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 5月21日 ワタクシとヒゲのお絵描き(2.6k)

は【画家】だったのだ」


 色鉛筆と画板で絵を描いたロイが、また良く分からないことを言いだした。

 でも描かれた絵は上手だ。

 船のようだけど私の知っている船とは少し違う。


「確かに上手ね。でもこれはどんな船なの?」

「【帆船】だ。風の力で外洋を航行できる。まぁちょっと古い船だな」


「じゃぁ、新しい船ってどんなのがあるの?」

「いろんなのがあるぞ。描いてやろう。画用紙の残りはどこだ?」


「ロイの絵は見たいけど、紙がもう無いみたい」

「ヤー……それは残念だな」


 本当に残念だ。色鉛筆や画用紙は私が絵を描くために神社に置いてあったので大半が燃えていた。


「あ、でも、【貢物みつぎもの】が来たわ。村の入口近くの坂で止まってる」


 世界を見通す力のおかげで周りで起きていることが何となくわかる。

 トラックで来たけど山道が狭くてこれ以上近づけないみたいだ。


「そうか! ならばがしっかりと【横取り】するとしよう」

「【横取り】よろしくねー」


 ロイは意気揚々と【貢物みつぎもの】を横取りに行った。

 

…………


 しばらくしてロイは台車で大きめの木箱を運んできた。


「フラー、今日の【横取り】は大漁だ。全部は揃っていないそうだが、主に食べ物を先に寄越したらしい」

「いいわね。いいわね。食べ物の【横取り】なんて、ロイは最高よ」


 台車から降ろして座敷席の前に置いた木箱をロイが【バールのようなもの】で開梱する。

 

「今夜は宴だ」

「いいわね。いいわね」


 木箱の上蓋が開いて一番上に入っていた物を見て【何か】が沸騰するのを感じた。


 【ロングスカートの白いウェディングドレス】

 【装飾付き厚底ブーツ】


 ここまで激しい【怒り】を感じたのは生まれて初めてだ。



「イブよ! どうだ、が【横取り】したこの【袖付き寝袋】は!」

「コレの何処が寝袋なのよ! それに、こんな生地じゃ、動き回ったらすぐにボロボロになるじゃない!」


「だからこそ【寝袋】なのだ! 今日はもう動かずに寝るという時だけ着るのだ」

「わざわざ着替える意味が分からないわ!」


「イブはいつもそのメイド服で寝ているが、イイ女は寝るときの衣装にもこだわるものだ。肌触りの良いこの素材なら、より安眠できるだろう」


 そう言われると、確かにこれに包まって寝たら気持ちよさそうではある。

 今夜試してみよう。


「じゃぁ、こっちの【装飾付き厚底ブーツ】は何なの? どう見ても私には履けないけど」


 今の私は両脚が無い。あのアホに斬られた。

 それ以前に、このブーツは外洋人の足の形に合わせてあるから元の私の脚では履けない。


「ヤー……。それはな……。そうだ! 【前足】に履くものだ!」

「前足?」


「良いかイブ。人間の祖先は獣だ。彼等は四本足で歩いていた。人間の両手は、元は前足だったのだ」


 確かに。私達【獣人】は普通に二足歩行してるけど、祖先は四足獣だったというから、手を前足として使うのは間違ってないのかもしれない。

 ロイはもしかして、私の事をよくわかってくれているのかも。


「イブは後足を失っておるからな、だから、こう、前足で歩くという移動手段の可能性があると思ったが、そうだな、女性の手を土で汚すのは紳士ではないので、ヤー……、前足に履く靴というのをだな……」


 ロイの言うとおりだ。

 脚が無いからと座敷席の上で這って動いていたけど、床に手は届くんだから両手を【前足】にして靴を履いたらそれで外を動けるかもしれない。


「ありがとうロイ。なんかできそうな気がしてきたわ」

「ヤー……そうか。それはよかった。イブは賢いなぁ」

 

 ロイはなんかちょっと顔が青ざめていて、広いオデコが冷や汗で濡れていた。

 どうしたんだろう。


 あ、なんか地面が揺れた。


「ベー! 地震か! 遠いが、大きいな」


「なんかこう、いろいろできそうな気がして楽しみは増えたけど。やっぱり、はらわた煮えたぎる気持ちが消えないわね……」


 脚のある私があの白い【袖付き寝袋】を着て、外洋人と見分けがつかない姿になったところを想像すると、何故か【怒り】がこみあげてしまう。


「そんな時は、酒だ」

 

 ロイが木箱の中からボトルを出した。

 酒と言ってボトルを出したけど、ラベルが読めずに困ってる。


「ロイ。ラベルには【焼酎】って書いてあるわ。お酒の一種よね」

「ありがとうイブ。そうだ。酒だ。怒りを感じた時は、酒で忘れるのだ。は飲めんがな」


 お酒。飲んだことは無いけどちょっと興味はあった。


「飲みたいから、栓抜き貸して」

「待ってくれ、そうだ。イブは飲める年齢なのか? が言い出したことだが、これは重要なことだ」

「数えていた年齢的には、飲める歳になったわ」


「!!」


 ロイが、なんか一瞬吹き出すのをこらえたように見えた。


 もしかして私の年齢聞いて笑う?

 失礼じゃ済まないよ。

 世界が終わるよ。


 でもまぁ、ロイはこらえたんだから私も今回はこらえよう。


「……そうか、ならば問題ない。だが、イイ女はボトルで飲んだりはしない。グラスも入っていた。がせてくれ。イイ女にがせてくれ」


…………


 ロイにいでもらったお酒は美味しかったけど、ボトルを半分ぐらい飲んだところでロイに止められた。

 酔わないとしても、普通なら命に関わる量だからさすがにやめた方がいいと。


 ロイはじっくりと【横取り】をすると言って、木箱を小屋の外に持って行ってしまった。



 私は【前足】に靴を付けて歩く練習をしている。

 【後足】が無い分身体は軽いし、手だけで木登りできるぐらいの腕力はあるから、バランスさえ取れれば【前足】で走ることもできそう。


 スカートの下は束ねてお腹の前にまとめる。

 尻もちをついても服が傷まないように毛皮のエプロンを腰に巻く。


 やや前傾姿勢で鳥の二足歩行のような感じで【前足】で歩く。


 カッ カッ カッ カッ カッ


 イイ感じだ。

 走ることもできそう。


 カッカッカッカッカッカッカッカッカッ


 いける。【後足】ほどじゃないけど、それなりに走れる。

 久々の外歩きだ。ロイの所に行こう。


 カッカッカッカッカッカッカッカッカッカッ


「ロイー! この【前足】の靴、結構便利よー!」


「ヴァステェェェェェェェン!!」

●オマケ解説●

 蓋を開けたら、頼んでもいないのにとんでもない【貢物みつぎもの】。

 危うく溶岩が沸騰するところだったけど、百戦錬磨の元・総統閣下がすばらしい機転を発揮。

 今日も世界は救われた。


 そして、元身長150cmの小柄童顔娘が酒が飲める年齢。

 笑っちゃいけない。

 そういう人普通に居るよ。


 脚の無い女に贈られたブーツ。

 とっさに知恵を絞って【前足ブーツ】という新機軸を考案。

 その結果、両腕に厚底ブーツを装着した脚の無い女が駆け寄ってくるという、超恐怖現象に遭遇。

 元・総統閣下も限界を超えてしまった模様。

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― 新着の感想 ―
貢ぎ物のブーツ。 ヨライセン君の想いが伝わってきました。(泣) 童顔の人、私は結構好きなのですが、ロイさんダメなんでしょうか。 それにしてもロイさんもちょっとダメ行為グセ炸裂しそうで怖いですね。 いつ…
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