4月 4日 俺様 帰郷した(1.5k)
ユグドラシル王国軍の【戦時伝令使】を解任され、行き場所が無くなったので、故郷に帰ってきた俺は、シーオークと外洋人の混血青年ヨライセン。
1年と1カ月ほど前に勘当されてから一度も帰ってなかったシーオークの集落。俺が育った場所。俺の故郷。
本当になんにもなくなって、固まった溶岩による平地が広がっている。
固まった溶岩は余熱があってまだちょっと熱い。
そして、誰も居ない。
海に出ていた人が帰ってきたりしないかと、1週間ぐらい待っていたけど、本当に誰も居ない。
あの日、俺は父さんを撃った。
息絶えて力の抜けた顔は、確かに俺に似ていた。
言われた通りに遺体を城壁下の炎の中に落とした後、博物館に向かった。
王城区画内の建屋の屋根伝いに屋上から侵入したら、避難していた王宮メイド5人組に見つかってしまった。
見逃してもらうために、前持ちリュックサックに入っていた【揚げ芋虫】のパックを配ったら、大喜びで2階の展示室まで案内してくれた。
2階の展示室にあったのは、2本の剣のようなもの。
俺の身長を越えるほどの【大剣】、ガラスのような素材でできた【魔剣】。
王宮メイド達が【大剣】の方を勧めてきたので、それを頂いて俺は首都を脱出した。
その後、ラグーンシティからヴァルハラ川までエスタンシア帝国軍の撤退経路を北上して、各所に残っていた兵器を【大剣】で破壊した。
博物館で頂いてきたこの【大剣】。
何で出来ているか分からないが、頑丈で重い。
切れ味も抜群で【榴弾砲】の砲身を一撃で両断できる。
外洋人に持てる重さではないから、本当に【剣】として作ったのかどうかは定かではない。
だけど、俺ならこれを【剣】として使える。
そのまま西に向かってエヴァ嬢の村に行こうかとも思ったけど、行ってどうするか考えがまとまらないので、ヴァルハラ川沿いに東に向かった。
西ヴァルハラ市のあった場所は荒野になって、川沿いの一部が水没していた。
建物は何も残っておらず、当然、誰も居なかった。
さらに東に向かうと、西ヴァルハラ市と中央ヴァルハラ市の間でヴァルハラ川がせき止められていた。
中央ヴァルハラ市のあった場所は大穴になっていた。
穴の周辺は余熱が強くて近づけなかった。離れた場所から覗いた穴の底には溶岩が見えた。
一時期俺が住んでいた東ヴァルハラ市も荒野になっていた。
東ヴァルハラ貨物駅も、【昆虫食販売店】も、軍の駐屯地も、おっちゃんのバイク屋も全部、跡形もなく消えていた。
上流でせき止められて干上がったヴァルハラ川に、ヴァルハラ大橋の橋脚の基礎だけが残っていた。
シーオークの集落の跡地で子供の頃よく登って遊んだ海岸の岩山の上から海を眺める。
エヴァ嬢との【既成事実】を打ち明けて【掟破り】の罪で追い出されたあの日。
ちゃんと【結婚】すれば、エヴァ嬢を連れて帰れるかなと密かに思っていた。
でももう、集落は無い。誰も居ない。
シーオークは男も女も根絶されてしまった。
俺はいつまでもここに居るわけにはいかない。
エヴァ嬢の村は街から遠いし、村の存在自体を知っている人も少ない。
だけど、外洋人の暴徒の襲撃を受ける可能性はある。
俺が守らないといけない。
でも、その後どうするか。
大火力魔法の応酬で世界は滅亡の危機に陥った。
こうなってしまった以上、外洋人と原住民の共存は絶望的だ。
俺は、エヴァ嬢をどうやって守ればいい?
もう誰も俺に教えてくれない。
自分で考えないといけない。
これからどうするべきか、もう少し、ここで考えたい。
●オマケ解説●
仕事を終えて帰郷したら、全て無くなっていた。
それでも、止まるわけにはいかない。
守りたいものはあるけれど、力だけでは守れないことを知ってしまった。
本当に守りたいものを選べるか。
葛藤する18歳の明日はどっちだ。
※この世界の年齢は【数え年】です。




