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 3月 3日 俺様 雨乞いを頼んだ (2k)

 【雨乞い】をお願いするため【生贄いけにえ】として新鮮な【ブリ】を持参してそれらしい村に到着した俺は、シーオーク族と外洋人の混血青年ヨライセン。


 バイクで夕方まで走ったら、山の中に村を発見。

 村の畑の奥にあった【神社】のような施設の前にバイクを停めて、保冷箱を持って門をくぐって敷地内に入り、常識的に呼びかける。


「ごめんくださーい」

「はーい」


 応答と同時に、変なブーツを履いた割烹着かっぽうぎ姿の小柄な娘が建屋の中から出てきた。黒目黒髪ショートカットなカワイイ娘だ。


「どちらさまですかー?」

「東の村から来たヨライセンと申します。今日は【雨乞い】をお願いしに来ました」


「【雨乞い】? 今、長老が居ないんだけど」

「えっ? 居たらできるモノなのか?」


 本当にできるものなのかどうか半信半疑だったけど、長老が居たらできるんだ。


「できるかどうかわからないのに来たの?」

「まぁ、麦が枯れそうで困ってたから、できるならお願いしたいと思って来たんだ」

「できればでいいなら、私が試してみてもいいけど」

「できるのか?」

「うまくいくかどうかわからないけど、試すことはできると思う」

「だったらぜひお願いしたい。失敗しても困ったことにはならないし」


「分かった。とりあえず中に入って。お茶を出すよ」


 変なブーツを履いた彼女に案内されて【神社】ぽい建物の建屋内にお邪魔した。

 どうでもいいことだけど、彼女の履いているブーツがやたら気になる。

 膝丈の割烹着の下から続く、黒くて毛深い装飾があり、足がやたら大きい変なブーツ。


…………


 【神社】のような建物の中にある寝室ぽい部屋。そのテーブルで美味しいお茶を頂きながら情報交換。

 他の部族の所に来たのは初めてだから、気になることはいろいろある。

 彼女はエヴァと言うそうで、首都に出かけた村の長老の代わりにこの【神社】を管理しているとのこと。


「畑の【お芋さん】がしおれてきたから、私も雨は欲しいと思ってた」

「だったら自分で【雨乞い】を試せばいいんじゃないのか?」


「必要なものが準備できなくてできなかった」

「ああ、【生贄いけにえ】が必要なんだっけ。ちゃんと持ってきたぞ」


 俺は保冷箱から【ブリ】を出して、テーブル上に乗せた。

 エヴァ嬢は目を輝かせた。


「わぁ。美味しそう。食べちゃっていいの?」

「それで【雨乞い】ができるならいいぞ。でもどうやって食べる? 調理場あるならさばいて【刺身】を作るぞ」


「このままでいい。イタダキマース」

 

 ガブッ ガッ ガッ ガッ ゴリッ ガッ ムシャ


 エヴァ嬢は生の【ブリ】を頭から丸かじりですごい勢いで食べた。

 ちょっと引いた。


 まぁ、俺達のご先祖様も昔はそうやって食べていたらしいし、俺もやろうと思えばできなくはないけど、俺は、調理して食べたい派だ。


「ゴチソウサマ!」

「それ、【雨乞い】用の【生贄いけにえ】だったんだけど、今のが【雨乞い】なのか?」


「違うよ。そもそも【生贄いけにえ】って生きてないと意味が無いから、あの魚は【生贄いけにえ】にはできないよ」

「じゃぁどうやって【雨乞い】するんだ? 【ブリ】を生きたままここまで運ぶのは難しいぞ」


 トラックを借りればできなくはないと思うけど、そのためには一旦帰らないといけない。生きたままの【ブリ】を確保するのも難儀だ。

 どうしたものか。


「大丈夫。お魚もらったし、【雨乞い】ちゃんとするから。ちょっとそっちのベットに横になって」


 部屋の奥、北側の窓際に大きなベッドがある。ベッドというより、なんか病院の手術台のような感じだ。

 よくわからないけど、言われた通りに横になる。

 今日はもう時間も遅いし、あわよくばここに泊めてもらえたらいいなぁ。


「アナタ大きいね。しかもかなり筋肉質。外洋人じゃないね」


 横になった俺の胸元を撫でまわしながらエヴァ嬢が楽しそうに言う。なんか病院で診察を受けている気分だ。


「外観は外洋人ぽいけど、俺はシーオークと外洋人の混血なんだ。純血のシーオークほどじゃないけど、外洋人よりかは筋肉質かもしれん」


「わぁ。やっぱり混血なんだ! だったら、【雨乞い】成功したらお願い聞いてもらっていいかな」

「いいぞ。俺に出来ることならな」


 えらく嬉しそうだ。混血と聞いて喜ばれるのは珍しいな。

 【雨乞い】成功したらしばらくヒマだ。何を頼まれるか分からないけど、カワイイ娘のお願いに付き合うぐらいの時間はあるだろう。


「念のため確認するけど、失敗しても困ったことにはならないよね」

「ああ、大丈夫だ」


 雨が降らなかったら、井戸を深くするなり、街の人に頼んで川の水を分けてもらったりと、まぁ方法はあるからな


「わかった。じゃぁやってみる」


 エヴァが寝ている俺の胸元あたりに両手を置いた。

 そして、俺の脳内にものすごい騒音が響く。何かの術だろうか。


 ザァァァァァァァァァァァ


 意識が遠くなる。


「失敗したらゴメンネ」


 エヴァ嬢の声が聞こえた。


 大丈夫だ。失敗したらその時はその時だ。


 ザァァァァァァァァァァァ……

●オマケ解説●

 ヨライセンは身長195cmのビッグマッチョ。愛車はスーパーカブのような小さめのスクーター。

 それで走る姿はサーカス状態だけど、本人は気に入っている。


 そして、エヴァ嬢は身長150cmの小柄な娘。

 外観ややボーイッシュな田舎娘だ。


 このアンバランスな二人の出会いが物語を動かす。のか?


 寝させるために使った術は、前作でたまに出てきた【波動酔い】。


↓第一章 第14話 クレイジーエンジニアと回復魔法

https://ncode.syosetu.com/n9274ib/19


↓第二章 第18話 クレイジーエンジニアと食の安全

https://ncode.syosetu.com/n9274ib/67

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヨライセン君、でかいですね。 手術台のようなベッドに寝させられて、術式?が始まった様子で、明らかに嫌な予感しかしない状況。 ヨライセン君、逃げるんだ!と心の中で叫んでました。(笑) 引き続…
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