3月 7日 俺様 勘当された (1.6k)
シーオーク族の村から追い出されて、バイクを担いでトボトボと最寄りの東ヴァルハラ市に向かって歩く俺は、シーオーク族と外洋人の混血青年ヨライセン。
雨乞い成功の報告のため村に帰った後、【既成事実】の件も報告したら案の定追い出されてしまった。
エヴァ嬢は黙っていればバレないと言ってたけど、俺達シーオーク族は嘘には敏感だ。
たまに村に来る外洋人の中には俺達を騙そうとする人も居たけど、速攻バレてこっぴどく怒られてた。
怒る姿はまさしく【鬼】。俺だって恐い。
追い出されると分かっていても、嘘は禁物。騙しはご法度。正直素直が一番だ。
村を追い出されてしまったから、先ずは住む場所が欲しい。
外洋人の街で、彼等に混じって暮らそう。混血の俺なら彼等の中に違和感なく混じることができるんだ。
…………
「なぁおっちゃん。俺、村を追い出されちゃったから、街に住みたいんだ。住む場所探す方法教えてくれないかな」
「お前さん追い出されたんか。村で重宝されたろうに。何やらかした」
「うーん。西の山村に【雨乞い】お願いに行ったら、そこで【既成事実】になっちゃって」
「ヨー坊は若いなぁ。あるある。そういうことあるよ」
「でも、村では掟破りなんだよなぁ……」
いつもお世話になっている町のバイク屋の店長に今後の事を相談する俺。
バイクはタイヤとか潤滑油とか定期交換が必要なので、走行距離が規定に達したら定期的にバイク屋に来る必要がある。
そのために通っているうちに、バイク屋のおっちゃんと仲良くなった。
「でも、ヨー坊もいい歳なんだから、コレを機会に自立すればいいじゃないか。この街好きなんだろ」
「そうだなー。でも、自立ってどうすればいいんだろうなぁ」
「まぁーまずは、仕事と収入だろうよ。村から追い出されたならこのバイクの整備代も実費請求になるしな」
「そうか。村の基金は使えなくなるから、俺が稼いで払わなきゃいけないのか」
純血のシーオークの方々は計算とか苦手なので、村のお金の管理を外洋人が運営している基金に委託してる。
だから、今までは街での買い物は基金から出してもらっていたけど、俺は村を追い出されたからそれはもう使えない。
ちなみに基金の資金源は、村の女性陣が街に出稼ぎで稼いでる。
女性陣は村に居るより街で働く方が楽しいそうで、大半が村から出て南方にある首都に住んでる。
シーオーク族の男は外洋人から恐がられるけど、女の方は恐くないらしい。むしろ美人らしい。正直、その基準が俺にはよく分からない。
「じゃぁ仕事探すかな。仕事ってどこで探せばいいんだ?」
「まぁ、【職業安定所】だな。ヨー坊何か得意なことあるか?」
「うーん。【力仕事】かな」
外洋人と比べると腕力はあるから、そういう仕事なら役に立てると思う。
「ヤメトケ。お前さんの力仕事は何やっても規格外だ。ドン引きされる。他に出来ること無いのか?」
「どうかなぁ。あ、そうだ。【魔法】を使えるようになったんだ」
「おーすごいじゃないか。力仕事よりもそっちの方が目立たなくて無難だし、給料もいいぞ。【職業安定所】へ行って【魔術師】として仕事探すといい」
「ありがとうおっちゃん。俺、【魔術師】として仕事探すよ」
「おうがんばれよ」
「街でドン引きされないようにがんばるよ」
「ドン引きされるのが嫌なら、街中でバイクを担いで運ぶのをまずヤメロ」
「だめなのか?」
「本来、担いで運べるモンじゃない」
…………
職業安定所に来て、掲示板の求人票を見る俺。
やっぱり力仕事がしたいので、つい農園での求人を探してしまう。
だけど、おっちゃんに力仕事はヤメトケと言われているので、気を取り直して魔術師の求人コーナーで条件のいい求人を探す。
住む場所が先ずほしいから、住み込みの仕事がいいなぁ。
●オマケ解説●
シーオーク族という名前の由来は、海沿いに住んで魚を主食にする鬼っぽい人達というところだ。
大柄な体と怪力を持ち外見はちょっと恐いけど心優しい人達。
だけど、嘘や悪意には厳しいので、結局外洋人の方々には恐れられている。
そういう人達を怒らせるほうに問題があるんだけどね……。