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【完結】婚約者の王子に浮気されていた聖女です。王子の罪を告発したら婚約破棄をされたので、外で薬師として自由に生きます  作者: ゆうき
第三章 母を訪ねて

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第七十五話 やりたい放題

■カーティス視点■


「おい貴様、まだ今日の分の薬を作り終えていないのか?」

「も、もうしわけございません……ですが、こんな量の薬を一日で作るのは、不可能かと……」

「黙れ! 見苦しい言い訳をするな!」


 エリンが僕の元を去ってからしばらく経ったある日、新しく国の専属の薬師として雇った女の無能さに腹を立てながら、無能の胸ぐらを掴んで地面に叩きつけた。


 まったく、エリンがいなくなってから、面倒なことこの上ない。こいつは実は三人目の薬師で、アンデルクでもかなり腕が立つというから連れて来たというのに……エリンの作業量の半分にも満たない。


 これでは、バカどもに売りつける薬が減り、稼ぎが減ってしまう。それでは僕が愛しのバネッサと好きなように遊んで暮らせないじゃないか。


「おい、この前の件はどうなった?」

「はっ! 新しい薬師は既に見つかっているとの報告を受けております!」

「それならいい。腕の良い薬師とはいえ、少し高い金を見せれば安請け合いをするバカばかりで助かる」

「新しい薬師って……それでは、私は解放されるのですか!?」

「ああ。おめでとう、貴様は解放される……永遠にな」


 僕の言葉で呆気にとられるバカの頭を、思い切り踏みつける。どうやらその衝撃で、意識を失ったようだな。


「こいつを始末しておけ。ああ、適当に失踪理由を報告しておくのを忘れずにな」

「か、かしこまりました!」


 ピクリとも動かない女を兵士に任せた僕は、隣の部屋の扉が開いていることに気が付いた。


 この部屋には精霊の像があり、エリンが毎日精霊に祈りを捧げていたものだ。今はエリンがいない関係上、招いた薬師に毎日祈らせているのだが……そんな祈りが何になるというんだか。


「試しに僕も祈ってみるか……あー精霊様、どうか従順な僕のエリンが帰ってきますようにー。それか、腕の良い薬師が見つかりますようにー」


 はっ……自分で言っておいてなんだが、こんなことで願いが叶うはずもない。願いというのは、権力と金がものを言う。それ以外のもので叶うはずもない。


「なにがこの国を作った精霊だ、バカバカしい!」


 ふんっと鼻から息を勢いよく漏らしながら、精霊の像を蹴り飛ばす。


 我ながら、何とも無駄な時間を過ごしてしまった。さっさと部屋に戻って、次の予定の準備をしなくては。


「はぁ、全部の予定をキャンセルして、一日中バネッサと愛を語らいたい……」

「お呼びですか?」

「うおっ、バネッサ!?」


 今日の予定を考えながら頭を抱えていると、愛するバネッサが突然目の前に現れた。


 さすが僕の愛するバネッサだ。会いたいと思っていた時に姿を現すなんて、なんてよく出来た女性なんだ!


「顔色が優れないようですが、いかがされましたか?」

「色々考えることがあってな」

「それでお疲れなのですね。でしたら、私が癒してさし上げましょう」


 バネッサはそう言うと、周りに人がいるにもかかわらず、俺に抱きついたと思ったら、すぐさまに唇を奪ってきた。


 まったく、バネッサは大胆なことをする。だが、それも俺に元気付けるために行ったことで、同時に俺達がいかに愛し合っているかを示すいい機会だ!


「ありがとう、バネッサ。少し気が紛れた」

「どういたしまして。また夜にお待ちしておりますね……あ、お聞きするのを忘れておりましたわ。新しい薬師はどうですか?」


 バネッサの質問への回答として、僕は大きく肩をすくめて見せた。


「話にならないな。また新しい薬師を見つけたから、入れ替わりで彼女には消えてもらうことにした。まったく……エリンが生きてさえいれば、こんなことには……」

「遺書を残して消えてしまうなんて、身勝手な話ですこと」

「バネッサの言う通りだ。ハウレウに責任を取らせるために処刑して、多少は憂さ晴らしはできたが、今思い出しても腹立たしい」

「そういえば、ハウレウを庇った若い兵がおりましたが、なんだったのでしょうね?」

「さあな。そいつも一緒に処刑したから、今では確認のしようもない」


 ハウレウを処刑する時に、自分が主犯だから自分だけを処刑しろと騒いでいた男……名前など、興味が無くて覚えていないが……結局あいつは何がしたかったのか、未だにわからん。余程死にたかったのか?


「か、カーティス様! 大変でございます!」

「なんだ騒々しい」

「お父上が……国王様の容体が!」

「父上が? そうか……わかった、すぐに向かう」


 伝えに来た使用人は、足早に去っていった。残された俺とバネッサは、誰にも見られないように、互いに不敵な笑みを見せ合った。


「カーティス様、ついに……」

「ああ。長年にわたってエリンに作らせていた薬の効果が、やっと実を結ぶ時が来たようだ」


 実は父上は、前々から持病を抱えていた。それは薬で治る病気で、エリンにずっと作らせていたんだ。


 だが、その薬は、薬と呼べる代物ではなかった。


 薬は量と使い方を間違えるなって言うだろう? 僕がエリンに大量に作らせていた薬の中には、父上のための薬もあったのだが……父上に与えていた薬は、父上にとっては毒になるものだったのさ。


 どうしてそんなことをしたのかって? 決まっている。早く父上を玉座から引きずりおろし、アンデルクを僕の国にするためさ!


「くくっ……自分の手で田舎から無理やり連れてきた聖女の手で殺されたようなものだから、父上も本望だろう」

「まあ、エリンを騙して薬を作らせていたのは、どこのどなたなのかしら」

「意地悪なことを言わないでくれ、バネッサ。僕はほんの少しだけ、父上の病気の内容をエリンに伝え忘れただけさ」


 エリンは腕はいいが、人を疑うことをしないバカだから、父上のために作れと言ったら、疑いもせずに作ってくれたよ。本当にバカすぎて、笑いが止まらないとはこのことだ! 本当に失ってしまったのが惜しいくらいだ!


 本当なら、父上が死んだ後にエリンに全てを擦り付ける計画もあったんだが、残念ながら今回は失敗に終わったのが腹立たしい。


「案外、どこかで生きているかもしれませんわよ?」

「それはそれで困るな……我々の取引をバラされると、少々面倒だ」

「彼女は、良くも悪くもバカ正直な人間ですから、そういう手は使ってこないかと」

「さすが唯一のお友達というだけあるな、バネッサ」

「ご冗談はおよしになって。さあ、おしゃべりはここまでにして、国王様の様子を見に行きましょう」


 バネッサの言う通りだ。別に死ぬならさっさと死んでくれって思うが、これで行かないとメンツが潰れてしまうからね。


 ……それにしても、さっきから妙に体がかゆいな……変にカサカサしているし……乾燥しているのか? あとで乾燥用のクリームを使っておくか。

ここまで読んでいただきありがとうございました。


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