学校や、中学校からも見物人が多く訪れる程の珍事。村以外の場所にも思わぬ波を起こした。


都会からやってきた5人の女児。きっと勉強だけできて腕立て伏せの1回もできないような、、、という田舎っ子が考える先入観も綺麗に打ち砕いた。5人は活発で運動能力はその小学校内でもずば抜けておりTOP5を独占。しかし、勉強はからっきしであると言った面は良い意味で隙があり、更に人懐っこいという事もあってあっという間に教師も含めて学校の全員と仲良くなった。県内に留まらず他県でもこの事例はモデルケースとなり各地で同様の移住プロジェクトが企画される事となったのだ。


5人の夢は芸術家になる事だそうで、アート作品を5人で。時には5人で競争し、時には協力して作って、メノレ力リというフリマサイトで売りまくるのだと馬鹿みたいな夢を小学校の卒業文集に書いていた。お世辞にも図画工作での授業中の作品や成績を見る限り無理そうではある。


そして移住から十年が経ち、、、


話題の美少女5人は立派な5人の美女芸術家…を語るプチニートへと育っていた。村のお爺ちゃんお婆ちゃんが甘やかしすぎたのだ。…だが不満をもらすものはいない。村のお爺ちゃんお婆ちゃんはもちろんの事、両親や村の動向を見守る市、県からも美少女5人の活動は評価されている。彼女達は多感な時期を過ごした村の中で美術作品を多く生み出し5人の個展を開くことに成功した。村の公民館とその隣に新たに用意させた屋根の高い施設を貸し切り、また屋外にも大きなモニュメントを多数展示して、村そのものを芸術作品に囲まれた空間にしたのだ。村のお爺ちゃんお婆ちゃんの年金が多く引っ張られてはいるが5人が騙し取った訳でも無いし、老人達はとても幸せそうなので良しとしておこう。


20歳になった5人の女性は現在なおも仲良く、小学校からの夢を叶え芸術家として村のアピールに貢献してくれていた。5人の名前は後世に至るまでずっと語り継がれるであろう。





犯罪者として。



「ねぇ。茉由優(まゆゆ)。ヒロヒコお爺ね、体を提供してくれるって。」

「え?美心(みここ)マジ??ヒロヒコお爺って身長高めだから高さを出したいop.(オーパス)32にはマストだったんだよね。」

「いいな~。…ねぇ良々(らら)。フミ婆さんの加工って進んでる?op.(オーパス)28の所に飾るさぁ。」

「うん。(すもも)に言われた通りに膨らませてあるよ。薬剤の注文も済んでるし順調、順調~」

美鈴(みすず)は独りで進めてるんだよね。どう??村を一周させられそう?op.(オーパス)24はある意味、目玉だからね~。手が必要なら言ってね。」


彼女達は村のあちこちに加工した遺体を展示していた。高さ30mにされたもの。完全な球体にされたもの。数百mのロープ状にされ村を1周囲うもの。重力に逆らうように糸の張力で浮かされたもの。本棚に加工されたもの。ブランコに加工されたもの。自転車に加工されたもの。看板に加工されたもの。遺体一体に対して、一作品という(こだわ)り。頭部は加工せずに防腐処理だけして見る人が認識できるようにしたのも(こだわ)り。


彼女たちは村人の死を待ちわびていた。当初は亡くなるのを今か今かと待っていた5人であったが、後年では5人で協力し積極的に人の生を作品へと昇華させるようになる。彼女達は作品番号をop(オーパス)と呼び、op.(オーパス)20を越えた頃から素材こと遺体を自ら用意するようになる。op.(オーパス)150を越えたところで5人は警察に捕まった。裁判も中ほどにして遺体がそこら中に散らばる村は廃村の()き目に()う。だが奇しくも美女5人の過去に前例の無い程の凶悪な犯行は全国で話題となり取材記者や観光客がひっきりなしにその村へ訪れていた。


最高裁判決で死罪判決を言い渡された彼女達の死体は、

いつどこで荼毘(だび)に付され、

無縁仏として埋葬されたのかは、


誰も知らない。

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